子どもと大人ではかかりやすい病気が違うように、猫でも子猫と成猫ではかかりやすい病気や注意すべき症状が異なります。 子猫は免疫力もまだ十分ではないため、細菌やウイルス・寄生虫などの感染症にかかりやすかったり、環境の変化などにより体調を崩しやすいです。

 

また、身体が小さく体力も十分でない子猫は、はじめは軽度な症状でもすぐに重症化してしまいやすいため、気になる症状がみられたときは早めに動物病院を受診するようにしましょう。 ここでは子猫でみられやすい症状と病気について解説します。

 

 

子猫のこんな症状に注意

食欲がない・痩せている

フードをまったく食べなかったり、いつもより食べる量が少ない場合や、極端に痩せている場合には、何らかの病気にかかっていたり、栄養失調を起こしている可能性があります。おうちでも子猫の体重をこまめに測り、体重の増加が乏しい場合にも、早めに動物病院で相談しましょう。

 

表情や動作に元気がない

子猫の表情に元気がない、いつもよりおとなしい、ぐったりしているなどの場合は、何らかの病気のサインの可能性があります。「あれ?なんだか元気がないな?」と感じたときは、病気の発見ポイントとなる場合も少なくないので、子猫の様子に違和感を感じたら早めに動物病院で相談してみましょう。

 

下痢をしている

下痢が何度も続く場合には、ウイルスや細菌による感染症や胃腸炎、誤飲などの可能性があります。移動や環境の変化などによるストレスや、フードの変更などにより、一時的に下痢をすることもありますが、何回も下痢が続く場合には早めに動物病院を受診しましょう。

 

診察では、フードやおやつ等の内容、生活習慣や飼育環境などについて聞かれることが多いので、フードの種類や量などを確認してから受診するとスムーズです。また、糞便を持参することで、速やかに糞便検査を受けることができます。

 

嘔吐がある

子猫は消化能力も未熟なことから、健康な子猫でも急にたくさんのフードを食べると吐いてしまったり、毛繕いのために飲み込んでしまった毛玉を吐き出すこともあります。 嘔吐が1回のみで、その後食欲や元気に変わりがないようであれば、少し様子をみても良いでしょう。しかし、嘔吐が何回も続く場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

 

嘔吐の原因には、寄生虫やウイルスなどの感染症や、フードの変更、環境の変化等によるストレス、胃腸炎膵炎、誤食、また何らかの先天性の病気が隠れている場合もあります。 診察では、食事内容や、いつ・どのようなものを吐いたのか、嘔吐の前後の様子などについてしっかりと伝えましょう。

 

体が熱い・熱がある

子猫の平熱は38~39度前半で、39.5度を超えると発熱とみなします。耳や足先などを触った時にいつもより熱っぽい場合は要注意です。特に、元気や食欲がなかったり、いつもと様子が違う場合には、病気のサインの可能性があります。

 

 

 

くしゃみ鼻水が出る

鼻水くしゃみなどが頻繁にみられる場合には、猫風邪をはじめとする何らかの感染症にかかっている可能性があります。これらの症状が続くと、食欲不振などを招く恐れもあるので、早めに動物病院を受診しましょう。

 

眼やにが出る・眼が充血している

眼やにがたくさん出たり、白目の部分が充血しているときには、感染症にかかっていたり、眼自体に異常を起こしている可能性があります。特に黄色や黄緑色の眼やにがでるときには要注意です。

 

毛が抜ける・かゆみがある・フケが多い

皮膚に脱毛痒みがみられたり、フケが異常に多いときには、皮膚の感染症や皮膚炎などを起こしている可能性があります。免疫力の低い子猫では、皮膚の感染症が治りにくかったり、他の子猫にうつしてしまう恐れもあります。

 

 

 

子猫がかかりやすい病気

ウイルスによる感染症

子猫が産まれて最初に飲む母乳(初乳)には、母猫がもつ免疫(移行抗体)が含まれています。この移行抗体は、生後2ヶ月〜4ヶ月で徐々に消失してしまいますが、その時期には個体差があります。そのため、生後2ヶ月を過ぎる頃からは、子猫はさまざまな感染症にかかりやすくなるので注意が必要です。

 

上部気道感染症(猫風邪

猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスによる感染症で、鼻水くしゃみ眼やに結膜炎発熱口内炎などの症状がみられることから、猫風邪とも呼ばれます。

 

感染している猫と接触することで感染し、猫ヘルペスウイルスは一度感染してしまうと体内に潜伏し続けるため、症状が回復しても免疫力や体力が低下している時には再発するおそれがあります。

 

子猫自身が成長と共にウイルスに対する免疫を獲得していくまでは、症状を緩和するための対症療法が中心となります。二次的に細菌感染が疑われる場合や、発熱などがみられる場合には、抗生物質などを投与することもあり、予防には適切な時期のワクチンの接種が有効です。

 

猫汎白血球減少症

パルボウイルスによる感染症で、発熱、元気・食欲の低下、嘔吐、下痢、血便などの症状がみられます。血液検査で、白血球数の減少がみられた場合に、この病気を疑います。

子猫で発症してしまった場合には重症化しやすく、死に至ることも少なくありません。

予防には、適切な時期のワクチン接種が有効です。

 

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

ウイルスに感染している猫との交配やケンカによってウイルスをもらってしまったり、母猫から子猫への母子感染により感染します。

猫免疫不全ウイルスに感染すると、初期には重篤な症状は起こしませんが、発症すると免疫力が徐々に低下して、さまざまな感染症にかかりやすくなります。発熱・下痢・口内炎・リンパ節の腫れなどの症状がみられ、重篤な状態に陥ると命に関わる危険性があります。

猫白血病ウイルスは、発熱や貧血、リンパ節の腫れ、免疫力の低下、血液系の腫瘍などを引き起こし、重症化すると死に至る場合があります。

 

感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。ただし、離乳後やケンカの直後のタイミングでは正確な結果が得られないこともあり、一定期間をあけてから複数回の検査が必要な場合もあります。どちらも一度感染すると、ウイルスを体から排除する有効な治療法はなく、生涯ウイルスを保有し続けることになり、発症すると命に関わる危険性の高い病気です。

 

これらの病気を予防するには、完全室内飼育にして外の猫との接触を防ぎ、同居猫がすでに感染している場合には、部屋を隔離する必要があります。

 

寄生虫による感染症

猫に感染する主な寄生虫には、回虫や条虫などのお腹(消化管)に寄生する内部寄生虫と、ノミマダニなど体の表面に寄生する外部寄生虫があります。

子猫はこれらの寄生虫に感染しやすく、とくに地域猫(野良猫)はすでに何らかの寄生虫に感染していることが少なくありません。 お腹の寄生虫による下痢や血便で脱水を引き起こしたり、ノミに大量寄生で貧血を起こすなど、重篤な症状に陥る可能性があります。

子猫や既におうちにいる同居猫の健康を守るためにも、子猫を迎え入れる際には動物病院で健康診断を受け、寄生虫の駆虫についても相談すると良いでしょう。

 

低血糖

子猫は成猫とちがい、肝臓に糖分を備蓄する能力が十分でないため、常に糖分を補給し続ける必要があります。

離乳前の子猫は、ミルクを飲む時間が3〜4時間あいてしまっただけでも、命に関わるほどの低血糖症を起こすことがあります。 子猫が急にぐったりしたり、痙攣を起こしたりする場合には、低血糖症になっている可能性があるので、すぐに動物病院を受診してください。

 

低血糖症を防ぐためには、フードやミルクを適切な量・回数で与え、こまめに体重測定をして成長に合わせてきちんと体重が増えているかを確認しましょう。

 

脱水

水を飲む量が少なかったり、下痢や嘔吐により体の水分がたくさん失われたりすると、脱水症になります。また水分だけでなく、塩分やカリウムなどのミネラルも一緒に失われることで、より重症化してしまいます。 皮膚を引っ張り上げて離した時に、皮膚が元に戻るのに時間がかかったり、口の中の粘膜が乾いているときには脱水のサインです。

 

 

皮膚糸状菌症

子猫の皮膚に円形の脱毛やフケ、かさぶた、痒みなどがみられたときには、皮膚糸状菌という真菌(カビ)に感染している可能性があります。免疫力の低い子猫は発症しやすく、人にも感染する人獣共通感染症のため、注意が必要です。

子猫が皮膚糸状菌に感染してしまったら、完治するまで接触は極力控え、触った後はよく手を洗うようにしましょう。またタオルや毛布などをこまめに洗濯したり、清潔な環境を保つようにしてください。

 

子猫の健康を守るために

子猫は免疫力や体力が未熟なことから、ウイルスや寄生虫による感染症にかかりやすく、病気を発症してしまうと重症化しやすいです。母猫から受け継いだ移行抗体が少なくなってしまう生後2カ月齢頃からは、とくに注意が必要です。

子猫がかかりやすい病気の多くは、感染した猫との接触を控えたり、適切な時期のワクチン接種や予防薬を投与することによって予防することができます。 子猫を家族に迎えた際は、すぐに動物病院で健康状態を確認してもらい、ワクチンや予防薬についても相談するとよいでしょう。

 

 

参考:イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(ピエ・ブックス)

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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