「猫をかぶる」ということわざで表現されるように、猫は一見おとなしく、表情が乏しく見えます。確かに猫の表情には人間のような大きな変化がないので、猫をあまり見慣れていない方からすると、猫が何を考えているのかわからないかもしれません。なぜ猫はそれほどポーカーフェイスなのでしょうか。

猫は群れで暮らさない生き物

そもそも表情とは、自身の感情を外見や身振りなどで相手に伝えるためのもの。そのため、集団で生活する動物の間で発達してきました。その代表がヒトやイヌです。ヒトやイヌのように集団の中で暮らす種は、お互いの些細な感情を感知する能力を発達させてきました。相手の感情を読み、自分の気持ちを相手に伝えることができることで、円滑に集団行動ができるのです。

 

一方、猫は基本的に集団行動をしない動物なので、猫同士で感情を伝える必要がありませんでした。野生環境の猫は親離れした後、交尾のとき以外は他の猫との接触を避けて生活しています。

猫が感情を露わにするのは、オス同士の争いや、メスが子猫を守る時だけ。そのため競争するための感情は豊かです。蛇のようにシャーと言って牙を剥いたり、目を見開いて睨みつけたりするのは、相手を威圧するためのものであると、私たち人間でも容易に理解できますよね。オス猫は子孫を残すためにライバルを追い払い、メス猫に受け入れてもらわなくてはいけません。一方メス猫は、子猫を外敵から守らなくてはいけません。そのため、威嚇や拒否するときはハッキリとした表情があるのです。

 体調不良もあまり見せない

猫は病気で体調が悪い時も顔に出さない動物です。これも一匹で生きていく上で、周囲に弱っている姿を見せてもいいことはないからだと考えられています。骨折をしていても普通に歩いていることもよくあります。辛そうな表情を浮かべているときは、かなり病気が進行していることが多いでしょう。

猫は匂いで会話する

五感の中でも、動物ごとに得意な感覚は様々です。人間は最も視覚が優れていて、次いで聴覚、嗅覚となります。一方、猫は嗅覚から最も多くの情報を得ていると考えられています。

私たち人間はお互いを記憶するとき、顔と名前をリンクさせますが、猫は匂いで認識します。人間は相手の機嫌や体調を理解するときに顔色を伺いますが、猫は匂いから相手の強さや体調を推定することができ、自分が敵わなそうな場合は無駄な争いを避けます。つまり猫は、視覚よりも嗅覚に頼って生きているため、相手の表情よりも匂いを重視しているのですね。そのことも猫があまり表情を作らない理由の一つなのでしょう。

猫のボディランゲージ

猫にも感情を表すボディランゲージはあります。例えば、尻尾をあげて近づいてくる、頬を擦り付けるなどは好意を示すサインです。また目を細めているのは安心していることを伝えるサインなのですが、人間の感覚からすると眠そうに見えたり、機嫌が悪く見えたりします。

威嚇や警戒を示すサインもあります。耳を後ろに向ける、髭を広げる、毛を立たせる、斜めに構えるなど。これらは種類が多く、かつ、種を超えて分かるほど強烈です。視力がそれほどよくない猫は、相手に自分をいかに大きく、強そうに見せるかが重要なので、特に怒った時は尻尾が3倍くらいの太さに膨らみます。昔の人はそれが化け猫に見えたと言われています。

 

 

猫は生後数ヶ月で独立し、その後は自給自足の生活を送るため、複雑な感情表現を必要としませんでした。人と一緒に暮らすようになって、飼い主とのコミュニケーションが必要になりましたが、まだペットとしての歴史が浅いのであまり表情が豊かではないのでしょう。

猫が人に対して愛情を表現できないというわけではありませんが、示し方が下手なので、ツンデレと言われる所以もそこにあるのかもしれませんね。

Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

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