猫の耳の病気「耳血腫(じけっしゅ)」は、あまり聞き慣れない病名かもしれません。耳のトラブルは、猫によく見られます。耳血腫はそのひとつで、耳たぶに当たる耳のひらひらした部分、“耳介(じかい)”がなんらかの原因で内出血を起こし、その内部に血がたまり膨れあがってしまう状態をいいます。

 

耳を引っ掻いたり、頭を激しく振ったりする仕草がサインに

耳血腫はまだ詳しく原因が解明されていませんが、外耳炎をこじらせたことで罹るケースが多いといわれています。外耳炎は、音の通り道である外耳道(がいじどう)に炎症が発生した状態で、耳血腫は、外耳炎による痒みなどから耳を引っ掻いたり頭を激しく振ったりして、耳介に物理的刺激が加わることで発症すると言われています。

また、飼い主による不注意な「耳掃除」や耳ダニ寄生から外耳炎となり、それが耳血腫へと発展することもあるようです。外耳炎以外にも猫同士のケンカなどの外傷や、さらに血小板減少症などの血液の異常などの疾病が原因となる場合もあります。

症状としては、足で耳を引っ掻いたり頭を激しく振ったりする仕草が見られます。症状がこじれたり治療が遅れたりすると、耳の形が変形してしまう危険もあります。

 

日頃の予防と、早めの対処が重要です

耳血腫の治療法としては、血腫が小さい場合は患部に注射針を刺し、たまった液体を抜き取ります。大きな血腫は患部を切開し、たまった液体や血液を排出します。

同時に耳ダニ感染など原因となる病気が明らかなときは、その治療も行います。 耳介内部やその周囲に炎症や感染が起こっているときは、抗炎症剤や抗生物質の投与といった内科的治療を行う場合もあります。治療の際は猫が自ら耳を引っ掻かないように、回復するまでエリザベスカラーなどで保護が必要となる事もあります。

耳血腫外耳炎が原因となる場合が多いため、その予防としては日頃からのこまめな耳の観察が重要です。耳あかの量や色、耳の臭いをチェックし、耳介が腫れているなどの異常がある場合、あるいは耳を痛がったりかゆがったりといった症状が見られた際には、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。

 

個性的でキュートな猫の耳、美しく健康的に保ちましょう

凛々しくピンと尖っていたり、まるく優しく癒しを感じさせたり、あるいはスコティッシュフォールドのように折り畳まれていたり、はたまたアメリカンカールのようにくるんとカールしていたりと、猫の耳は個性豊かで、それぞれとても魅力的です。

 

耳血腫は、治療が遅れると耳介軟骨が変形して耳全体が萎縮し、耳が引きつれたような後遺症を残します。猫のチャームポイントである耳を美しく保つためにも、日頃から耳のコンディションに気を配り、異変に気がついたら、早急かつ適切な対処を心がけたいものです。

 

 

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外耳炎:「猫の外耳炎

中耳炎・内耳炎:「猫の中耳炎・内耳炎

 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

☞例えば、下記のような猫ちゃんの「症状」から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

●耳・鼻:鼻水が出る鼻血が出る耳が臭い耳をかゆがる・かいている耳が赤い耳垢が多い

●目:涙が出る・目やにが出る目がショボショボしている目が赤い目が見えていない目の色がおかしい

目を気にする

尿の回数や量が多いトイレを失敗する

● 消化器: 吐いている血を吐く

● 食事:元気がない食欲がない食べすぎる水を沢山飲む疲れやすい太る痩せる偏食する

● 口:よだれが多い口を気にしている口の中にできものがある食べづらそうにする歯石がついている歯肉が赤い歯肉が白い口が臭い口の中から出血している

● 呼吸:くしゃみをする咳をする呼吸が苦しそう口を開けて呼吸をする

行動: 足をあげる歩かないふらつく性格が変わるグルーミングが減ったグルーミングが増えた

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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