屋外で生活していたノラ猫を飼い猫として迎えても、すぐには懐かないこともあるでしょう。特にノラ生活が長かった成猫は、人に馴れるまで時間がかかります。子猫でも、母猫が人に懐かない猫であれば、それを見習って懐かない猫になります。
そういうとき、大事なのは焦らないこと。ごはんやトイレのお世話だけして、自分からは猫に近づかないでください。猫がシャーシャー威嚇しても無視すること。見るだけで威嚇する猫は、目を合わせてもいけません。淡々と、お世話だけに徹してください。猫が逃げ込めるケージやハウスを作っておき、そこには決して手を出さないようにしてください。猫にとっての「安全地帯」を作るのです。それが猫の安心につながります。
そのうち、猫は「コイツは敵ではないようだな」と思うようになります。そして、だんだんと気を許します。あなたがそばに来ても逃げなくなったり、自分のほうから近づいてくるようになります。それでもまだ、あなたからは手を出さないでください。我慢です。ここで撫でようとして手を出すと、また警戒してしまいます。
あなたを「敵ではないようだ」と思った猫は、あなたという存在を確かめるため、あなたのニオイを嗅ぎに来ます。そうしたらあなたはじっとして、好きなように嗅がせてあげてください。「ふむふむ、コイツはこんなニオイだな」と納得したら、猫は離れていきます。
この段階まで来たら、「指キス」にトライしましょう。人差し指を猫の顔の前に差し出すのです。あなたのほうから近づくときは、やや離れた場所から腕だけ伸ばすと、猫が怖がりません。体ごと近づくと警戒されやすいのでご注意を。すると、猫は指の先に鼻の頭をつけ、スンスンとニオイを嗅ぎます。これは猫の世界での「ご挨拶」。ニオイを確認することが挨拶なのです。
指キスが習慣化するまでになったら、手で撫でられるようになるのも時間の問題です。完全に懐く日も、そう遠くはありません。大切なのは、猫のほうから近づいてくるまで気長に待つこと。猫が自分で「コイツは大丈夫」と思わない限り、懐いてはくれません。
ノラ生活が長かった猫でも、本当に懐くの?
子猫の場合、柔軟性があるので比較的短時間で人に懐くようになりますが、成猫の場合はやや時間がかかります。それでも必ず、懐くようになります。私がそう確信したのは、小笠原諸島にいたマイケルくんの例を知ったからです。
小笠原では猫が多数野生化し、希少な野鳥が襲われて絶滅の危機に遭っていました。2005年、野生化した猫を捕獲することになり、その猫たちを東京都獣医師会が引き受け、飼い主探しをすることに。人に馴れていない猫は、獣医師たちが懐くように「更生」させなければいけません。
街中のノラ猫と違い、野鳥を襲って食糧としていた野生の猫です。「超凶暴」と言っても過言ではありません。マイケルくんもとても気性が荒く、捕獲された当初は猛然と人を威嚇していたと言います。
そんなマイケルくんに、私は昔会いにいったのですが、これが信じられないほどの愛想のよさ。初めて会う私にもゴロゴロスリスリで、はっきり言ってうちの猫より甘えん坊……。東京の新ゆりがおか動物病院に引き取られてから、約2か月ですっかり人に懐いたそうです。院長の小松先生によると、長くても3か月ほどで人に懐くとのこと。そんなマイケルくんをこの目で見て、「ノラ猫も、必ず人に懐く!」と確信したのです。
脱走には気を付けて
元ノラの飼い猫は、家からの脱走に注意する必要があります。特に、ノラ生活が長く、元のなわばりが近い猫ほど、脱走したがります。
猫は、なわばりパトロールの習性がありますが、飼い猫となり家の中を自分のなわばりとした後でも、「元のなわばり(屋外)」が家のすぐ近くにあるなら、そこもパトロールしたがるのは当然のこと。外に出たがって鳴いたり、ドアが開いた隙を狙って脱走したがるでしょう。逆に、マイケルくんのような遠い場所から来た猫の場合、家の周りになわばりの痕跡もないため、前者よりも脱走の欲求は減るでしょう。
屋外は交通事故や感染症の危険があるため、完全室内飼育がベター。避妊・去勢手術をすれば、異性を探す欲求が減るので、脱走の欲求も減るでしょう。
★ 「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、
かかりやすい病気
再発しやすい
多頭飼育で注意
子猫に多い
手術費用が高額
生涯かかる治療費が高額
高齢猫に多い
人にうつる
初期は無症状が多い
命にかかわるリスクが高い
生涯つきあっていく可能性あり
緊急治療が必要
ワクチンがある
予防できる
☞『うちの子おうちの医療事典』で「子猫のかかりやすい病気」
猫カリシウイルス感染症(猫風邪)
猫ウイルス性鼻気管炎(猫伝染性鼻気管炎、猫ヘルペスウイルス1型感染症、猫風邪)
クラミジア感染症
皮膚糸状菌症(真菌症、白癬、カビ)
回虫症
ジアルジア症
コクシジウム
★『子猫』に関する「にゃんペディア獣医師監修記事」は、
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