猫ちゃんのお口の臭いを嗅いでみてください。「ちょっと臭う・・・」なんてことがあれば、もしかしたら病気のサインかもしれません。お口の健康は全身の健康にもつながる大切なこと。定期的に猫ちゃんの口をチェックする習慣を身につけましょう!
どうして口臭が発生するのでしょうか?原因別に解説します!
歯石が溜まっている
猫の口臭で最も一般的なのは歯石が溜まっていること。歯石は放置すると歯肉炎や歯周病に発展してしまいます。歯周病が重度になると歯が抜けてしまったり、痛みで食事がとれなくなったりします。
また歯石はただの石ではありません。歯石を砕いて顕微鏡でみると細菌がたくさん存在していることが分かります。
歯石の中の細菌が歯肉から侵入し全身に悪影響を与えることもあります。2016年に発表された論文では歯科疾患が重度であると、歯科疾患がない猫に比べてより早く慢性腎臓病になってしまうことが報告されました。
歯石を溜めないようにするには歯磨きが最も効果的です。特に歯石は上あごの奥歯に溜まりやすいのでそこを中心に歯磨きをするとよいでしょう。理想的には毎日ですが、3日に1回でもかまいません。少しずつでも続けることが重要です。
猫の歯磨きについて詳しくは「初心者からできる!上手な猫の歯磨き【獣医師が解説】」を読んでみてください。
歯石が出来てしまったら・・・
残念ながら歯石が溜まってしまった場合には歯磨きではとることができません。スケーリングといって人間の歯医者さんと同じように特殊な機器で歯石を取る必要があります。
スケーリングを行う際は全身麻酔をかけることが一般的です。また歯周病に発展し痛みが強く出てしまった場合、抜歯を行わなければならないこともあります。
口内炎
猫の口内炎は人間のものと違って治りにくいことが特徴です。
口内炎の原因は
□ 自己免疫性の病気
□ カリシウイルスが関与
□ 口腔内の細菌が関与
などがありますがまだはっきりとした原因が特定されていません。
歯のまわりや口狭部(上アゴと下アゴの境目の部分)に炎症が起きます。口内炎になると、よだれが増え、口臭が強くなります。
猫の口内炎は難治性の病気の1つであり確実な治療法が解明されていません。
現在、試みられている治療としては抗生物質、ステロイド、消炎鎮痛剤、インターフェロンなどの投与、その他抜歯などがあり、それらを病態や症状に合わせ行っていきます。
口腔内の腫瘍
猫の口の中は腫瘍ができやすい部分です。特にできやすい腫瘍として「猫の悪性腫瘍・扁平上皮がん【獣医師解説】」というものがあります。これは体の表面や、体内への入口にあたる部分の、「扁平上皮細胞」ががん化したものです。
口腔内(上顎、下顎、舌の下)だけでなく皮膚や鼻腔内などさまざまな部位に発症する可能性があります。
この腫瘍が出来てしまうと以下のような症状が引き起こされます。
□ 食べるのが遅くなった
□ ドライフードを食べた時にこぼすようになった
□ よだれがたくさんでるようになった
□ 口を触ると痛がるようになった
□ 口にできものができた
この扁平上皮癌は非常に悪性度の高い腫瘍です。ごく早期に発見できれば手術で対応が可能ですが、口にできてしまうとあごを切除しなければならないなど負担も大きいことも特徴です。
また進行してしまった場合の治療法がまだ確立されていません。抗がん剤などの治療が試みられていますがあまり成果は上がっていないようです。
悪性腫瘍の原因の一つとしてタバコの煙もあげられます。飼い主さんの喫煙と猫の扁平上皮癌の発生率との関連性を示した研究もあります。
タバコの煙のついた猫の毛をグルーミングの際に飲み込んでしまうことで体内に有毒物質が取り込まれていると考えられます。
タバコが猫に与える影響とは?
猫が受動喫煙した場合、人間が受ける影響より大きいといわれています。また、タバコのような有毒物質は重いため下の方に集まります。したがって猫のいる空間に自然に有毒物質が溜まってしまうため影響を受けやすいとも考えられます。
タバコの煙は喘息や心臓循環系、皮膚炎などの原因になることもあり、特にリンパにできる癌であるリンパ腫の発生率はタバコを吸わない家庭の猫と比べ2.4倍になるともいわれています。
自分のために禁煙することは難しいかもしれませんが、愛する猫のためを思って禁煙してみるのはいかがでしょうか?禁煙はできなくても猫のいる空間ではタバコは控えましょう。
慢性腎臓病
腎臓病が原因で口臭が発生することがあります。腎臓から排出している老廃物が体に溜まってしまうため、その臭いがするようになると言われています。
また、腎臓は再生しない臓器なので一度腎臓病にかかってしまうと完治を目指した治療ではなく症状を抑える治療を行うことになります。
腎臓は病気になっていても症状の分かりにくい臓器です。飼い主さんが分かるような症状が出ている場合はかなり進行していることが多いので、健康そうにみえても健康診断を受けるようにしましょう。
代表的な症状として多飲多尿というものがあります。おうちの猫が最近よく水を飲むようになったな、と思ったら腎臓病を疑うことも必要かもしれません。
また腎臓病になると粘膜が弱くなるため口内炎にもなりそれが原因で口臭が引き起こされることもあります。
詳しくは「獣医師監修!猫の腎不全の症状、治療法、原因を解説します。」をご覧ください。
歯石から腎臓病まで様々な要因から起こる猫の口臭。
たかが口臭と思わず病院に連れていくことで、病気の早期発見に繋がるかもしれません。このような小さなサインも見逃さないことが大切です。
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猫の「歯」に関する「にゃんペディア」 獣医師監修記事
こちらもあわせてご一読ください。
□ 生え変わり:猫の歯、生え変わるのはいつぐらい?
□ 歯ぎしり:猫も歯ぎしりをするの?その原因とは?
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□ 歯磨きの仕方:猫の寿命を延ばす歯磨きの仕方って?
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□ 歯周病:猫の歯周病、症状や治療法とは?処置が遅れると、
□ 歯周病:歯が抜けてしまうことも!猫の歯周病とは
□ 人の歯との違い:人間の歯と、猫の歯の違いとは?
□ まとめ:ねこ飼いさんの基礎知識「ねこの歯」
★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、 症状や病名で調べることができる、 獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうち の医療事典」をご利用ください。
☞例えば、下記のような猫ちゃんの「症状」から考えられる病気やケガを知ることができます。
● 排泄:下痢をしている・血便が出ている・便の様子がおかしい・便
● 食事:元気がない・食欲がない・食べすぎる・水を沢山飲む・疲れ
● 口:よだれが多い・口を気にしている・口の中にできものがある・
● 呼吸:・くしゃみをする・咳をする・呼吸が苦しそう・口を開けて
☞「猫の行動」からも、考えられる病気やケガをも調べられます。
□ 足をあげる
□ 歩かない
□ ふらつく
□ 性格が変わる
☞他にも、下記のような切り口で、
【治療】
■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり
【症状】
■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い ■後遺症が残ることがある
【対象】
■ 子猫に多い ■ 高齢猫に多い ■男の子に多い ■女の子に多い