「多頭飼育崩壊」とは、飼育頭数が増えることで犬猫に適正飼育が行われない状態に陥ることです。

国内では全国で2,149件(2018年度) の多頭飼育による苦情が報告され、そのうち飼育頭数が10頭以上の割合は32.8%占めています。

最近では注意を促すテレビCMも流されており、社会問題の一つとして取り上げられています(環境省調べ)。

多頭飼育崩壊とは?

飼育頭数が増えることで、犬猫に適正飼育*が行われていない状態に陥ることです。

*適正飼育:十分な食事と十分な生活空間が与えられ、糞尿の始末、健康の維持など衛生上安全に生活が送れる環境のこと

 

多頭飼育崩壊の様々なケース

アニマルホーダー(一般の飼い主)

動物が好きで、引き取り手がいない動物や捨てられた動物をどんどん保護してしまい、お世話が出来ない状態に。また、不妊去勢を行わなかったことで繁殖を繰り返し、頭数が増え飼育困難な状態になることです。

 

ブリーダー崩壊

ビジネスとして犬猫の繁殖を行っている業者が、経営継続が困難な状況や高齢化に伴い飼育できない状態になることです。

 

保護団体崩壊

犬猫を保護しているボランティア団体自体が、キャパシティー以上の頭数を保護することで、飼育困難な状態になることです。

 

多頭飼育崩壊はなぜ起こるの?

様々なケースがありますが、主な原因としては以下のような理由です。
※環境省調べ

 

多頭飼育崩壊はどのように発覚するの?レスキュー依頼はどこから来るの?

ほとんどの場合、近隣住民やケアマネージャー、病院の関係者から、多頭飼育が適正に行われていない連絡が行政に入り発覚します。その後、行政が飼い主に対して適正飼育に向けた改善、譲渡や引き取りなどの話し合いを行いますが、難しい場合は福祉関係者、保護団体などと連携して説得を行います。

解決にかかる期間は、1年未満が29.1%、2年未満が53%、平均して3年という長い時間を要します。

一方で、飼い主本人や飼い主の家族等から行政や保護団体にレスキュー依頼の連絡が入る場合もあります。

 

最終的には、行政・保護団体が飼育動物を引き取る割合が86.1%を占め、飼い主本人の努力による譲渡は4.6%しかありません。その数字からも、保護団体の協力なくしては問題解決できないということが分かります。

※環境省調べ

 

多頭飼育崩壊の現場にいる犬や猫の状態とは?

基本的な健康管理(ワクチン、血液検査、不妊去勢手術)が行われていない犬猫がほとんどのため、保護した後に隔離が必要になるケースもあります。また、近親交配による先天的疾患(奇形、脳機能障害、感染症等)も多くの犬猫で見られます。

猫の場合、猫風邪(猫カリシウイルス感染症)にかかっていることも少なくありません。

通常のレスキューでも検査や治療、手術などの費用はかかりますが、多頭崩壊などのレスキューの場合は頭数が多いため、莫大な費用が一気に必要になるのです。

 

また病気以外にも、難しいことがあります。

人馴れ出来ていない極度の怖がりな犬猫が多く、一般家庭で生活できるようトレーニングするためにはかなりの時間がかかります。脱走癖のある犬猫の場合、ちょっとした瞬間を狙って逃走するため、預かりボランティアさんも細心の配慮をしなければなりません。

 

多頭飼育崩壊のレスキュー事例

アニドネ認定団体 一般社団法人 アニマルハートレスキュ―

約60頭の犬たちが一軒家の中で暮らしていました。

食事はばらまき状態のフードを食べ、糞尿は部屋に散乱し、その同じ空間で人間も暮らしていたそうです。不妊去勢をしなかったために、最初は2頭だった犬がいつの間にか約60頭にまで増えてしまいました。そのうち10頭を、「アニマルハートレスキュー」さんで保護したそうです。

 

現場にいた全頭が生き抜けたのかどうかは分かりません。

生まれてすぐに命を落とした子犬もいるかもしれません。

一般の飼い主さんにとっては信じがたい場所からのレスキュー。

生まれて一度も散歩をしたことがなく、シャンプーやカット等のトリミングもされたことがないであろうと思われます。

 

「アニマルハートレスキュー」さんは、母体が動物病院とペットホテル、トリミングなども行っているので、保護後は1頭ずつ毛をカットし、キレイに洗い、病院で検診を受けたそうです。 洗う前は臭いがひどい状態だったそうですが、今はみんなとってもふわふわでキレイになっています。

環境変化にとまどいながらも、第二の犬生を歩み始めています。

 

「アニマルハートレスキュー」さんでは、このほかにも多くの多頭飼育崩壊現場から犬猫をレスキューしています。

2019年6月にはブリーダー放棄により約30頭の犬猫が保護されました。

シェルターに到着と同時に、スタッフの方々とボランティアの方で大きなケガ等がないかをチェック。ノミダニ駆除の後、シャンプーが1頭ずつ丁寧に行われ、翌日には医療ケアがスタートしました。他2団体の協力もあり、そのうち19頭を引き取ることになりました。

アニドネ認定団体 一般社団法人 ねこたまご

 

保護した頭数は全238頭。札幌市動物管理センター(以下、センター)としても、一度の保護数頭としては過去最多。あまりも劣悪で「地獄」を思わせる現場だったそうです。

センターからの協力要請を受け、レスキューに入った「ねこたまご」さん。

乳飲み子や老猫ケアにたけているため、妊婦猫やひどくやせ細っている猫を優先的に保護し、22頭を引き出したそうです。子猫の姿がほぼ見当たらないことからも、食事も十分に与えられていない過酷な環境だったということが分かります。

そんな状況の中でも生きながらえた猫たちは、センターと保護団体、個人のボランティアさんの力により全頭保護することができました。

 

センターとしても史上最大規模の多頭崩壊で、通常の施設には収容しきれないことから、専用の収容場所を特別に設置。札幌市動物愛護推進員や職員さんが、100頭ほどの猫たちのケアを通いで行ってくれています。

 

「複数の猫を飼い始め、不妊去勢の手術を怠ったために、気づいた時には対処できない頭数まで繁殖してしまった」。と、飼い主さんはセンターの職員の方に話したそうです。猫は繁殖力の強い動物であり、子猫だと思っていても生後4〜5ヵ月には出産可能になります。1回の出産で2〜8頭の子猫を産み、年2〜3回出産します。

不妊去勢をしなかった、ただそれだけのことですが、その現実がここまでの大きな悲劇を生んでしまいます。

多頭飼育崩壊のレスキューをするためには?

シェルタースペースの空き状況、預かりボランティアさんの確保等、さまざまな準備が必要になります。

レスキュー頭数に応じて、一つの団体だけで入る場合もあれば、他団体と協力して複数団体でレスキューに入る場合もあります。その場合、入る順番、どの団体が何頭等、団体間の調整も必要になります。

 

またレスキュー頭数が多いため、ドッグフードやキャットフードなどの食費、医療費もかなり高額になります。ちょっと無理をして…という金額ではないため、ある程度の資金調達できないとレスキューを行うことが出来ません。

 

医療内容は犬猫の健康状態や大きさにもよりますが、触診、血液検査、糞尿検査、フィラリア検査、狂犬病予防注射、混合ワクチン接種、不妊去勢手術等、多岐に渡ります。

 

 

また医療費に加え食費や生活費もかかるため、犬猫を保護して里親さんが見つかるまでにはもっとお金が必要になります。

 

 

情報提供元:公益社団法人アニマル・ドネーション

 

データ参考資料元:
環境省 令和元年度 社会福祉施策と連携した多頭飼育対策推進事業 アンケート調査報告書
環境省「知っていますか?動物愛護管理法」

 

「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

 

にゃんペディア編集部からのメールマガジン配信中!

「にゃんペディア編集部」では、愛猫との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、にゃんペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。

アイペット損害保険株式会社

にゃんペディア編集部

詳細はこちら

関連記事

related article