猫は健康な時でも、毛玉を吐き出すなどの生理的な理由で吐くこともあり、よく吐く生き物と考えられています。でもちょっと待って。猫の吐く行為がよくあることと思いこんで、危険な嘔吐を見逃していませんか?

ゲーゲーと激しく吐く

一日に何度も吐く

吐き出したものに異物や血が混じっていた

それは危険シグナルなのです。猫が「吐く」のには様々な原因が考えられますので、ここでは猫ちゃんが吐いてしまったとき、どんなことをチェックすればいいのかをご紹介します。

 

そもそも猫がすぐに吐くのはなぜ?

猫は肉食動物のため、獲物を丸飲み状態で食べようとします。そうすると食べるときに一気に飲み込んでしまったり、たくさん飲み込もうとすると、一度吐き戻してしまうことがあるのです。また、吐くことで獲物の中の被毛や骨など不必要なものを吐くともいわれています。猫の吐き戻しは、食事の最中や食べた直後に起きやすく、吐き出したものをまた食べてしまうこともあります。吐き戻しの場合、食べたものは胃の中までは到達しておらず、食道から戻ってきています。

猫が吐き出すものとしては、毛玉があげられます。猫は日ごろから毛づくろいをしていますが、そのときに一緒に毛も飲み込んでしまいます。猫の舌には細かい突起がついていて、毛をひっかけるブラシのような役割も果たしているので、さらに飲み込みやすいのでしょうね。そこで飲み込んだ毛が胃の中で球状になってしまうと、それがおなかで詰まらないようにするために毛玉を吐き出すわけです。また異物を吐き出すために、猫草を食べ、それといっしょに吐き出す猫もいます。

ほかにも、咳をしたあとにオエっとなって、そのまま吐いてしまうケースや、空腹時間が続くことで胃液や胆汁を吐き出すケースもあります。

 

猫が吐いてしまったら…確認すべきこと

猫が嘔吐したときには、以下のポイントを注意して見るようにしましょう。

 

□ 吐いたタイミング(食事前後、寝起きなど)

□ 吐いた回数、頻度

□ 吐いた後の体調

□ 吐き出した物の内容

□ 咳やよだれの有無

 

ひとまず様子を見ておいて問題ない嘔吐

猫が嘔吐したとき、ひとまず様子を見ておいてよいと思われるのは、以下の4つのポイントをすべて満たしている場合のみです。

□ 吐く回数が週に1回以下

□ 体重が減っていない

□ 食欲は減退していない

□ 下痢をしていない

この4つのポイントを全て満たしており、吐く以外の症状が見られず、吐いた後にいつも通りの元気があれば、一旦様子を見ておいて大丈夫でしょう。生理現象によって吐いていることが考えられます。

 

すぐに病院に連れて行くべき!“危険な嘔吐”

何度も何度も激しく吐く

1度だけではなく、何度もゲーゲーと激しく吐く場合はすみやかに病院に連れて行きましょう。1日に何回も嘔吐することにより、脱水症状が起こります。また激しい嘔吐は、感染症の疑いや、毒性のあるものを食べたり舐めたりしてしまった際の中毒症状、さらには膵炎(すいえん)の可能性も考えられます。猫が中毒症状を起こす食べ物については、「絶対に猫に与えてはいけない食べ物【獣医師監修】」も併せてご覧ください。

吐こうとするのに吐き出せない

吐こうとしているのに何も吐き出さない、口からたくさんよだれが出ている、などは誤飲したものがつまっている可能性もあります。ゴムやひもなど遊び道具を飲み込んでしまうことは起きてしまいやすい事故のひとつですが、開腹しないと中のものが取り出せない場合もあります。飲み込んだものに心当たりがある場合は、獣医師に形状や材質を詳しく伝えましょう。

食べたものや胃液を何度も吐く

食べたものや胃液を何度も吐く、といった症状も異物誤飲によって起きている可能性があります。また吐いたものの中に食事で出したもの以外のものが少量ながらも混じっているときは、誤飲したものを出せない状態です。場合によっては食欲がなくならないこともあるのでわかりにくいですが、早急に病院に連れて行く必要があるでしょう。異物誤飲については、「猫の異物誤飲【獣医師解説】」でも詳しくご紹介しています。

血が混じったものを吐く

吐いたものに血液が混ざっていたら、消化器の病気が疑われますのですぐに病院に連れていきましょう。吐いたものが赤いときは、口内や食道から出血している場合、赤よりも褐色~黒っぽい色をしているときは、胃や腸から出血している場合が考えられます。

嘔吐以外の症状も見られる

吐き気が続いてぐったりと元気がない様子になっている、食欲もない、などの場合は、内臓疾患や感染症、甲状腺機能亢進症など代謝の病気、さらにはガンなど、重篤な病気の疑いも出てきます。緊急性が高いので、すぐに動物病院に行くようにしてください。甲状腺機能亢進症については「猫のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)【獣医師解説】」、ガンについては「猫の癌(がん)とどう向き合う? 癌の治療法とは【獣医師解説】」もご一読ください。

 

猫が吐くことには、さまざまな原因が考えられます。「猫は吐く生き物だから」という概念で油断していないで、生理現象としての嘔吐と、病気の症状としての嘔吐を正しく見極めて、なにかあったらスグに病院にかけこめるよう対処してあげましょう。

 

 

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★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

【治療】

■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり 

【症状】

■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い ■後遺症が残ることがある

【対象】

■ 子猫に多い ■ 高齢猫に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い  

【季節性】

春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】

■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつるか】

■ 犬にうつる ■ 人にうつる ■ 多頭飼育で注意 

【命への影響度】

■ 命にかかわるリスクが高い

【費用】

■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防】

■ 予防できる ■ワクチンがある

 

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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