乳歯から永久歯への生え変わり。人間であれば、子どもの歯の生え変わりは大人への第一歩として、親としてもとても嬉しい出来事です。さらなる成長を祈って、上の歯であれば地面に埋め、下の歯は屋根の上に投げ上げるなどのゲン担ぎをしたことがある人もいるのではないでしょうか?

さて、それでは猫の場合はどうでしょうか。猫の歯も、生え変わるのかな?

猫の永久歯は、生後半年ほどで生え揃う

猫は、生後3週間ぐらいから乳歯が生え始め、生後2カ月ぐらいまでに生え揃います。乳歯は、切歯が上下左右で3本ずつ、犬歯が上下左右で1本ずつ、臼歯が上顎6本、下顎4本の、計26本。乳歯は生後3カ月~7カ月ぐらいまでに永久歯に生え変わります。人間に比べるとずいぶん早いですね。永久歯は、乳歯にはなかった後臼歯が加わり、全部で30本となります。

生え変わり途中の猫の歯

生え変わり途中の猫の歯

子猫3ヶ月齢写真

子猫3ヶ月齢写真

人間は、乳歯がいったん抜け、抜けた後から永久歯が生えてきます。子どもが上の前歯が抜けた状態で笑い、残った歯の間から小さな舌が覗く様子はとても愛らしいものですが、猫の場合には永久歯は乳歯が生えた後、顎骨の中で形成されます。永久歯が成長するにつれて乳歯の歯根は溶けてなくなり、乳歯は外へ押し出されるように抜けます。

生え変わりの時期も、いつもの食事で大丈夫

子猫歯が生え変わる時期には猫は、おもちゃや飼い主さんの手などをよく噛みます。これは、抜けそうな歯茎がむずがゆいためだと考えられます。よだれの量も増えるため、舌をペロペロと舐める仕草が増える場合もあります。

また、生え変わりの際に歯茎から出血し、飼い主さんをぎょっとさせることもあるようです。猫自身はさほど気にしていませんし、通常であれば出血は数分で収まりますので心配はありません。

そのほか、生え変わりの時期には乳歯と永久歯の間に食べ物のカスが挟まりやすく、そのため口臭がするようになるとの報告もあります。これも、永久歯に生え変わることで、次第に解消されていきます。
生え変わりのときにも、餌はとくに変える必要はありません。軟らかいものに変えず固いカリカリでも問題はありません。抜けた乳歯を飲み込んでしまうこともありますが、これは後に便として排出されます。

乳歯がうまく抜けない「残存乳歯」にご用心

永久歯になりたてのころは、歯がしっかりしていないため歯が折れたり、のちのち歯がガタガタになる可能性があります。永久歯に異常が見られる場合には、ただちに専門医と相談をしましょう。

まれに「残存乳歯」と言って、乳歯がうまく抜けずにそのまま残ることがあります。残存乳歯は隣り合う永久歯との隙間から歯肉炎を起こし、歯周病の原因となります。また咬合異常を起こし、食事がしにくくなる可能性もあります。残存乳歯の抜歯は、麻酔をかけて行います。

個体差はありますが、歯の生え変わりは生後7カ月頃までには完了します。しかし、歯肉炎など口内トラブルで永久歯が生えないケースもあります。この時期を過ぎても永久歯30本がすべて生え揃わないなど、歯の状態に心配があるようでしたら、専門医にその旨を話し、診察をしてもらってください。

抜けた乳歯、見つけられたらラッキーかも

猫の歯の生え変わりは、1カ月ほどで完了します。永久歯が乳歯と入れ替わるように生えてきますので、生え変わりに気付かない飼い主さんも多いことでしょう。飲み込んでしまうことも多い乳歯ですが、掃除機をかける前に床を見ることで、抜けた小さな乳歯を発見できることがあります。

最近では、猫の乳歯専用の保存ケース「猫用 桐製乳歯ケース」(ビーグラッドストア) なども販売されています。運良く発見できたら、愛猫の成長の証として大切に保存してあげるのもいいかもしれませんね。

 

 

 

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牧の原どうぶつ病院 院長

高田 傑

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