賃貸住宅を探す際、「ペット可(但し、小型犬1匹まで)」このような条件を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか?ペットが家族の一員になりつつあるのに、ペットと一緒に働ける会社はまだまだ少ないですよね?
そこで、今回は株式会社ニッセイ基礎研究所にて不動産証券化、不動産投資分野の調査研究を担当されてきた不動産のスペシャリストであり、『猫を助ける仕事~保護猫カフェ、猫付きシェアハウス(共著)』(光文社)を上梓された松村主席研究員にインタビューさせていただきました。
東京キャットガーディアン代表の山本さんの革新的な取り組み
私はニッセイ基礎研究所に28年間勤め、これまで機関投資家といわれるプロの不動産投資に関わる調査研究をやってきました。ただ、最近はビルを使うオフィスワーカーや住宅の購入者などエンドユーザーの側にもっと焦点を当てていきたいと考えるようになりました。なぜなら、他のサービス業に比べて「顧客志向」や「未来志向」の弱い不動産ビジネスをなんとか変えたいという思いが強くなったからです。
猫を賃貸住宅で飼育したい方が多いにもかかわらず猫飼育可の賃貸住宅が少ない理由は、まだまだ顧客本位ではないためです。少子高齢化で競争が激化する中、不動産ビジネスはもっと顧客の要望に耳を傾ける努力が必要だと思います。
もちろん、新しい仕組みやサービスでは必要な対価をもらうことは当然です。猫が飼える住宅は、家賃を周辺より高く設定する、管理費を高くするなど他の賃貸住宅にない付加価値に見合った対価を要求してもかまわないでしょう。しかし、そういった新しい仕組みを提供しようという大家さんや不動産会社はほとんどありません。
そんな中、東京キャットガーディアン代表の山本さんが猫の保護、譲渡活動のほかにも猫付きマンションや猫付きシェアハウスという住宅ビジネスに絡めた新しい仕組みづくりに取り組んでいることを知ってコラムや本で紹介したところ、ご縁が出来て一緒に本を書こうということになったのです。
不動産業界は「顧客志向」、「未来志向」に欠けている?
経済が高度成長し、人口が増加している時代に現在の分譲や賃貸ビジネスが出来上がったことが大きな原因で、少子高齢化や生活スタイルの多様化に対応できていません。日本の借家法は借り手が非常に有利になっていて、大家さんが一方的に借家人を退去させることはできないので、家族が増えたら出ていかざるをえないような狭くて居心地の悪い住宅を作ったといわれます。また、戦後長らく家賃の上昇が続いたため、借家人がどんどん入れ替わってくれる方が収入が増える。
また、相続税対策など節税のためのアパート経営が主流だったので、市場や経営に関心のない大家さんが多かった。もちろん、人口が増えているので空室の増加を心配する必要もあまりなかったわけです。結果として、顧客の望む本当の住宅や管理サービスを追求するモチベーションが働かなかったし、顧客も貸し手市場時代に出来上がった慣行を当たり前と思うようになってしまったのではないでしょうか。
猫ちゃんも人間も幸せになれるソーシャルビジネスとは?
私が東京キャットガーディアンから子猫二匹を引き取ったのが山本さんとの最初の出会いでした。今から約7年前です。当時は猫の保護活動や東京キャットガーディアンの取り組みについてはほとんど何も知りませんでした。その後、山本さんと再会して、東京キャットガーディアンが保護した猫を年間600匹~700匹も譲渡しているすごい実績のある保護団体であることがわかりました。
さらに、保護猫の居場所づくりのために、猫付きシェアハウスや猫付きマンションという新しい取り組みをされていることにも驚きました。何よりも、保護活動の規模を拡大していく、つまりできるだけ多くの命を救う、という使命を持っておられることを知り、まさにこれは「ソーシャルビジネス」だと感じました。
ちなみに私も今は四匹の猫と一緒に暮らしています。一部愛猫家に話題の「ねこちぐら」という天然の藁を使った猫の住まいを一年半待って手に入れたのですが、残念ながら猫たちの爪とぎになっています(笑)。人間の思い通りにならないところもまた猫の良いところなんです。
勤務先で動物を飼っているまたはペット同伴勤務が許されている企業で勤務経験のある方の割合とは?
1割もの方が動物のいる企業で働いた経験があるという結果は正直驚きました。もちろん、オーナーさんがペットを飼っているような個人経営の小規模な会社も多いのではと思いますが。通常、たくさんの人が集まって働くオフィスでは、動物アレルギーを持っている人や動物が苦手な人にも配慮しなければなりません。また、動物の鳴き声や行動が仕事に支障をきたすことも考えられますし、動物の糞尿やビル内装への傷、逃走などが管理上のトラブルに繋がることもあるでしょうから、ほとんどの企業は動物飼育を認めていません。
そういった問題を解決できるルール作りやオフィスビルの設備・管理が提供されれば良いのですが、特にビルを管理する方が「そんな面倒なことはやりたくない」と考えているのが大きな問題です。設備面や法的な問題でできないわけではなく、結局のところ「ペットの飼えるオフィス空間」を貸したり借りたりすることに対する「心の障壁」が大きいといえるでしょう。
ただ、在宅勤務制度を採用する企業がもっと増えていけば、オフィスとペットの関係も変わるかもしれません。
【動物のいる企業で働いた経験がありますか?(n=531)】
新たな試み~保護猫カフェを都心の一等地に建つオフィスビルで~
もし都心の一等地、例えば東京駅周辺の立派なビルの一階目抜き通り側に保護猫カフェがあれば、動物保護活動の格好のショーケースになるだけでなく、通りすがった人は必ず「え?ここのオーナーは誰?」となりますよね。そして、そのカフェの運営が東京キャットガーディアンのような民間団体で、ビルオーナーが格安で場所を提供していることがわかれば、「動物保護を真剣に支援している社会的責任意識の強い企業なんだ」というふうにそのビルオーナーを評価するのではないでしょうか。
もちろん、そのビルやオフィス街で働く人たちが、オフタイムに猫を見て癒され、リフレッシュできる得難い空間にもなるでしょうし、「あのビルに入居したい!」と思う企業も出てくるかもしれません。増加している外国人観光客にも日本の動物愛護精神をアピールできる機会にもなるはずです。大事なことは、まず都心のビルで実現させることだと思います。
猫ちゃんと一緒に暮らす「幸せ」
わが家で猫たちは家族の一員ですから、何か特別な幸せを感じるというよりも、ペットと一緒にいられること、生活を共にしていることが幸せなことだと思います。
最近よくいわれるようにペットは夫婦の“かすがい”だとも感じます。猫たちと暮らすことでお互いの話題が増えますし、猫たちの体調が悪ければ共に心配し、元気になれば共に喜ぶ。もちろんペットがいてもいなくても会話のある夫婦はおられると思いますが、ペットがいることで話題は増えるし、私たちよりずっと短い生涯の小さな生き物のことだけに喜怒哀楽もより多くなります。
私自身、もともと動物を飼うこと、特に猫は苦手でしたが、ペットと暮らす楽しさを教えてくれたのは子供たちでした。最初は、子供が連れて帰ってきたハムスターがなんとも可愛くて、亡くなると落ち込んで、しばらくしてまた飼うといった具合でした。猫を飼い始めたのも子供が野良猫を貰い受けたのがきっかけです。子供たちや妻のペットへの愛情や優しさから、私の方が情操教育を受けた感じです。
人間に寄り添いながらも自然体で自由に生き、そして生涯を終えていく猫たちの生き方に学ぶことは少なくありません。
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例えば、下記のような切り口で、
【治療】
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