高齢の猫ちゃんと一緒に暮らすためには、猫ちゃんが安全に暮らせるよう住環境を整えてあげる必要があります。足腰が弱った猫ちゃんのために段差をなくす、口にすると危険な観葉植物を取り除く、床材を歩きやすいものに変えるなど、できるだけ猫ちゃんが自力で移動できるよう工夫してあげたいもの。とは言え、あまり急激に変えてしまうと猫ちゃんが戸惑ってしまいます。高齢の猫ちゃんにストレスは大敵!とくに模様替えや引っ越しなどによる住環境の変化は、猫ちゃんに大きなストレスを与えてしまいます。猫ちゃんの動きを見ながら、少しずつ変えていきましょう。

 

段差をなくす

野生で暮らしていた頃、猫は敵から身を守るため高いところを好んで暮らしていました。そうした習性から老齢になっても高いところに上ろうとしますが、筋力が衰えているため転落の危険性が高くなります。そこで、キャットタワーなど、落下の恐れがあるものは取り除きます。さらに、タンスや本棚など、それまで猫が上がり下りしていた高い場所には物を置くなどして上がれないようにします。もしソファの上など、猫のお気に入りの場所が少々高いところにある場合は、適当な高さの台を用意するなど、足腰に負担がかからないような工夫をします。また、階段の前にはフェンスを置くなどして猫が登らないようにしましょう。

 

部屋にある危険物を取り除く

飼い主さんが何気なく室内に置いてある中にも、猫にとって危険なものはたくさんあります。一番は観葉植物で、猫にとってもっとも危険な植物といわれているのがユリの花です。植物の中ではもっとも毒性が強く、猫が口にすると急性腎障害を起こしてしまいます。中毒症状から死に至ることもありますので、決して口にしないよう気をつけてください。また、花や葉を口にしたり、さらには体についた花粉を舐めたりするだけでも中毒になる恐れがあります。育てやすいことから人気の高いポトス、クリスマスシーズンにおなじみのポインセチアも猫には危険な植物ですので、室内には置かないようにしてください。こうした植物による中毒は、老齢、または病気を患い抵抗力が弱っている猫にとっては命取りになりかねません。

 

室温管理は慎重に

年齢を重ねるにつれて猫は体温調節が難しくなります。猫は暑さには強い動物なので、熱中症にはかかりにくいといわれています。ただし、真夏の猛暑の中、閉め切った室内で過ごすようなことがあれば、健康な猫でも熱中症に似た症状を引き起こしてしまいます。体力がなくなっている猫であれば、ダメージはより深刻です。猫にとっての適温は、夏は最高でも28度、冬は22〜24度です。冷やし過ぎや暖め過ぎには注意しましょう。

冬場に気をつけたいのがこたつの温度調節です。こたつの中で寝るのが好きな猫は多いです。でも、電源が入ったままのこたつに長時間入っていると熱中症を起こす危険性があります。人間にとっては適温でも猫にとっては暑すぎることも。こたつの中に猫がいる時は電源をオフにしたほうが安全ですし、もしついたままなら、時おり様子をチェックし猫から目を離さないようにしてください。また、冬は乾燥しがちなので、猫がいたずらをしないようであれば加湿器を使うようにしましょう。快適な湿度は50%が目安です。

 

 

「シニア猫」(加齢)に関する獣医師監修記事はこちらをご覧ください。

 

 

★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、猫種など、かかりやすい病気や、症状や病名で調べることができる『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。

「うちの子おうちの医療事典」で本記事に関連する病気を調べてみましょう。
□ 中毒  
熱中症 
 

 ☞例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

【治療】

■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり 

【症状】

■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い ■後遺症が残ることがある

【対象】

■ 子猫に多い ■ 高齢猫に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い  

【季節性】

春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】

■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつるか】

■ 犬にうつる ■ 人にうつる ■ 多頭飼育で注意 

【命への影響度】

■ 命にかかわるリスクが高い

【費用】

■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防】

■ 予防できる ■ワクチンがある

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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