ねこのお腹

 

ネコちゃんが「下痢をしている」「便に血が混ざっている」「お尻の周りに白い粒がついている」などの症状がみられたときは、おなかの虫(内部寄生虫)に感染していることがあります。特に子猫や野良猫、家の中と外を行き来するネコで感染しやすく、おなかの虫はネコの胃や腸にすみついて、嘔吐下痢血便元気食欲の低下など、さまざまな症状を引き起こします。

ここでは、「おなかの虫」を駆虫するために動物病院の先生に処方されたお薬を解説します。記載のお薬は、すべて農林水産大臣が定める「要指示医薬品」ですので、使用に際し獣医師による処方や指示が必要です。詳細については直接かかりつけの動物病院の先生にご相談ください。

 

素朴な疑問 Q & A 「おなかの虫の見つけ方」

Q. おなかの虫はどうやって発見するのでしょうか?

A.糞便の中に、寄生虫の体の一部(片節)や虫の卵(虫卵)がいないかを検査します。虫卵は非常に小さく感染してから便の中に虫卵が排出されるまでに時間差もあるため、一度の糞便検査では発見できない場合もあります。そのため、疑わしい場合には複数回糞便検査を受けることが大切です。

 

 

寄生虫の種類に応じた駆虫薬を使う

糞便検査などで感染が認められたら、寄生虫の種類に応じた駆虫薬を使って虫を下します。

駆虫薬には、

外用薬(スポットオンタイプ)

内服薬(飲み薬)

注射薬

などがあり、寄生している虫の種類や、飼育環境、どのタイプのお薬がその子にとって投与しやすいか、などを検討してお薬を選択します。

 

素朴な疑問 Q & A 「お薬の使い分け方」

Q. 病院の先生がたは、たくさんの種類の薬の中からどうやって使い分けているのでしょうか? 

A. 感染している寄生虫の種類、ネコの月齢や妊娠の有無生育・飼育環境薬の費用などを総合的に判断し、飼い主さんと相談しながらお薬を選択します。

 

次に動物病院で処方される代表的な駆虫薬を、タイプ別に紹介します。

 

 

おかなに虫がいるときの外用薬(スポットオンタイプ)

スポットオンタイプは、猫の首の後ろ、肩甲骨の間の辺りに塗布することで効果を得られる液体のお薬です。
飲み薬が苦手なネコちゃんでも、簡単に投与することができます。

スポットオン剤の使用上の注意
・必ず猫が舐めることができない部位に投与しましょう。
・投与する人は、薬剤を直接手で触らないようにしてください。
・投与した後は、薬剤が完全に乾くまでは投与部位を触らないようにしてください。特に小さなお子さんがいるご家庭では、猫を撫でた手を口に持っていってしまう可能性があるため、薬剤が完全に乾くまで接触は控えるようにしてください。

 

素朴な疑問 Q & A 「皮膚につけた薬がお腹の虫に効く不思議」

Q.どうして皮膚につけたお薬がおなかの虫に効くのでしょうか?

A. 皮膚の下には毛細血管がたくさん通っており、皮膚につけた薬は、毛細血管から吸収され血液に乗って、全身へと運ばれます。おなかの中の虫に効果のある薬剤は、胃や腸に運ばれたときにその効果を発揮します。

 

●ブロードライン(ベーリンガーインゲルハイム)

効能

猫回虫・猫鉤虫・猫条虫・瓜実条虫・エキノコックス(多包条虫)を駆虫できます。

同時に、フィラリアの予防やノミ・マダニの予防・駆虫にも効果があります。

用法

生後7週齢の子猫から使用でき、針のない注射器のようなものに入った液体の薬を、肩甲骨の間の毛をかき分けて皮膚に直接塗布します。

有効成分:フィプロニル、メトプレン、プラジクアンテル

使用上の注意
・衰弱している猫や高齢の猫、妊娠・授乳中の猫への投与は、慎重に行うことが推奨されています。
・猫でまれに一時的な過敏症(投与部位の発赤、痒み、脱毛)や被毛の変色がみられることがあります。
・投与後2日間は、水浴びやシャンプーを控えるようにしましょう。
・エキノコックスは人にも感染する「人獣共通感染症」です。感染した猫の糞便の処理には十分に気をつけましょう。

 

●レボリューション6%(ゾエティスジャパン)

レボリューション6%

効能
猫回虫を駆虫できます。同時に、フィラリアの予防やノミ・ミミヒゼンダニの駆除にも効果があります。生後6週齢の子猫や、妊娠中でも使用できることが特徴です。ピペットの蓋を一度押し込むことで開栓でき、肩甲骨の間の毛をかき分けて、皮膚に直接滴下します。

有効成分:セラメクチン

使用上の注意
・投与前に、フィラリアの感染の有無を検査し、感染が疑われる猫には慎重な投与が必要です。
・投与後2時間は水浴びやシャンプーを控えましょう。

 

●レボリューションプラス(ゾエティスジャパン)

レボリューションプラス

効能
猫回虫と猫鉤虫を駆虫できます。同時に、フィラリアの予防やノミ・ミミヒゼンダニの駆除にも効果があります。生後8週齢・体重1.3kg以上の子猫から使用できますが、妊娠・授乳中の猫への安全性は確認されていません。ピペットの蓋を一度押し込むことで開栓でき、肩甲骨の間の毛をかき分けて、皮膚に直接滴下します。

有効成分:セラメクチン、サロラネル

使用上の注意
・投与前に、フィラリアの感染の有無を検査し、感染が疑われる猫には慎重な投与が必要です。
・投与後24時間は水浴びやシャンプーを控えるようにしましょう。
・投与部位の発赤、痒み、脱毛や、流涎(よだれ)が一過性にみられることがあります。

 

●プロフェンダースポット(エランコジャパン)

プロフェンダースポット
効能
猫回虫・猫鉤虫・猫条虫・瓜実条虫・エキノコックス(多包条虫)を駆虫できます。
生後6週齢・体重0.5kg以上の子猫から使用することができます。

有効成分:プラジクアンテル、エモデプシド

使用上の注意
・フィラリアに感染している猫には使用できません。
・投与部位が完全に乾くまで、水浴びやシャンプーを控えるようにしましょう。
・猫が投与直後に薬剤を舐めた場合、流涎(よだれ)、元気・食欲の低下、下痢・嘔吐、ごくまれに運動失調などの神経障害をひきおこすことがあります。
・投与部位にごくまれに脱毛、痒み、炎症などが一過性にみられることがあります。
・エキノコックスは人にも感染する「人獣共通感染症」です。感染した猫の糞便の処理には十分に気をつけましょう。

 

素朴な疑問 Q & A 「駆除した虫の排出」

Q. 駆虫した死骸は、どこからどんな形で出るのでしょうか?

A. 駆虫薬を投与すると、糞便や吐物の中に成虫が排出されます。条虫の場合には、体の一部がバラバラになった米粒のようなもの(片節)が出てくる場合もあります。

 

 

おなかに虫がいるときの内服薬 

飲み薬タイプの駆虫薬です。スポットオンタイプでは投与部位が完全に乾くまで触らないようにするなどの配慮が必要なため、小さなお子さんがいるご家庭では飲み薬の方が安全に投与できる場合があります。

●ドロンタール錠(エランコジャパン) 

効能

猫回虫・猫鉤虫・瓜実条虫・猫条虫を駆虫できます。
4週齢以上、体重500g以上の子猫から使用でき、通常1回の投与で効果を発揮します。体重に応じて半分に割ったり2錠与えたりするなど、薬の量を調整します

有効成分:プラジクアンテル、パモ酸ピランテル

使用上の注意
・妊娠中の猫には使用できません。
・錠剤を分割したり投薬する際には、直接手に触れないよう手袋等を着用し、皮膚に付着してしまった場合は石鹸でよく洗い流してください。

 

●ドロンシット(エランコジャパン)

効能

猫条虫・瓜実条虫・マンソン裂頭条虫を駆虫できます。
通常1回の投与で効果を発揮し、体重に応じて半分に割ったり2錠与えたりするなど、薬の量を調整します。
プラジクアンテルは特有の苦味があるため、缶詰や投薬補助トリーツなどに包んであげると投薬しやすくなります。

有効成分:プラジクアンテル

使用上の注意
・錠剤を分割したり投薬する際には、直接手に触れないよう手袋等を着用し、皮膚に付着してしまった場合は石鹸でよく洗い流してください。

 

素朴な疑問 Q & A 「駆虫までの投薬回数」

Q. 何度も投薬しないと完全に駆虫ができないのでしょうか? 

A. 寄生虫や薬の種類によって投薬回数は異なります。
 1回の投与で駆虫できるものでも、投与してから2週間後の糞便検査でまだ虫卵が残っている場合には、もう一度薬を投与する必要があります。
 また、おなかの中はきれいに駆虫されていても、飼育環境の中に虫卵がある場合には、感染を繰り返してしまう可能性もあります。このような場合には、定期的に駆虫薬を投与することをおすすめします。

 

猫の内部寄生虫は人間に感染する可能性も

猫の内部寄生虫には、人間にも感染する可能性がある虫もいます。ネコちゃんとご家族の健康を守るためにも、子猫や新しい猫を迎えるときには、動物病院で糞便検査や健康診断を受けましょう。
おなかの虫の感染が確認されたら、駆虫薬をしっかり投与することと、指定された日に再び糞便検査を受け、きちんと駆虫ができているかを確認することが大切です。駆虫が完了するまでの間は、猫を家の外に出したり、他の猫と接触させることは控えましょう。また、複数の猫を飼っているご家庭では、他の猫にも感染が及んでいる可能性があるので、全頭に駆虫薬を投与することをおすすめします。

 

素朴な疑問 Q & A 「飼い主さんのニーズ」

Q.  飼い主さんの薬への要望やニーズ、投薬が簡単だから人気、とかありますか? 

A.  猫ちゃんは飲み薬が苦手な子も多いので、スポットオンタイプの方が確実に投与ができ人気があります。
ですが、スポットオンタイプは投与してから薬が乾くまでの間はその部分に触らないようにする必要があるので、
小さなお子さんがいるご家庭などでは、錠剤の方が安全に投与できるというメリットがあります。

 

 

 

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例えば、下記のようなさまざまな切り口で、病気やケガを調べることができます。健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。リンクをクリックして調べてみてください。

 治療

 症状

 □ 再発しやすい

 □ 初期は無症状が多い

 □ 長期の治療が必要

 □ 病気の進行が早い

 □ 治療期間が短い

 □ 後遺症が残ることがある

 □ 緊急治療が必要

 

 □ 入院が必要になることが多い 

 対象

 □ 手術での治療が多い 

 □ 子猫に多い

 □ 専門の病院へ紹介されることがある

 □ 高齢猫に多い

 □ 生涯つきあっていく可能性あり 

 □ 男の子に多い

 

 □ 女の子に多い

 予防

 

 □ 予防できる 

 うつるか

 □ ワクチンがある

 □ 人にうつる

 

 □ 多頭飼育で注意

季節

 □ 犬にうつる

 □ 春・秋にかかりやすい

 

 □ 夏にかかりやすい

費用

 

 □ 生涯かかる治療費が高額

発生頻度 

 □ 手術費用が高額

 □ かかりやすい病気

 

 □ めずらしい病気

命への影響

 

 □ 命にかかわるリスクが高い

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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