口の中の空間と鼻の穴とを隔てている「口蓋」と呼ばれる隔壁部分に亀裂や穴が生じ、繋がってしまっている状態のことを「口蓋裂」といいます。食べものをうまく飲み込むことができず、栄養失調や脱水症を起こしやすくなり、慢性鼻炎や気管支炎、誤嚥性の肺炎を引き起こすこともあります。
こんな症状に気をつけて
生後間もない子猫にミルクを飲ませた際、ミルクが鼻から出てきてしまうようなことがあれば口蓋裂が疑われます。口腔(口の中の空間)と鼻腔(鼻の穴)がつながっているため、ミルクをうまく飲み込めないのです。さらに、ミルクが気管から肺に流れ込んでしまうと誤嚥を起こし、呼吸困難や肺炎を引き起こす恐れもあります。これは成猫でも同様で、食べものや水をうまく飲み込めない、常に咳やくしゃみが出るなどの症状が見られます。
口蓋裂の原因
妊娠中の母猫の栄養障害や胎児の成長に有害な薬剤の投与、ウイルス感染症などが原因で口蓋裂の子猫が生まれてしまうことがあります。また、遺伝性の要因が子猫に影響するともいわれています。
成猫の場合、事故で頭部に衝撃を受けたことが原因で口蓋に亀裂や穴が生じる例もあります。ほかに落下事故や感電による事故、歯周病が悪化して発症する場合もあるといわれています。
口蓋裂の治療
生後3カ月齢ぐらいを目安に、裂けている口蓋裂部分を塞ぐ外科手術を行います。裂傷部分の左右から口蓋粘膜を剥がして寄せて縫合します。裂傷部分が塞がり治療が完了するまでは、誤嚥性肺炎を防ぐため経胃カテーテルなどを用いてミルクや栄養食を摂るようにします。
とても珍しい病気ですが、手術をすれば助かる確率はとても高いといわれています。ただし、手術を受けることのできない野良猫の場合は子猫のうちにほぼ命を落としてしまいます。
一番の治療法は外科手術ですが、成猫で裂傷が小さく、栄養や水分の摂取にも問題がなければ、手術をせず経過を見る場合もあります。
予防
先天性の口蓋裂の発症を予防することは難しいですが、誤嚥性肺炎などは早期発見で防ぐことができます。生後間もない猫を迎えたら、まずは口腔のチェックや検診を受けましょう。同時に、咳や鼻水は出ていないか、ミルクきちんと飲み込み、体重が増えているかどうかのチェックも怠らないようにしましょう。成猫の場合は交通事故や落下事故、感電などに遭わないよう気をつけなければいけません。交通事故は完全室内飼いにすることで防げますが、落下事故や感電は室内でも起こりうるもの。ベランダから落下し口蓋に亀裂が生じてしまったという症例もあります。猫に危険が及ばないよう、家具の配置や電気の配線など飼い主さんが細心の注意を払う必要があります。
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