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ぽっちゃりとした猫ちゃんは、ある種の魅力がありますよね。中には、愛嬌があるし可愛いから、太ったままでもいいや、と考える飼い主さんもいるかもしれません。しかし、肥満と病気は非常に関係が深いのです。太ってしまった猫ちゃんをそのままにしておくと、一体どうなるのでしょうか?

 

肥満になるとなにがいけないの?

関節や靭帯の病気

体重が増えることで、手足や胴の関節、骨を支える靭帯に負担がかかります。そのため、膝蓋骨脱臼(膝の骨が外れること)や関節炎にかかりやすくなります。また、背骨への負担が増えることで、椎間板ヘルニアの危険も増えます。どれも痛みを伴う病気なので、猫ちゃんにとっても、見ている飼い主さんにとっても辛い病気です。

 

*「にゃんペディア」獣医師監修の関連記事の合わせてご覧ください。

猫の骨折・猫の脱臼

猫の関節炎

 

心臓・呼吸器

体重の増加で、高血圧症のリスクや全身に血液を送り出す心臓への負担も増加します。心臓は全身に血液を送るためのポンプの役割をしています。もともとは適正体重が必要とするだけの血液を送り出すようにできているため、体重が増えれば増える分だけ、より広い範囲に血液を届けなければならなくなって、心臓にかかる負担が大きくなるのです。もともと心臓が弱い子の場合は、特に肥満には注意しなければなりません。また、首のまわりに脂肪がつくことで、気道が圧迫されて呼吸がしにくくなることもあります。呼吸器系に疾患がある場合も注意が必要です。

 

糖尿病

体が活動するために必要なエネルギーの一部はブドウ糖が元になっています。しかし、ブドウ糖はそのままの状態だと、各細胞が取り込むことはできません。細胞は普段扉を閉めていて、インスリンというホルモンがその扉を開ける鍵の役割を果たしています。インスリンが分泌されて扉が開くことで、はじめて細胞は糖を取り込むことができるのです。しかし、肥満になるとインスリンが効きにくい状態になります。インスリンがうまく機能しないと、細胞はエネルギーを取り込むことができずどんどん飢餓状態になり、逆に血液中には取り込まれないブドウ糖が溢れ、尿中に漏れ出します。この状態を糖尿病と言います。詳しくは、「愛猫の糖尿病と上手に付き合っていくために」をご覧下さい。

 

脂肪肝(肝リピドーシス)

しばらく空腹時間が続くと体はエネルギー不足に陥ってしまいますよね。このような時に活躍するのが肝臓です。肝臓が体内の脂肪からエネルギーを作り出してくれるので、しばらくの間食事をとっていなくても通常通りの生活が送れるのです。しかし、完全絶食状態が続くと肝臓はエネルギーを作り出すために脂肪をたくさん取り込もうとします。この時、たまりすぎた脂肪分が肝細胞に混じり、肝臓が正常に働けなくなってしまうのです。これが脂肪肝(肝リピドーシス)という病気です。原因は明らかになっていませんが、肥満の猫は発症しやすいと言われています。

詳しくは「猫の脂肪肝」をご覧ください。

 

麻酔のリスク

麻酔をかけると意識がなくなり、強い痛みのある手術などの処置を耐えることができますが、かける麻酔薬の量が多すぎると麻酔から覚めることができず、そのまま死んでしまいます。そのため、麻酔薬を適切な量を使用しなければならないのですが、肥満の猫は通常の猫以上に、麻酔の適正量を見極めにくいです。特に注射麻酔を使うときは、脂肪以外の重さで注射薬を調整する必要があるので、非常に難しいのです。麻酔をすると麻酔薬が徐々に体を巡ります。そして薬が脳に届くと麻酔が効いている状態になります。しかし、麻酔薬は脂肪にたくさん解ける性質を持っているため、肥満の猫の場合、脳に効かせたいはずの薬が脂肪にどんどん吸収されてしまい、脳に届きにくくなります。そのため通常よりも多くの麻酔薬を必要とします。さらに厄介なのが、脂肪が麻酔をタンクのように保存してしまうこと。一度脂肪の中に貯蔵された麻酔薬が、時間差をおいて徐々に体に浸透していくのです。そうすると麻酔から覚めにくい状態に陥る場合があります。

 

その他

皮膚病・尿路疾患(尿石症膀胱炎など)・口腔疾患(口内炎など)・下痢腫瘍などの病気も、肥満に大きく関わっていることが研究から認められています。

体重過剰の猫では適正体重の猫より寿命が短い

ことも分かっています。

 

*「にゃんペディア」獣医師監修の関連記事の合わせてご覧ください。

猫の尿路結石症

猫の膀胱炎 症状・原因・治療法・予防法について

猫の口内炎

猫が下痢をした!いつ病院にいけばいいの?

 

 

何キロ以上が肥満なの?

Fat ginger cat

パーセンテージで考えて

適正体重が5kgの猫ちゃんが6kgになったら、肥満なのでしょうか?答えはYESです。たった1kg増えただけで?!と驚く方もいるかもしれませんが、パーセンテージで考えるとわかりやすいと思います。
例えば、5kgの猫ちゃんが6kgになったとします。この時、猫ちゃんの体重は20%増加しています。20%増えるということは、45kgの女性が54kgに、60kgの男性が72kgになるのと同じです。相当の変化だということが、おわかり頂けたのではないでしょうか。猫の適正体重を10%上回ると過体重、20%上回ると肥満と診断されます。例えば、適正体重が5kgの猫であれば、体重が5.5kgを上回ると過体重、6kgを上回ると肥満となってしまいます。たった1kgだと思って油断してはいけません。パーセンテージで考えてください。

大切な猫ちゃんだから、できる限り健康で長く生きていて欲しいですよね。日頃の飼い主さんの心がけ次第で、猫ちゃんの寿命は伸ばすことができるのです。ちょっとくらいぽっちゃりしててもいいや、など思わないで、できるだけ理想体重を維持してあげてくださいね!

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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