Fotolia_108915298_Subscription_Monthly_M-min

気分屋の代名詞にもなっている猫ですが、猫の立場からするとむしろ周囲の反応を気にする人間の方が奇妙に映るかもしれません。猫は歴史的にほとんどの時間を1匹で過ごしてきました。野生のネコではいまでも交尾の時以外はほとんど他の猫と接触することがありません。そのため少し古い獣医学の教科書には「猫は孤独を感じない」と記述されていることもあります。長い間、誰にも頼らず1匹で生き抜いて来たため、猫は現在でもマイペースを貫いています。ご飯をあげても感謝しない、抱っこは嫌がる、ソファの上からどいてくれない、撫でていたら突然怒り出すなどなど、猫が気分屋といわれるエピソードには事欠きません。

環境の変化のおかげで社交的に…?

一方で、最近では猫も変化しており協調性のある猫も出現しています。飼い主を敬愛し、抱っこされても嫌がらない犬のような猫にしばしば会うことがあります。猫の性格の変化には、生活環境の転換が関係しているようです。

もともと猫はネズミ捕りの才能を買われて、人の生活圏で暮らすようになりました。そうした中で人から逃げない友好的な猫が出てきました。しかし、人の生活圏で暮らすようになったとはいえ、実際に室内飼育で家族として一緒に暮らすようになったのはここ50年くらいの話です。野性的な面を残しながらも、徐々にペットらしい性格になっているのが現在の猫であるといえます。

猫は半家畜化された動物?

ある研究者は現在の猫のことを「半家畜化(semi-domesticated)」されている、と表現しています。家畜化というと動物愛護のかけらもない言葉ですが、これは学術用語なのです。人と一緒に生活し、人の生活に恩恵をもたらすよう、人が遺伝子レベルで関与する事を生物学用語でドメスティケーション(domestication)といいます。これを日本語で直訳すると家畜化になるのです(ペットの場合は愛玩化ともいう)。犬や牛ほど人に慣れてはいませんが、チーターなどの野生動物ほど人を恐れない猫は、まさに中間に位置しています。動物病院や知らない人の前だと、怖くてシャーシャー威嚇してしまう猫は、まだ野生が強いタイプなのでしょう。一方で、初めて会っても頭を擦り付けてくるようなペット寄りの猫もいます。

野生とペットの間にいるために怒る時と怒らない時があったり、一匹になりたい時と飼い主に甘えたい時があるわけで、そんな性格がよりいっそう気分屋だと評されるのではないでしょうか。

時間で変わる猫の気持ち

Cute cat with tasty dessert and cup of coffee on table in cafe, view from outside

朝一番に太陽を見ると目覚めが良くなるという、話を聞いたことはないでしょうか。我々人間も、光の具合によってホルモン(メラトニン)が調整され、リラックスした気分や、活動的な気分になります。これは動物が規則的な生体リズムを維持するための機能で、猫にも備わっています。

人は”昼行性”といって、日中に活動する動物です。一方猫は”薄明薄暮性”といって夜明けと夕暮れにもっとも活動力が高まるように調整されています。季節によって異なりますが日本では午前4時前後と午後6時前後が、いちばんテンションが高くなります。やたらと早起きで、朝からご飯をせびってくるのはそのためです。

活動時間が2つに分かれているため、その間は休憩時間になります。ただし、人間と長く暮らしている猫は、徐々に人の生活リズムに似てくると言われています。

季節で変わる猫の気持ち

日照時間の変化は性ホルモンに影響を与え、繁殖シーズンの到来を知らせます。日本では、猫の発情期は2月〜4月と6〜8月がピークになり、約2ヶ月の妊娠期間を経て出産をします。寒さに弱い子猫を守るため、できるだけ暖かい時期に出産をするためです。そのためこの期間は、オスはメスを探すため冒険欲(外にでたがる)が出てきたり、メスは異常にゴロゴロと体を地面にこすりつけたりします。避妊去勢手術を受けた猫でも、野良猫のフェロモンが出る時期なので外の匂いに反応して活動的になったり、不安を感じてしまうこともあります。

天気で変わる猫の気持ち

雨の日が嫌いな人は多いでしょう。人間同様、やはり猫も雨は嫌いなようです。雨の日は他の動物もおとなしいため狩りの成功率が低いためか、寝ていることが多いように感じます。ただし雨が降ると私たちも家にいる時間が長いため、余計に日中の猫を観察できるから、そう感じるのかもしれません。

逆に、暑すぎる日も活動性がかなり落ちるようです。現在、「世界中にいる猫は砂漠に住んでいたリビア猫が祖先になっているため暑さには強い」と信じられていますが、実際には日本の夏は堪えるようです。

特に真夏の日中は活動性がかなり落ち、野良猫でも日陰で体を伸ばして熱を発散している姿をよく見かけます。猫が最も過ごしやすい温度は20℃前後と、人間とほとんど変わりません。

 

 

猫の気分がコロコロ変わるのは、これまで単独で生活してきたことと、猫の性格にも変化が起きていることが大きな理由のようです。人と違う歴史を歩んできた猫と人間。完全に分かり合うことは難しいと思いますが、お互いに歩み寄ることはできます。長年人と暮らしている猫が人間の生活リズムに慣れていくように、長年猫と暮らしている人は、普通の人よりも猫の気分を読むのがうまいと思います。

Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

詳細はこちら

関連記事

related article