猫の平均寿命は2021年の調査で平均15.66歳と、2010年に比べて1.3歳近くも伸びています(※)。長生きはとても喜ばしいことですが、反面、今までになかった病気にかかる可能性が生じてきました。1日でも長く健康で過ごしてもらうためには、シニア猫ならではの健康管理が必要です。ここでは、シニアだからこそ気をつけるべき健康のチェックポイントをご紹介します。

※データ出典:一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」

猫の老化はいつごろから?

猫は、だいたい7歳ごろからシニアの領域に入ってきます。個体差はありますが、この年齢から徐々に老化が始まるとされ、まずはそのサインに気づいてあげることが大切です。老化のサインは、体調や体の変化だけでなく行動にも表れてきます。

 

行動から分かる老化のサイン(一例)

□ 痩せてきて、活発さがなくなってくる(高い所にジャンプしなくなる)
→筋力や関節の衰え

 

□ 反応が鈍くなる
→視力や聴力、嗅覚の衰え

 

□ 食欲の低下
→消化器官の衰え

 

□ 水をよく飲むようになる
→腎臓機能の衰え

 

□ 寒がりになる
→体温調節機能の衰え

 

□ 食べにくくなる
→歯肉炎や歯槽膿漏の可能性も

 

□ 毛づくろいをしなくなる
→体力の衰え

 

シニア猫では老化と思い込んでいて、病気を見逃してしまうことがよくあります。老化は病気の引き金になり、徐々に進行して慢性化するケースもあります。また免疫力も衰えてくるため、いったん病気にかかると重症化してしまう可能性も。病気予防のためには、日常的、定期的に健康チェックを行うことが大切です。

日常的にチェックすべきこととは?

食事量

異常に食べる場合は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)が、食欲が低下する場合は口内炎や歯肉炎、発熱下痢、内臓疾患などが疑われます。

 

 

 

【観察ポイント】
□ 異常に食べたがる
□ 食欲がない/全く食べない
□ 体重が増えてきた/減ってきた
□ 食べるときによだれが出ている

飲水量

飲水量の増加はシニア猫に多い腎不全の初期症状の1つです。いつもよりたくさん飲んでいると感じたら、尿量もチェックし獣医師に診てもらいましょう。多飲は糖尿病甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などが疑われます。また反対に飲水量が少ないと腎臓に負担がかかるため、しっかり水分を摂取させることが大切です。

 

 

 

【観察ポイント】
□ 水分をちゃんと摂っているか
飲みすぎていないか
□ 体重は減っていないか
□ 尿量は増えていないか

排泄

シニアになると筋力が低下するため、腸の動きが悪くなって便秘がちになります。また、腎臓機能の低下によって尿量が増えてきます。反対に、トイレに何度も行くのにおしっこが出ていないようであれば、尿路結石などの可能性も。ウンチとおしっこの、ふだんの量、回数、色や臭いを毎日確認しておきましょう。

 

 

 

【観察ポイント】
下痢便秘はないか
□ 尿量が増えていないか(大型の猫でも、1日に150ml以上であれば異常を疑う)
□ おしっこはちゃんと出ているか
□ 1日に何度もトイレに行くことはないか
□ おしっこの色は正常か(血尿だったり、キラキラしたりしていないか)
□ トイレで大きな声で鳴いたりしないか

呼吸

シニアになったとはいえ、猫が軽い運動でもハアハアと開口呼吸をするようなら循環器や呼吸器の病気を疑いましょう。また、体温調節機能が衰えるために熱中症になりやすく、そのために呼吸が速くなることもあります。

 

【観察ポイント】
□ 呼吸が速い(1分間に24~42回が正常)
□ 口を開けて苦しそうに息をしていることがないか
□ 呼吸時に胸が大きく動いていないか
□ ゼーゼーといった呼吸音がしないか
□ 体温は正常か

活動量

高齢になると徐々に活動量が低下し、寝ている時間が長くなってきます。以下の図①は8歳猫の1日の活動量ですが、2歳の猫と比較すると、活動量が全体的に低いことが分かります。そのため、じっとしていることが多くなっても単に老化だと考えてしまい、猫の体調不良に気づきにくいのも事実です。いつもより活動量が低下していると感じたら、体調が悪いか、どこか痛みがあると疑い、獣医師に相談するようにしましょう。

 

【観察ポイント】
□ 寝ている時間が多くなった
□ 呼んでも反応が全くない
□ 全く遊ばなくなった
□ じっと丸まって寝ている
□ 暗い所、一人になれる場所に行きたがるようになった

歩き方

筋肉や関節の衰えによって活発さが失われるだけでなく、歩き方やジャンプにも老化が表れます。歩様に異常が起きたり、高い所にジャンプしなくなったり、以下の図①のようにジャンプ自体の回数が減ってきたりします。しかしこのような症状は、循環器・呼吸器系の病気、関節の病気によって起こることもあるので、急な変化が起きた場合は注意が必要です。

 

【観察ポイント】
□ 急に四肢の動きが弱々しくなった
□ 歩くときにふらつく
□ びっこをひく
□ 昨日まで登っていた場所に登れなくなった

 

図①

 

 

※データ出典:日本動物高度医療センター JARMeC

定期的にチェックすべきこととは?

体の状態をチェック

毎日確認する必要はありませんが、週に1度程度、ケアする際に併せて体の状態をチェックしましょう。特にシニア猫は腫瘍の可能性が高くなり、ほとんどが歯周病にかかっているともいわれます。体のチェックは念入りに行いましょう。

 

【観察ポイント】
□ 目:目やに、充血、目を痒がるなどの症状がないか
□ 耳:耳垢がたまっていないか、粘液のような耳垢でないか、悪臭がしていないか
□ 鼻:鼻水が出ていないか、表面が乾いてないか
□ 歯:歯垢がたまっていないか、歯ぐきが腫れていないか、歯がグラグラしていないか
□ 口:口臭がきつくないか、口内炎など潰瘍がないか
□ 皮膚・被毛:しこりや腫れがないか、炎症がないか、フケが出ていないか

 

 

体重・体形をチェック

シニア猫は活動量が低下するため肥満になりやすくなりますが、より高齢になると、反対に食欲が低下して体重が減少し痩せてきます。また病気によって体重が増減したり、お腹が膨らんだりするなど体形が変化することもあります。定期的に体重測定・体形チェックを行い、極端な体重の増減、体形の変化がないか把握しましょう。

 

【観察ポイント】
□ 急に体重が増えた/減った(1ヵ月で体重の5%の増減があった)
□ お腹だけが膨らんだ
□ 体全体がむくんでいる

シニアになったら、定期的な健康診断が大切

シニア猫の病気は老化と密接に関係があるにも関わらず、症状があっても老化だからと無視されがちです。また猫は限界まで病気を隠してしまうため、発見がより遅れてしまうこともあります。病気の早期発見のためにも、シニアになったら半年に1度は定期的に健康診断を受けることをおすすめします。

 

▼参考記事はこちら!
猫の健康診断は本当に必要なのか?【獣医師が解説】

 

「シニア猫」(加齢)に関する獣医師監修記事はこちらをご覧ください。

「健康チェック」に関する獣医師監修記事も要チェック!

 

 

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竹原獣医科医院 院長

竹原秀行

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