猫も年をとるにつれ、病気にかかりやすくなります。さまざまな腫瘍(ガン)の中でもリンパ腫は高齢の猫に多い病気のひとつ。リンパ腫とはどういう病気なのでしょうか?一緒に暮らしている猫がリンパ腫になった場合、飼い主さんにはなにができるのでしょうか?ここではリンパ腫のメカニズムや症状、治療法とあわせて、大切な猫がリンパ腫になってしまったとき、飼い主さんが猫ちゃんにしてあげられることについて解説しています。

リンパとは

体の部分の中でよく聞く言葉に「リンパ」というものがあります。リンパ液とは体液の1つで、主に血管とは別のリンパ管を流れています。このリンパ液の中には主にリンパ球という免疫細胞が含まれています。リンパ球自体は、リンパ液の中だけでなく血液や体の組織の中にも広く分布していて、体内に異物が侵入したときに、異物をやっつけるために集まって攻撃したりします。ちなみに、普段からだの中でリンパ球がまとまっている場所をリンパ節と呼びます。

リンパ腫とは

リンパ球の腫瘍化

リンパ腫とはリンパ球が腫瘍化したものです。新しい細胞を増やしたいとき、今ある細胞が分裂することでその数を増やしていきます。分裂するとき、元の細胞をコピーして新たな細胞ができるのですが、稀にコピーが失敗して、元の細胞とは異なる細胞が生まれることがあります。これがガン細胞です。リンパ球が分裂するとき、うまくもとのリンパ球の情報をコピーできずにがん細胞となってしまうことを、リンパ球の腫瘍化と言います。

リンパ球が腫瘍化するとどうなる?

健康な細胞が分裂するとき、体の設計図に沿って増殖します。設計図に基づいて、体が必要とする分だけ増殖し、本来あるべき姿を形作っていきます。しかし、腫瘍化したリンパ球はそういった情報がコピーされていないため、必要とされていない状態でも無制限に増え続けるのです。

腫瘍化したリンパ球が増え続けると・・・

体を守ってくれるリンパ球がたくさん増えることは、そんなに悪いことではないように思う方もいるかもしれません。しかし、腫瘍化したリンパ球というのは、正常なリンパ球ではないので、体を異物から守る働きもきちんとできません。しかも周りの健康な細胞を破壊してまで増殖したり、増殖しすぎて血管に詰まってしまったり、健康な細胞よりも多くのエネルギーを吸収したりするので、がん細胞が体内にあること自体が体に大きな負担をかけるのです。

リンパ腫にかかりやすい猫の特徴

猫白血病ウイルス(FeLV)に感染したことがある猫は、リンパ腫にかかりやすいと言われています。猫白血病ウイルスは、白血球や赤血球などの血液細胞に影響を与えるため、感染したあとに異常がおこりやすくなってしまうのです。また、飼い主さんの喫煙も猫のリンパ腫に影響があると考えられています。

リンパ腫の症状は?

リンパ球は体のいたるところに存在します。極論を言えば、体のどの部分でもリンパ腫は発生する可能性があります。そのため、症状はリンパ腫ができてしまった部分によって大きく異なります。

獣医師はこうやってリンパ腫の診断をつけている

猫に見られる症状や飼い主さんの話を聞いた上で、レントゲン検査やエコー検査を行います。多くの場合、リンパ腫は臓器が腫れたり、リンパ腫が塊状に形成されたりするので、その腫れている臓器や塊から、細胞を採取したり一部を切り取ったりして検査を行います。針を刺して細胞を採取する検査は、一般的には麻酔をかけずにできるので、猫に与える負担が少なく、最初に実施されることが多いです。ただ、それだけでは正確な結果が出ないこともあるので、その場合は手術で臓器や塊を切り取り、精密検査にかけることもあります。このような検査を組み合わせて、獣医師はリンパ腫の診断をつけているのです。

リンパ腫の治療法

リンパ腫は発生した部位によっては外科手術も可能ですが、基本的には抗がん剤などの化学療法が主体となります。抗がん剤には多くの種類があり、ガン細胞の増殖を妨げたり、死滅するよう促す効果があって、病気の状態や治療の目的に応じて使い分けて治療をしていきます。抗がん剤については色々不安を感じる方もいらっしゃると思います。以下の記事も参考にしてみて下さい。『猫の癌(がん)とどう向き合う?癌の治療法とは』『大切な猫が癌になったとき、抗がん剤は必要か?

 

また、最近では一部のリンパ腫に対して放射線治療も有効であることが確認されており、治療法の一つに組み込まれています。ただし、放射線治療は大学病院やそれに準じる規模の総合病院などのような限られた病院でしか受けられません。もし放射線治療を希望される場合は、まずはかかりつけの獣医さんに相談してみるといいでしょう。

 

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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