おうちの猫が水をあまり飲んでくれない・・・。じつはこういう猫ちゃん、多いんです。イエネコの先祖は砂漠の乾燥地帯で暮らしていたため、脱水に強く、少ない水分でも体が機能するようにできているといわれます。とはいえ、水が必要ないわけでは決してありません。水は猫ちゃんの体の60~80%を占める大事な要素。膀胱結石膀胱炎などの尿路系の病気を予防するためにも、水分補給はしっかりさせてあげたいものです。ここでは、猫ちゃんに水を飲んでもらうための手法を紹介します。

 

*「にゃんペディア」獣医師監修の関連記事はこちらをご覧ください。

 

猫が好きなのはこんな水

いつも新鮮な水

猫だって新鮮な水を飲みたいもの。水を飲んでもらいたいなら、できるだけこまめに取り替えてあげることが大切です。1日に数回は取り変えてあげましょう。容器の中身の水だけを変えるのではなく、水を変えるときは必ず容器も一緒にきれいに洗浄してください。

また、他の猫(もしくは犬)が口をつけた水は、その動物の唾液が混じってしまい、どうしても臭いがついてしまいます。それを理由に水を飲まなくなる猫もいるので、多頭飼いの場合は飼育頭数以上の飲み水を用意しておいた方がいいでしょう。

様々なタイプのお水

猫は食事と同様、水にも好みが存在します。ここではいくつかの例をご紹介します。色々試してみて、おうちの猫ちゃんの好みを見つけてあげて下さい。

・ミネラルウォーター

・お湯

・お湯を冷まして水にしたもの

・水道水に竹炭や木炭を入れてカルキ臭を飛ばしたもの

・鶏肉や魚などのゆで汁

流水もオススメ

キッチンで、洗面所で、お風呂場で…、水道の蛇口からぽたぽた落ちる水を好んで飲む猫っていますよね。あるいは洗面器の底にたまった、ほんの少しの水をぴちゃぴちゃとなめてみたり…。はたまた仏壇にお供えされた茶碗の水など、思いがけない場所で水を飲んでいる姿を目にすることも。

ちゃんと水用のお皿は用意してあるのに、どうしてわざわざ別の場所の水を飲むのでしょう?こうした水を飲むときのクセについては、猫の行動の中でも不可解と思われるもののひとつです。一説では、与えられた水ではなく「自ら獲得した水」だと感じられるため、好んで飲むのだという解釈もあります。

イエネコの先祖とされるリビアヤマネコは砂漠の乾燥地帯という、比較的水の乏しい地域に住んでいました。そのため、オアシスのようなところから湧き出る少量の水を見つけると「自ら獲得した水」に喜ぶというものですが、いずれも定かではありません。ただ明らかなのは、猫は「自分の好きなところで水を飲みたがる」ということ。置いてある水に見向きもしてくれないようだったら、水道水の蛇口をちょっとだけゆるめて、ぽたぽた水をしたたらせておくことを試してみてはいかがでしょうか。

 

*「猫の歴史」に関するにゃんペディア記事もあわせてご覧ください。

 

 

食器選びも重要なポイント

神経質な猫は、ひげが物に触れるのをとても嫌がることがあります。ひげが食器に触れただけで、食事や水を飲むことをやめてしまう場合もあり、一度嫌になると、同じ食器には口をつけなくなってしまいます。そこで、食器はふちが広いものを用意してあげましょう。水をたっぷり入れたほうがひげが食器に触れずに済みます。また、食器の材質も猫によって好みはさまざまです。ガラス、陶器、ステンレス、セラミックなど、いろいろなタイプのものが売られていますので、試してみるのもいいでしょう。

もちろん、器は常に清潔にしておくことを忘れずに。

 

水の置き場所に注意!

猫はとても嗅覚に優れた動物です。水は常に新鮮なものを用意し、器を清潔に保つことはもちろんですが、その場所にも気を配る必要があります。基本的に食事の皿と並べて置き、食事のついでに水を飲めるようにしておきますが、ここで気をつけたいのが、トイレとは離しておくということ。トイレがそばにあるとその匂いが気になって食事はもちろん、水も飲まなくなってしまいます。また、たくさん飲んでほしいなら、容器をあちこちに置いておくのもひとつの方法です。お気に入りの場所を含め、猫がよく行き来する場所を探して置くようにしましょう。

 

水を飲まない猫にはフードで調整

市販のウェットフードに含まれる水分の割合は75〜80%ですので、食事と一緒に水分も摂取できます。あまり水を飲まない猫の場合、フードをドライからウェットタイプにすることで問題は解消できます。ある研究によると、「ドライフード+水」という組み合わせより、「ウェットフード+水」のほうが、水分摂取量が多いという結果が出たそうです。少しでも多く水を飲ませたいなら、まずフードをウェットタイプにすることから始めてみましょう。

 

飲んではいけない水とは

猫が飲んでしまうと危険な水があるということも、知っておく必要があります。

硬水

ミネラルウォーターを好きな猫がいることは上記でご紹介しましたが、ミネラルウォーターを与える場合には軟水を選びましょう。硬水には多くのミネラルが含まれています。過剰なミネラルの摂取は尿路結石症を引き起こす可能性があるので、硬水を与えるのは避けた方がよさそうです。

塩分たっぷりのゆで汁

ゆで汁を与える際には、塩分などの調味料が入っていないものを与えて下さい。塩分が入っていない場合でも、甲状腺機能亢進症などで厳密な食事療法を実施している場合は、ゆで汁自体を与えない方がいいので、その点は気をつけたほうがいいでしょう。

 

*関連記事☞「猫のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)【獣医師が解説】」

 

花瓶の水

花瓶の水の中に、肥料や植物安定剤などを入れている場合は注意が必要です。

また、特にユリの花を生けてある場合は気をつけなければなりません。ユリ科の植物は猫にとって非常に危険です。ユリの花を生けてある花瓶の水を飲むことは「百合中毒」を引き起こす可能性があります。

そもそも猫にとってユリ科の食物は、葉や花はもちろん、花粉を少し口にしただけで急性腎不全を起こし、死に至る可能性が高い危険な植物です。部屋に置くこと自体をやめましょう。

 

猫はからだが脱水していても、水を飲まない場合もありますので、「水を飲まないのは喉が渇いてないからだ。」と判断するのは危険です。脱水まではいかなくても、水分摂取量が少ないと尿が濃くなり、尿路系の病気の原因となる結石ができやすくなりますので、やはりきちんとお水を飲んでもらう環境づくりをしなければなりません。あの手この手を使って、愛猫ちゃんのお気に入りのお水を見つけてあげてくださいね!

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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