現在日本で猫を飼っている人のうち、6割ほど(※)が多頭飼いをしています。楽しいエピソードなどを聞くと「我が家も…」と思わず考えることも。しかし、実のところ猫の多頭飼いはけっこう難しい面もあるのです。ここでは猫の多頭飼いを考えている飼い主さんに、必要な心構えや相性の良い猫の選び方、事前の準備についてご紹介します。

※データ出典:一般社団法人日本ペットフード協会令和3年(2021年)全国犬猫飼育実態調査

人にとって、猫にとって、多頭飼いをすることとは?

 

猫はもともと単独生活する動物です。そのため、自分の縄張りである家に知らない猫が入ってくることは、かなりのストレスになります。それまで多頭で暮らした経験のない猫であれば、「敵が侵入してきた」とさえ感じることも。多頭飼いをするには、日々、注意深く猫たちのストレスに気を配る必要があります。

多頭飼いのメリットとは?

<飼い主>

□ いろいろな猫との生活自体がとても楽しい

□ 留守番や仕事中も猫に寂しい思いをさせない安心感がある

□ 猫同士遊んでくれるので、相手をする時間が多少減っても安心

□ 多頭飼いでしか見られない猫の生態(猫団子など)が見られる

 

<猫>

□ 甘えたり、一緒に寝たりする相手ができる(特に子猫)

□ 一緒に遊ぶことができれば運動不足が解消できる

□ 留守番時の暇つぶしができる

□ うまくいけば、新入り猫と遊ぶことでシニア猫も活発になる

□ 一匹では毛繕いが難しい部分をもう一匹がしてくれる

多頭飼いのデメリットとは?

<飼い主>

□ 飼育費用や医療費が頭数分かかる

□ お世話の時間が増える

□ 1匹1匹の健康管理が難しくなる(食事量、排泄の管理など)

 

<猫>

□ 互いに仲良くできなければ、相当なストレスに

□ 飼い主の愛情を独占できなくなる

□ お気に入りの場所を独占できなくなる

□ 落ち着いて食事できないこともある

多頭飼いをするときに必要な覚悟とは?

 

多頭飼いのデメリットは、飼い主さんに必要な覚悟とも言えます。これらを乗り越える気持ちがなければ、多頭飼いするべきではありません。猫の多頭飼いはうまくいかないことも少なくないからです。もちろん、新しい里親さんを探す方法もありますが、新しい家を転々としなければならないことは、猫にとっても大きなストレス。何があっても最後まで面倒を見る覚悟を持つことが大切です。

多頭飼いに必要な条件

多頭飼いするためには適切な条件があります。以下の条件を満たさない場合は、多頭飼いを見送る判断も必要です。

□ 多頭飼いするのに十分な家の広さがある(1つの部屋に2頭までが限界)

□ 金銭的・時間的に十分な余裕がある

□ お世話する人が複数確保できる

□ 先住猫が神経質な性格でない

□ 当分の間、引っ越しや家族構成が変わる予定がない

多頭飼いは「相性」が重要。相性の良い組み合わせ・性格とは?

 

猫の多頭飼いがうまくいくかどうかは、猫同士の相性にかかっていると言っても過言ではありません。基本的に猫は社会動物ではなく、飼い主が猫同士の関係を調整するとことが難しいからです。したがって、飼い始める前に猫の相性を見極めることが大切です。

猫の相性と飼い始めのタイミング

多頭飼いをするのに最良の方法は、血縁同士で飼い始めることです。母子、兄弟姉妹で、さらにどちらか一方でも子猫であれば、問題となることは少ないとされます。先に先住猫がいて、後に2頭目以降を迎える場合も、血縁関係はあったほうが良いでしょう。子猫(または若い猫)同士であるほうが互いに馴れやすく、反対に成猫同士で、特に他の猫と暮らした経験がなかったり、縄張りの強いオス同士であったりする場合は多頭飼いに向かないとされます。

 

<相性の良い組み合わせ>

□ 母子

□ 兄弟姉妹など血縁関係がある

□ 子猫同士(子猫のときに一緒に暮らしていればなお良い)

 

<相性の良くない組み合わせ>

□ 成猫のオス同士で血縁関係がない

□ 他の猫と一緒に暮らした経験のない成猫同士

相性の良い性格・悪い性格

先住猫と新入り猫の性格についても相性の良い、悪いがあり、特に先住猫の性格がカギとなります。先住猫がおおらかでのんびりした性格で、社交的であればうまくいく可能性は高くなり、逆に神経質で繊細な場合は失敗する可能性も。もし先住猫が、来客があったときに隠れて出てこないような性格であれば、多頭飼いは難しいと判断してください。

多頭飼いに必要な準備とは

 

多頭飼いするにあたって事前にしておくべきことや、揃えるべき準備物があります。

新入り猫の健康チェック

新入り猫の入手元から健康状態が問題ないと言われていても、その時点では発症していないだけかもしれませんので、迎え入れる前には必ず健康診断を受けるようにしましょう。健康状態はもちろん、感染症や寄生虫の有無を調べ、必要があれば治療しなければなりません。病気の種類によってはお迎えが難しい場合もありますので、必ず検査を受けてください。また、健康診断で感染する病気がないと確証できるまで、先住猫と同室にしないようにしましょう。

また、避妊去勢手術ワクチン接種は、新入りだけでなく先住猫も済ませておくように。さらに、お迎えの直前には、喧嘩をしてもケガをしないようにお互いの爪を切っておくことも大切です。

事前に揃えておきたい物

新入り猫のお迎えをスムーズに始めるため、次のような物をあらかじめ準備しましょう。

 

□ 新入り猫がしばらく1頭で暮らすための隔離部屋

□ ケージ(対面用)

□ 食器・水入れ

□ キャリーバッグ(頭数分)

□ トイレの増設(頭数+1個以上)

□ キャットタワー(隔離部屋にもあると良い)の増設

□ 喧嘩したときなど避難できる隠れ場所を複数個所用意

 

 

 

◆猫の多頭飼育に関する「にゃんペディア」の記事は、こちらをご覧ください。

 

 

 

「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

 

にゃんペディア編集部からのメールマガジン配信中!

「にゃんペディア編集部」では、愛猫との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、にゃんペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。

Tokyo Cat Specialists 院長

山本 宗伸

詳細はこちら

関連記事

related article