すらりと長いしっぽは猫の特徴の1つですが、日本に住む猫たちには、カギしっぽや丸いしっぽなど、短くてさまざまな形をしたしっぽも多く見受けられます。日本の品種、ジャパニーズボブテイルはその代表格でしょう。このようなしっぽのバリエーションは西洋にはあまりないそうです。日本の猫たちはどうして短いしっぽを持つのでしょうか。その理由をご紹介します。

 

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猫のしっぽのつくりと形とは?

しっぽの構造

しっぽは背骨の続きであり、おおむね18~20個の尾椎でできていますが、個体差が大きく猫によって数は異なります。先端まで骨も神経も通っていて、さらに骨の周りにはしっぽを上下左右に動かしたり、細かく動かしたりする大小の筋肉が取り囲んでいます。これが猫のしっぽ特有の、クネクネと柔軟な動きを可能にしているのです。

しっぽの形や長さのバリエーション

日本で見られる猫のしっぽには次のようなものがあります。

 

□ 一般的なタイプ:通常よく見られる長いしっぽ。30㎝以上になることも。

□ カールタイプ:やや長めで、カールしたしっぽが下に垂れているタイプ。

□ カギしっぽタイプ:しっぽの先が折れ曲がっていたり、ねじれていたりするタイプ。長いものから短いものまで長さはさまざまある。

□ ボブテイルタイプ:5〜6cm程度と短く、丸まって見えるタイプ。ジャパニーズボブテイルアメリカンボブテイルが有名ですが、雑種にも見られます。そのほか、マンクスというしっぽがほとんどない品種も。特にマンクスの中の全く尾椎がないランピーと呼ばれる品種は、遺伝子上致死率が高く脊椎に奇形が発生することもあるため、ランピー同士の繁殖は推奨されていません。

 

ちなみに、しっぽの太さは個体差がありますが、それはもともとの骨格が細いか太いかの違いだそうです。また太っていると脂肪がついて、しっぽも太くなることもあります。

 

短いしっぽのルーツとは?

短いしっぽの構造、由来

単純に尾椎の数が少ないだけでなく、骨同士が癒合したり、長さが半分しかない奇形の椎体の組み合わせだったりすることも。これが、カギしっぽや丸まったしっぽの原因です。しっぽの短さに関わっている遺伝子は、マンクスだけが持つ遺伝子と、東南アジアから中国南部にかけて広域的に生息する雑種猫が持つ遺伝子「HES7」とがあります(未知の第3の遺伝子が存在するとの説も)。

日本の猫は、平安時代前期に中国から来たと考えられており、HES7が関わっているとされています。しっぽの短さは優性遺伝のため、父猫、母猫のどちらか一方が短いしっぽであれば、子どもも短くなる可能性が高く、日本でも短い尾の猫がよく見られるようになりました。

 

 

日本には短いしっぽの猫が多い

ヨーロッパでは、しっぽの短い猫をほとんど見かけません。一方、前述したように東南アジアや中国南部ではしっぽの短い猫は一般的で、中国から猫が来た日本にも、当然、尾の短い猫が入ってきたはずです。

 

しかし平安時代などの資料、たとえば鳥獣戯画を見ると、そこに描かれている猫の尾は短くありません。それなのに、猫が一般庶民のペットとなった江戸時代になると、絵の中はしっぽの短い猫だらけに。絵の猫が実際の猫の短い尾率を表しているかは不確かではありますが、少なくとも江戸時代になると人々の間でしっぽの短い猫が身近になったことが分かります。これは、庶民の間で長いしっぽを持つ猫が、長じて猫又という妖怪になると信じられ、短いしっぽが好まれたためでしょう。

 

 

特に長崎に多い短いしっぽ

長崎県では、7割もの猫が短いしっぽを持つのだそうです。江戸時代に日本は鎖国をしていましたが、長崎の出島だけがオランダとの交易を許されていました。当時、交易をおこなっていたオランダの会社の拠点であるインドネシアから船が来ていたのですが、このときネズミ除けとして乗っていた猫たちが出島から入り、長崎に居ついたと考えられます。

 

インドネシアも世界最多の島を抱える国であり、長崎も日本で一番島の数が多い県です。「島」は、短いしっぽの猫が増える重要なキーワード。普通であれば淘汰されてしまう可能性がある短いしっぽの猫も、島のような隔絶された天敵の少ない環境であれば、生き残って子孫を増やすチャンスがあるからです。インドネシアという島で生まれた短いしっぽの猫たちが、長崎という島の多い土地柄でさらに増えていったのかもしれません。

 

カギしっぽは幸せを呼ぶ?

かつて日本では、猫又にはならないしっぽの短い猫が好まれましたが、それが転じて、短いしっぽは縁起が良いと考えられるようになりました。また、ヨーロッパではカギしっぽがレアなため、出会うとラッキーな猫なのだそうです。さらにしっぽの先がフックのような形をしているため、幸運を引っかけるとも信じられています。

 

カギしっぽ以外にもラッキーキャットと信じられている猫をご紹介します。

 

三毛猫

日本では、三毛猫も縁起が良いと信じられてきました。招き猫も多くは三毛猫がモチーフになっています。日本では3という数字が縁起が良いため、三毛も同様に縁起が良いとされるのでしょう。また、オスの三毛猫はさらにレアで(三毛猫の中で3000匹に1匹の割合)大変縁起が良く、船の守り神とも考えられていました。第一次南極観測隊のお供として南極にまで行ったツワモノもいます。

 

黒猫

黒猫と言えば、古くから魔女の使いや不吉な印として欧米諸国では嫌われていますが、イギリスやドイツ、ベルギーなどの一部地域では、幸運を呼ぶとも。日本では、黒猫はむしろ魔除をしてくれる福猫としてありがたがられ、黒い招き猫は商売繁盛のお守りとして店頭に置かれます。

 

オッドアイ

片方の目がブルー、片方の目がゴールド(またはカッパー)になるオッドアイの猫は、希少であるために多くの国でラッキー猫とされています。日本でも「金目銀目」と呼ばれたり「変わり目」と呼ばれたりし、福猫として古くから可愛がられてきました。

オッドアイ白猫に多く見られますが、白猫で目が青いと遺伝的に聴覚障害であることが多く、オッドアイも2割程度が青目の側の耳に障害を持つとされています。飼育するにあたって特別なケアは必要ありませんが、ハンデのある猫を飼うことには、より大きな愛情と責任が伴うことを念頭に置きましょう。

 

 

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Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

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