飼い主さんに猫ちゃんをお家に迎えることになったきっかけを聞いてみると、実は「ノラの子を拾ったから」と答える飼い主さんが18.5%もいるというデータがあります。(アイペット損保調べ)道で出会った猫ちゃんが懐いてきて、そのまま連れて帰る。運命的な出会いですよね。とはいえ初めて猫を拾ったとき、なにをしてあげればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。ここでは獣医師監修のもと、猫を拾ったときの対処法をケース別に解説しています。

猫を拾ったら、スグに動物病院へ

 

生まれたばかりの子猫は体が弱く、そんな子猫にとって室外の環境は非常に苛酷です。なにかしらの病気にかかっているかもしれないので、元気そうに見えても、すぐに動物病院へ連れていってあげましょう。動物病院では子猫の健康診断をしてくれるだけではなく、一緒に生活する上で必要なことを色々教えてくれます。

動物病院でチェックしてくれること

体調管理

子猫の健康状態を確認してもらいましょう。重大な病気を持っていないか、先天性の異常がないか診てもらいます。治療が必要な場合は、費用や治療法についても相談してみるといいでしょう。ノラの猫に多い猫エイズ猫白血病ウイルス感染症などに感染していないか、あわせて調べてもらうといいと思います。

 

 

ノミ・ダニ予防

外で暮らしている猫には、基本的にノミやダニが寄生していると考えておいたほうがいいです。こういった寄生虫を駆除しないまま子猫を迎えてしまうと、家中がノミやダニまみれになってしまうこともありますので、必ず駆除してもらってください。詳しくは『猫のためのノミ予防』『猫ちゃんのためのダニ予防』も併せてご覧下さい。

 

 

年齢・性別

他にも、拾った猫が生後どのくらいなのか、オスかメスか、適性体重はどれくらいか、飼い主さんがなにに気をつけるべきなのか等、いろいろなことを教えてくれます。詳しくは『愛猫は肥満?痩せすぎ?適正体重の見極め方【獣医師が解説】』もあわせてご覧ください。

 

ワクチン接種

子猫の体は十分にできあがっていません。異物から体を守る免疫機能も十分ではないので、ちょっとした病気で、命の危険を招くこともあります。免疫機能のかわりに子猫の体を守ってくれるのがワクチンですので、生後2ヶ月齢を越えているようであれば必ず接種しましょう。詳しくは『猫の予防接種(ワクチン)で防げる6つの病気【獣医師が解説】』をご覧ください。

 

動物病院が閉まっていたら

 

もし夜間などで動物病院が空いていないときは、以下のポイントをチェックしてみて下さい。

猫の体が冷えていませんか?

猫は寒さにあまり強い生き物ではありません。特に子猫は寒さに弱く、体が冷えているというのは非常に危険な状態です。もし子猫を拾ったときに体が冷えていたら、毛布やフリースなどでくるんで保温してあげましょう。

猫の体は濡れていませんか?

猫の毛は一度濡れると乾きにくいため、体が雨などで濡れているとどんどん体温を奪われてしまいます。タオルなどで拭いて乾かしてあげてください。ドライヤーを使って乾かしてあげてもいいでしょう。ただし、温風を至近距離であてるとやけどしてしまう可能性があるので、ドライヤーは猫から30cm程度離して使うようにしましょう。

何歳くらいの猫ですか?

拾った子猫の年齢によって、対応が変わります。そのためここでは、ザックリとした年齢の見分け方をまとめておきます。子猫の体重と体の特徴から判断する方法です。ただし、子猫の年齢を正確に見きわめるのは難しいので、きちんと動物病院で調べてもらってください。

体重での見分け方

 

体の特徴での見分け方

 

生後4週間未満の場合は、自力で排泄行為をすることができません。生まれたばかりの子猫は母猫がお尻などを舐めて刺激を与えることで、排泄行為を促します。ごはんを与えた後、お湯で湿らせたコットンやティッシュなどで陰部を優しく刺激してあげましょう。ウンチはお尻の周りを少し長めに刺激してあげる必要がありますが、おしっこができていれば、翌日動物病院を頼るのでも大丈夫でしょう。

夜間であれば救急病院を頼って

通常の動物病院は夜になると空いていませんが、夜間でも対応している緊急病院があります。夜間でもすぐに病院へ連れていったほうがいいケースもあるので、そんなときは近くの緊急病院を探してみてください。「動物病院×緊急×エリア」などで検索すれば出てきます。遠方にしかない場合でも、一度電話で相談してみるといいでしょう。

こんな場合は夜間病院へ

夜中に生後数日の子猫を保護したときは夜間病院に連れて行って下さい。また食欲がなかったり、ぐったりして元気のない場合も夜間病院を頼ることをおすすめします。

猫のための環境を整えてあげよう

猫のための部屋を作ろう

子猫が安心できる環境を作ってあげます。ケージがあればケージの中に入れてあげるといいのですが、なければダンボール・かご・プラスチックケースなどの底に布を敷いて代用しましょう。ダンボールはコンビニなどでもらうことができるので、もしおうちに何もない場合は、譲ってくれないか相談してみて下さい。そしてこの中に、以下のものを入れてあげます。

 

□ 寝るためのベッド(タオルや毛布を畳んで代用可)

□ トイレ(猫砂やペットシーツを利用)

□ 飲み水

□ フード

 

隠れる場所があると安心できるので、ケージを布やタオル、毛布などで覆ってあげるといいでしょう。ダンボールなどの場合は半分だけ布をかけてあげるといいと思います。

動物病院にすぐ行けない場合

ノラの猫はノミマダニなどの寄生虫を持っている可能性があるため、動物病院に行く前に家の中を自由に歩き回らせるのはオススメしません。気温を調整した玄関や脱衣所などで一晩過ごしてもらうか、室内に入れてあげる場合には、ダンボールなどでしっかり仕切りをしておきましょう。

先住猫がいる場合

拾った子猫と先住猫をすぐに会わせることは避けたほうがいいです。子猫が感染症を持っていた場合、先住猫にもうつってしまうからです。感染症の中には空気感染するものや、ちょっとした接触でうつるものもあるので、トイレや食器を共有することも避け、完全に別空間で隔離したほうがいいでしょう。詳しくは、『【獣医師監修】どうすれば喧嘩せずに仲良くなれる?猫の多頭飼いにおける初対面の方法と、トイレなどの日常生活の注意点とは?』もあわせてご覧ください。

 

 

猫の食事を用意してあげよう

生後4週間の場合

生後数日の場合は、猫用ミルクが必要です。たまに牛乳を与えてしまったという方もいらっしゃるのですが、猫の体は牛乳を分解できません。必ず子猫用ミルクを与えてください。子猫用ミルクの与え方については、『子猫用ミルクを与えるときに気をつけるポイント』で詳しく紹介しているので、あわせて読んでみてください。

 

子猫用ミルクが手に入らないときは・・・

 

牛乳には猫の体内では分解できない成分が含まれていて、そのまま与えると下痢をしてしまいます。夜間などで猫用ミルクがどうしても入手できない場合は、牛乳に卵黄を混ぜたものを温めることで代用が可能ですが、これはあくまでも緊急処置なので、翌朝になったら猫用ミルクに変更して下さい。

生後8週間の場合

生後4週間ごろから離乳食を食べられます。子猫用ミルクから、缶詰やドライフードをふやかしたものに変えてあげましょう。

生後8週間以降の場合

キャットフードを与えましょう。今ではコンビニでもキャットフードを取り扱っていますので、夜間でも手に入れることができます。キャットフードの中にはおやつ用のものもあるので、ラベルに「総合栄養食」と書かれているものを選んで下さい。また、犬と猫では必要な栄養素が異なりますので、必ず猫用のフードを選びましょう。詳しくは、『【獣医師監修】キャットフードにはどんな種類があるの? ラベルには何が書いてあるの?』をご覧ください。

 

初めて子猫を迎えた方は、戸惑うことや不安なことがたくさんあると思います。そんなときはぜひ動物病院を頼って下さい。確かに動物病院は病気の治療をする場所ではありますが、治療だけを行っているわけではありません。あなたと子猫の暮らしをきっとサポートしてくれます。ぜひ気軽に相談してみて下さいね。

 

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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