「猫は手がかからないし、散歩もないから楽」という声をよく聞きます。確かに、猫は自立心が強く、病気も犬に比べると少ないので、忙しい方でも飼いやすい動物だと言えるでしょう。とはいえ、猫の性格にも個性があります。甘えん坊でたくさんコミュニケーションを取りたがる子だっていますし、寂しがり屋な子だっています。また、子猫の時はたくさん遊んであげる必要があります。「楽そうだから」という理由で猫を迎えると、迎えた後で後悔することもあるかもしれません。そんな状況に陥らないないように、今回は猫を飼おうか検討している方に向けて、意外と大変な猫との暮らしについて解説します。

猫の楽なところはこんなところ

 

 

 

猫と暮らす上で、楽だと感じる部分はもちろんあります。

お散歩へ連れていく必要がない

犬は定期的にお散歩へ連れて行ってあげる必要があります。体が大きい子であれば、毎日のお散歩は必須ですし、体が小さな子でも、定期的にお外へ出してあげたほうがいいでしょう。しかし猫の場合、お散歩は必須ではありません。これが「猫を飼うのは楽」という考えの根底にあるかもしれませんね。最近では猫をお散歩させる飼い主さんもたまにいますが、基本的にはお部屋の中で過ごさせて問題ありません。

 

シャンプーをする必要がない

猫は自分で毛のお手入れをしますので、シャンプーをしなくても臭くなりません。定期的に入れるとしても年に2〜3回で十分です。

 

病気が少ない

猫は犬に比べて、先天的な病気や遺伝が関係する疾患が少ないです。また運動神経も良く、骨折靭帯が切れるなどの怪我もあまりありません。そのため、高齢になるまでは病気知らずの猫も多いです。実際に、動物保険の月々の保険料も、犬より猫の方が安く設定されています。ただし、動物保険に入っていないと飼い主さんの負担が100%になります。もし手術が必要になったりすれば、1回の治療で数十万円かかることもあるので注意しましょう。

 

しつけする必要がない

基本的に猫はトイレも自然に覚えますし、食事も自由に摂ります。社交的な猫になるための注意点はありますが、犬のようにトレーニングをしたり、しつけ教室に通わせたりするような飼い主さんはいないでしょう。社交的な猫に育てるポイントについては『社交的な猫に育てるには、社会化期の過ごし方がポイント!』を参考にしてみて下さい。

 

 

猫と一緒に暮らす上で、大変なこともたくさんあります

しつけはできない生き物

集団生活をしていた犬と違い、猫はもともと単独行動をする生き物です。集団で生活する生き物というのは、犬でも人でも、周囲との協調を大切にします。周りの顔色を伺い、うまく折り合いをつけて共存しようとします。だからこそ、犬はしつけすることができるのです。一方、昔から単独生活をしている猫は、協調性という概念がありません。周囲に合わせる必要がないのです。そのため、しつけをして猫の行動を変えるということは基本的にはできないと思っておいたほうがいいでしょう。

家が荒れてしまうのは避けられない

猫は本能の赴くままに生きます。そんな猫の本能的な行動の中で、私たちの生活に大きな影響を及ぼすのが「爪とぎ」ではないでしょうか。爪とぎは猫の正常な行動なので、やめさせることはできません。用意した爪とぎボードを使ってくれればいいのですが、壁紙やカーテン、ソファなどで爪とぎをされると、大切な家具がボロボロになってしまいます。爪切りを定期的にしたり、最適な位置に爪とぎボードを設置したりすることが基本的な対策になりますが、そううまくいくとは限りません。また特に長毛種は抜け毛が目立ちますので、大切な服や家具が毛だらけになるのは避けられないでしょう。より頻繁に掃除する必要があります。

 

インテリアも制限されてしまう

あまり知られていませんが、一般的な観葉植物の中には、猫に対して強い毒性を持っているものがあります。代表的なのはユリ。非常に強い毒性を持っているので、少しの花粉が口に入るだけで、命に関わるような事態に陥ることもあります。他にも様々な植物が毒性を持っているため、猫の健康を考慮すると植物を室内に飾ることはしないほうがいいでしょう。また、猫は棚の上の置物を当然のように落とすため、壊れやすい雑貨や細かいものは置かないようにしなければなりません。

どこへでも行ける

猫は機敏でジャンプ力があり、顔の幅の隙間があればどこにでも入っていくことができます。そのためカーテンレールの上に登ったり、冷蔵庫の隙間に靴下を隠したりと、予想外の動きに翻弄されることもあるでしょう。猫にとって危険なものや、洋服など猫に触れられたくないものは引き出しやクローゼットの中へきちんとしまっておく必要があります。引き出しを上手に開ける子もいるので、蓋つきのビンなどに入れておけば安心です。

猫のトイレ問題

トイレのしつけは必要ありませんが、猫がトイレを気に入らない場合に、使ってくれないことがあります。特に使用済みのトイレを嫌うため、こまめに掃除をしてあげる必要があります。トイレに問題がなくても、マーキングのためにあえてトイレ以外の場所ですることもあります。猫のおしっこは、他の動物のおしっこよりも濃くて臭いが強いので、毎日掃除しないと家の中にアンモニア臭が染み付いてしまいます。ちなみに長毛種では毛のついた便がトイレの外に落ちていることもあります。猫ちゃんのトイレ事情については、「猫ちゃんのためのトイレトレーニング」「猫ちゃんが喜ぶ!快適なトイレの作り方」も参考にしてみて下さい!

寝ていると起こされる

朝方に猫に起こされる問題は、猫を飼っている方であれば一度は経験するでしょう。室内飼育の猫にとって、ごはんは何よりの楽しみになっているため、飼い主さんが休日でも定刻になると声をあげたり顔を舐めて起こしてきます。また、猫は薄明薄暮性といって、明け方や夕方に活発になる生き物です。明け方の4時ごろに野生のスイッチが入り、突然激しく走り出したりして、物音で起こされることもあります。長年人と住んでいると人間の生活リズムに慣れますが、子猫のうちは飼い主が睡眠不足になるかもしれません。

猫にも遊ぶ時間は必要

猫は手がかからない生き物ですが、だからと言って全く相手にしなくていいわけではありません。夜中に走り回ったり、家を荒らしたりするのは、本能が原因になっていることもありますが、運動不足が原因のケースもあるのです。特に1歳までの子猫時代はたくさん遊んであげましょう。猫じゃらしのような先が左右に動くおもちゃが一番好まれます。忙しくても1日15分は遊んであげてください。

 

お手入れを嫌がる

長毛種は定期的にブラッシングをしないと毛玉ができてしまったり、毛づくろいの時に一緒に飲み込んだ毛がお腹の中で毛球になって、腸に詰まったりすることもあります。そのため、長毛種を飼っている場合は定期的にブラッシングをする必要があるのですが、お腹周りのブラッシングは多くの猫が嫌がります。また、毛玉を放っておくと皮膚炎になってしまうので、定期的にトリミングをしなくてはいけない場合もあります。さらに、爪切りも家だと絶対に切らしてくれないという猫の場合は、トリミングサロンや動物病院に連れていかなければなりません。

イベントでストレスを感じやすい

猫はなぜ環境の変化を嫌うのか』という記事でもご紹介していますが、猫は環境の変化を嫌う生き物です。引越しや来客などで大きなストレスを感じ、体調を崩す猫は少なくありません。猫の健康を考えると、これらのイベントが制限されることがあります。また、一緒に旅行へ連れて行くことも難しいと思います。無理して旅行へ連れていった結果、体調が悪化することもあるので、飼い主さんが旅行へ行く際はペットシッターやホテルを利用しましょう。

 

私も猫と一緒に暮らしていますが、家の壁紙は一部ボロボロですし、インテリアも非常にシンプルで、必要最低限の家具しか置いていません。長年猫と一緒に暮らしていると、家具や生活ライフを猫に合わせるのが普通の感覚になりますが、最初は少し苦労するかもしれませんね。これらの「大変なところ」を上回る魅力があるので、私は猫が好きですし、猫と暮らして良かったと思っていますが、「猫は手間がかからない」というイメージで安易に猫を飼うと、思った以上に手を焼いて、後悔することもあるかもしれません。

 

 

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Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

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