猫の健康や安全を考えると、外で自由に放し飼いにするよりも、室内で飼うほうがいいでしょう。しかし、本来自由気ままな性格の猫を室内に閉じ込めてしまうのはかわいそうだ、と感じる飼い主さんもいるかもしれませんね。猫自身はいったいどのように思っているのでしょうか?ここでは、猫の習性と飼育環境について解説します。

室内飼いと外飼いでは平均寿命が大きく異なる

飼育環境を整えることは、猫の健康のためにとても重要です。2016年の一般社団法人ペットフード協会の調べでは、家の外に出ない猫の平均寿命は15.81歳に対して、家の外に出る猫は13.26歳と2年半以上の差があることがわかりました。猫の1歳は人間換算にすると4歳ぐらいなので、人の年齢で考えると約10年ほど寿命が違うことになります。これだけはっきりと平均寿命に差が出るのは、やはり外の環境の苛酷さが原因だと考えられます。猫同士のケンカなどでケガをしたり、感染症になったり、交通事故にあったりするのは、外の環境だからこそです。動物病院で働いていると、骨折やノミだらけの猫をみることも多く、多くの獣医師が室内飼育を推奨しています。

快適な環境が整っていれば、室内でも満足できる

猫の性格を考えると、野良猫のように自由気ままに暮らした方が短命でも幸せなのではないかと考えることもできますが、猫にとって豊かな室内環境を整えることができれば、室内という限られたスペースでも幸せに暮らすことができます。

猫はなわばりを決めたらなわばりの外に出ないの?

異性を探したり、食事を探すなどの特別な理由がない限り、猫はなわばりの外に出ることはほとんどありません。ノラのように自由に動ける状態でも、メス猫は生まれた場所から600m以上離れることは少ないと言われています。これは狩りをして暮らす他の動物と比べると、非常に狭いことがわかります。

行動範囲の大きさはどうやって決めているの?

性別の違い

行動の範囲の大きさは性別に関係があるようです。基本的にオス猫の行動範囲は、メス猫の行動範囲よりも約3倍広くなります。基本的にオス猫は子育てに一切関与しないので、次のメスを探しに行くため、と考えられています。確実に子孫を残すために、複数のメス猫がいるところを転々とするのです。

食料の違い

また、食料の量によっても行動範囲は大きく変わります。食事が十分にあるエリアの行動範囲は、メス猫で半径約16m、オス猫で半径約52mであるのに対して、食料が少ないオーストラリアの田舎では、メス猫で約半径926m、オス猫で約半径1126mという報告があり、かなり幅があります。このことから、猫は食料を求めて移動することはあっても、十分な食料があれば、あまり移動することを好まない性質であるということがわかります。

行動範囲の中になわばりがある

行動範囲の中で、特に他の猫の侵入を許さない領域があります。それがなわばりです。既に他の猫のなわばりになっている場所に新しくなわばりを作るには、そのなわばりを支配している猫(テリトリーオーナー)を追い払うしかありません。そのため、野良の世界ではなわばり争いのために猫同士のケンカが起きることもあります。室内飼育でも家の中でなわばりを作っているので、多頭飼いの場合は猫1匹あたり1部屋は自分のスペースとして確保させてあげるといいでしょう。

お外が恋しいの?行動から読みとく猫の気持ち

猫が窓の外を眺めているのはなぜ?

猫が窓から眺めているのは、太陽の昇り沈み、風に揺れる葉、鳥や虫が飛ぶ姿などを観察していると考えられます。私たちが窓の外を眺めて気持ちが良いと同じ感覚ではないでしょうか。室内は変化が少なく、刺激がありません。特に若い猫は好奇心が強く、外の虫を獲ろうと必死になることもあります。動く小動物を捕まえるのは猫の本能ですので、できるだけ遊ぶ時間を増やし、刺激を与えてあげましょう。

脱走するのはなぜ?

猫の脱走には2つの理由があります。1つは男性ホルモンの影響。オス猫は成熟すると交尾の相手を残すために放浪の旅に出ます。これは遺伝子を残すための本能的な行動ですので、去勢手術を行うことが解決策になります。もう1つはアクシデントで脱走してしまうケースです。周囲の物音に驚いたり、ベランダから落ちる、移動中にキャリーが壊れるなどが考えられます。そのほかに長年外で暮らしていた猫を室内に入れると、脱走することがありますが、それは慣れ親しんだ外の方がその猫にとって安心するからです。

 

室内飼育でも退屈しないようにしっかり遊んであげたり、キャットタワーを設置してあげたり、猫にとって居心地のよい環境を作ってあげると、猫は限られたスペースの中でも幸せに暮らすことができます。外暮らしが長い猫は、どうしても外に出ていってしまうことがありますが、最初から室内飼育を徹底していれば、家がなわばりになるので外に出なくなります。考え方は様々ですが、健康と長生きという面では室内飼育の方が良いというのは明らかなので、私も獣医師として室内飼育を推奨していますし、私の猫も室内で暮らしています。

Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

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