新入り猫をお迎えするのは楽しみである反面、先住猫と仲良くなれるか不安もあるでしょう。単独生活者である猫の場合、先住が新入りを受け入れるにはそれなりの段取りを踏まないと喧嘩ばかりで失敗してしまうことも。ここでは、新入り猫を迎えるにあたって、初対面時に必ず行うべき手順とコツについて、また、多頭飼いが始まった後の日常生活の注意点についてご紹介します。

新入り猫との初顔合わせは段階的に!

 

新入り猫が来ても、先住猫のもとに連れて行っていきなり合わせたりしてはいけません。多くの猫は、突然縄張りに入ってきた侵入者を脅威と感じてしまうからです。段階的にゆっくり慣らしていく必要があります。

<ステップ1>新入り猫は隔離部屋で数日過ごす

新入り猫を家に連れ帰ったらそのまま隔離部屋に入れ、3〜4日間はそこで暮らしてもらいましょう。たとえ姿は見えなくとも、先住猫は気配や匂いで新入りに気づきます。その間、互いの存在を落ち着いた状況で認知させるために、使っている毛布やおもちゃをそれぞれに与えると良いでしょう。

<ステップ2>初対面は隔離部屋にてケージ越しで

3〜4日後、隔離部屋で新入り猫をケージに入れ、先住猫を部屋に招き入れます。新入りが丸見えにならないよう、布で覆い、隙間から対面したほうが良いでしょう。最初は、威嚇行動が見られるかもしれません。その場合は短時間ですませ、1日に何度か繰り返して少しずつ対面時間を増やします。しかし、どちらかがあまりにも興奮するようであればすぐに対面をやめ、時間をおいて短時間の対面から再び始めてください。威嚇行動が見られなくなったら次の段階に進みます。

<ステップ3>ケージ越しにご飯を与える

ステップ2の状況で、近過ぎず、しかし互いが見えている距離で、先住猫と新入り猫にご飯を与えます。最初は食べるどころではないかもしれませんが、慣れるまで根気よく繰り返しましょう。慣れてきたら徐々に距離を縮め、互いを気にせず食べられるようになれば次に進みます。

<ステップ4>新入り猫のケージを先住猫の部屋に運んで対面

今度は、先住猫のテリトリー内でケージ越しに対面をさせます。これも1日に数度、短時間から始め、徐々に時間を長くします。最初、先住猫はテリトリーを侵されたと思って、再び威嚇し始めるかもしれませんが、少しずつ慣らすようにしてください。さらにステップ3と同様にケージ越しにご飯やおやつを与えれば、仲良くなるきっかけになります。

<ステップ5>ドア越しに直接対面

隔離部屋または先住猫の部屋のドア越しに、直接対面をさせます。ドアを数センチ開けたままにし、この状態で1時間~数時間ほど互いに生活してもらいます。食事や排泄、毛づくろいなどいつもと同様にできれば、開けている時間を増やしていきましょう。

<ステップ6>完全直接対面

ステップ5の状態でお互いが落ち着いていれば、直接対面させてみましょう。もしかしたら、また威嚇や喧嘩が始まるかもしれませんが、流血するほど激しい喧嘩にならない限りは、手出しせず見守ってください。おやつやおもちゃで気をそらすのも1つです。お互いの存在が「いてもかまわない存在」となればひとまず安心です。

 

もし、喧嘩が激しくなっても慌てて手を出さないようにしましょう。飼い主さんまで噛まれてしまいます。そのようなときは、段ボールや板などで割って入り、すぐに別々の部屋に避難させるようにして落ち着かせてください。その後、ステップ5からやり直しましょう。

成功・失敗の判断

一緒に寝てくれたり、互いに毛づくろいをしたりするに越したことはありませんが、猫の場合は、同じ部屋にいることを許している、というだけでも受け入れられたことになります。しかし、喧嘩ばかりでストレスが溜まり、下痢嘔吐体重減少、毛づくろいのし過ぎでハゲるといったことがあれば、同居は難しいでしょう。そのようなときは、まず獣医師に相談してください。場合によっては新しい里親さんを探す必要もあります。

新入り受け入れのコツと上手くいかないときの対策

 

初顔合わせの段階についてお話しましたが、スムーズに運ばないこともあります。多頭飼いを成功させるために、飼い主としてはどうすれば良いのでしょう。

<新入り猫の受け入れのコツ>

□ 新入りと先住が馴染むまでには時間がかる(1年かかることも)と考え、根気よく、気長にかまえる

□ 猫のペースに合わせ、無理強いは絶対にしない

□ 上手く行かなかったら次に進まず、1つ前の段階からやり直す

□ 不安があるときは、トライアル期間がある保護団体からの引き取りも1つの方法

□ ストレス軽減のため、先住猫の生活ペースを可能な限り守る

<どうしても無理な場合>

顔を合わせる度に激しい喧嘩になる、どちらかが体調を崩すといった状態であれば、同居は難しいでしょう。その場合は、新しい里親さんを探すか、部屋に余裕があれば、居住スペースを分けて飼うようにしてください。

多頭飼いでの日常生活での注意点

 

先住猫が新入りを無事に受け入れて日常生活が始まったとしても、単頭飼いのときとは違って気をつけなければならないことがあります。

□ 先住猫を優先すること

新入り猫が来たことで、先住猫は疎外感を感じやすくなります。それがもとで新入り猫を嫌いになることも。名前を呼ぶとき、ご飯を与えるとき、撫でてあげるとき、すべてにおいて先住猫を優先してあげましょう。

□ 食事・飲水量の管理をしっかり行う

多頭飼いになると、他の猫のご飯を盗み食いする猫もいます。年齢差がある場合は、フード自体が違うことがあるため、必ず別々の食器で与え、互いの距離を離すか部屋を分けるようにしましょう。また、それぞれの食事量、飲水量をできるだけ意識して観察するようにしてください。シニア猫がいる場合は、病気の早期発見のためにも重要なことです。

 

□ 排泄物の把握

だれがいつどのような排泄をしたのか、可能であれば、しているところを観察して把握しましょう。見落としが続くと、いつの間にか腎不全などの病気になっていたということも。留守が多く困難な場合は、カメラを使用しても良いでしょう。

□ 災害のときの避難準備

災害時は、飼っている猫全部を一度に避難させなければなりません。キャリーケースやケージ、食料品、トイレ用品などの避難グッズを揃えることはもちろん、ペット同伴可能な避難先の確認と、どのような方法で避難させるかをあらかじめ考えておくことが大切です。

猫の多頭飼育に関する「にゃんペディア」の記事は、こちらをご覧ください。

 

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Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

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