ピンと立った猫ちゃんの耳。そのかわいさは誰もが認めるところです。この猫ちゃんの耳は非常に研ぎ澄まされた鋭敏な器官で、猫ちゃんの五感の中でもっとも発達しているという「聴覚」をつかさどっています。猫ちゃんは自分自身でのグルーミングを欠かさないお手入れ好きの動物ですが、これほど大切な耳を自分では見えないので、お手入れすることができません。飼い主さんが代わって猫ちゃんの耳の状態をチェックしてあげましょう。

耳で健康チェック

個体差はあるものの、猫の耳は基本的に健康であれば、それほど汚れることはありません。うっすらと耳垢が見える程度であれば正常の範疇。必要以上にお手入れしようとすると、逆に傷つけてしまう恐れがあるので、無理に耳掃除をする必要はないのです。それよりも、定期的に耳の状態をチェックすることを心がけてください。

猫の耳は、L字型の構造をしていて、一番外側のいわゆる猫耳形の部分は耳介とよばれます。耳の穴は耳道といわれ、この長い耳道というトンネルの奥に鼓膜があるという形状になっています。
耳の穴(耳道)には皮脂腺と耳垢線と呼ばれる腺があり、これらの腺から出される分泌物が耳の奥に入ろうとする細菌やほこりなどを手前でキャッチしています。この分泌物が固まったものが耳垢です。分泌する量には個体差があり、耳の健康状態によっても差が出てきます。分泌物が多ければ耳垢が多くなり、多すぎると耳道をつまらせるもととなるわけです。
耳道の部分は細くなっており、外から肉眼で確認できるのは一番外の耳介の部分です。飼い主さんは、この部分をチェックして、必要ならばお手入れをしてあげるようにしましょう。

耳がくさい」「耳垢が大量に出てくる」、こんなときは外耳炎が疑われます。耳垢というより乾いた黒い粒状の汚れ(たとえていうならば、ドリップコーヒーを淹れたあとのカスのようなもの)が出るときは耳ダニの可能性が。悪化すると、かゆみから耳の周辺をかいて耳を傷つけてしまうこともあります。
とくに耳垢が見えているわけではないのに、しきりに耳を気にするしぐさをするときは、中耳、内耳に問題がある場合があります。あるいは、アレルギー性皮膚炎の症状のひとつとして、耳をかゆがっているということも考えられます。これらの症状が見られる場合は、早急に動物病院で診てもらいましょう。

耳のお手入れの目安は?

猫の耳の状態は個体差が大きいので、お手入れの必要の有無、その頻度はそれぞれです。ブラッシングのときに、ついでに耳の状態を観察するクセをつけるとよいでしょう。耳の穴の入口部分に耳垢がたまっていたら、お手入れのタイミングです。

体質的に耳の脂分が多い猫は、分泌物も多く耳垢がたまりやすい傾向にあります。また、いわゆる「タレ耳」のスコティッシュフォールドという猫種は耳の通気性が悪いので、耳垢がたまりやすいといわれています。こうした猫の場合は、より頻繁に耳のチェックが必要となりますね。

耳のお手入れの仕方

水や耳用クリーナーでぬらしたコットンでぬぐうだけで、おおよその汚れはとることができます。繊細な器官である猫の耳を傷つけないよう、「こすらず」「ソフトに」をモットーにお手入れしましょう。

この際、綿棒を使うことはNG。耳の中に綿棒をいれているときに、猫ちゃんが頭を動かすと、猫ちゃんの耳の中に綿棒が刺さってしまう危険性があるからです。また、クリーナーを耳にあふれるくらい流し込み、耳をもんでからふき取るという方法が紹介されることもありますが、こちらもおすすめできません。猫の耳の中に液体がたまると、中耳に障害がおきて「斜頸」という症状が出てしまうことがあります。

耳を軽く引っぱり広げる

水あるいは耳用クリーナーを浸した清潔なコットンを指にまきつけておきます。そして耳の内側が見えるように軽く引っぱりあげます。

見えている部分の汚れを拭きとる

見えている部分の汚れをそっと拭きとります。「こすらない」ことを心がけてください。
猫は耳道が狭いため、見えている範囲のみお掃除すればOKです。

 

 

 

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「耳」に関する病気を調べてみる
 
☞例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

かかりやすい病気

再発しやすい

多頭飼育で注意

子猫に多い

手術費用が高額

生涯かかる治療費が高額

高齢猫に多い

人にうつる

初期は無症状が多い

命にかかわるリスクが高い

生涯つきあっていく可能性あり

緊急治療が必要

ワクチンがある

予防できる

 

 

◆猫の『耳』に関連する「にゃんペディア」獣医師監修記事も、あわせてご覧ください。

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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