猫ちゃんは生後4〜8週齢ごろまでお母さんの母乳を飲んで育ちます。しかし、お母さんが何らかの理由で育児放棄してしまったり、生まれたばかりの猫ちゃんを保護したりした場合は、飼い主さんが代わって授乳しなければなりません。生まれたばかりの猫ちゃんは週齢によって必要なカロリー、与える量や回数、哺乳瓶の形態などが変わってきますので、それらをきちんと把握しておくことが大切です。

ミルクを選ぶ

生まれたばかりの猫にとって、初乳を飲むことには大きな意味があります。
猫が生まれてから24時間以上経過すると、猫の腸の構造が変化してしまい、母乳に含まれる抗体を吸収できなくなってしまうのです。

母猫と子猫

赤ちゃん猫を保護したら、まず牛乳を! と考える人もいるようですが、それは間違い。牛乳には猫が消化しにくい成分が含まれているものもあり、下痢を起こしてしまう危険性があるのです。

人間用の牛乳をそのまま与えるのはNG

また、犬用のミルクも、成分の違いから猫の体調を崩す恐れがあるため、危険です。赤ちゃん猫には必ず子猫用ミルクを飲ませてあげてください。保護したばかりで、すぐに子猫用のミルクが手に入らないときは、緊急的な対応として、ぬるめの牛乳に、卵黄と無糖練乳を少々加えたものを与えても良いですが、なるべく早く、子猫用のミルクに切り替えてください。

母猫の母乳は高脂肪・高タンパクで赤ちゃん猫に必要な栄養素がたっぷり含まれています。子猫用ミルクを選ぶ際は、成分表記をしっかり確認し、母乳に近い成分で作られたものを選んでください。人工授乳期の猫は週齢や体重によって必要カロリーが変動するため、調整が可能な粉ミルクがおすすめです。

ミルクを作る

ミルクはパッケージに表示されている量に従い、母乳に近い38度くらいに温めたお湯で作ります。ミルクの温度が低すぎると体温が低下してしまいますし、熱すぎると飲むことができないだけでなく、口の中をやけどしてしまいかねません。また、保護したばかりの子猫は消化力が弱っていることも考えられます。パッケージに表示されているミルクの濃度は健康な子猫用ですので、保護したばかりの子猫は消化できない恐れがあります。そこで、最初はやや薄めに作り、徐々に規定の濃さにしていくことをおすすめします。作り置きはせず、授乳のたびに新しく作るようにしましょう。

哺乳瓶を用意する

哺乳瓶はペットショップなどで市販されている子猫専用のものを用意します。大きすぎるとミルクが早く冷えてしまうため、小さめの容器がおすすめです。哺乳瓶の乳首の先端は十文字に切ってあることが多いですが、自分で切る場合は十文字以外に円形の穴を開けるという方法もあります。乳首の中側から爪楊枝で強く押して、尖った先を爪楊枝ごと切るときれいにカットできます。切り込みの大きさは、哺乳瓶を逆さにしてミルクがじわじわ出てくるぐらいを目安にしましょう。また、ゴム製の乳首は子猫が噛み切ってしまうことがありますので、歯が生えてきたら注意してください。

吸いつく力が弱い、または吸いつけない場合は、哺乳瓶ではなくシリンジ、もしくはスポイトを使い、数滴ずつ舌に垂らすようにして飲ませます。

スポイト

一度に大量のミルクを流し込むと気管に入ってしまい肺炎を起こす恐れがあります。数滴ずつ根気よく飲ませてあげましょう。

ミルクを飲ませる

子猫にミルク4

「授乳」と聞くと人間の赤ちゃんのようにあおむけにしてミルクを飲ませることをイメージする人がいるかもしれませんが、子猫のこのポーズはとても危険。ミルクが気管に入ってしまう恐れがあります。ミルクを飲ませる際には、子猫を腹ばいにし頭を少し上に向けるようにします。子猫が母猫のお乳に吸いつく姿をイメージしてください。哺乳瓶の角度は45度くらいがちょうどいいようです。口のまわりについたミルクは飲み終わった後、きれいに拭いてあげましょう。

一日に飲むミルクの量を把握する

ミルクの説明書には適量が記載されていますが、子猫の週齢や体重、健康状態などによってミルクの適量は変わってきますので、一日に飲むミルクの量は獣医さんと相談して決めましょう。
おおよその目安は以下のようになります。

生後日数 1回のミルクの量 1日のミルクの量 1日の授乳回数
1〜10日 5〜8ml 40〜80ml 8回
11〜20日 8〜12ml 60〜80ml 8回
21〜30日 10〜20ml 80〜100ml 6回

子猫にミルク2

ミルクを吐き出してしまったら…

生まれたばかりの子猫はミルクを上手に飲めないため、鼻から出たり、むせて吐き出したりすることがあります。一度にたくさんの量を流し込んでしまうとこうしたことが起こりますが、ほかに哺乳瓶の乳首の穴が大きすぎることも原因のひとつに考えられます。穴の大きさを調節するため、新しい乳首に交換しましょう。また、口の奥深くまで乳首を入れると、のどが刺激され吐いてしまうことがあります。浅すぎると子猫はミルクを吸い出せません。子猫の口に乳首がぴったりおさまるようにくわえさせてください。

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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