猫は好奇心旺盛な動物です。家の中で狭いところに入ろうとして体にキズができてしまったり、家から脱走して外猫とけんかしてしまったりなど、予期せぬケガをする場合があります。

 

日頃から猫にとって危険な場所や物を避けるようにすることが大切ですが、万が一ケガをしてしまった場合には早めの対応が重要です。ここでは動物病院を受診するまでにおうちでできる応急処置と、ケガをしてしまった際に処方される薬について解説します。

 

 

肉球に何かが刺さってしまった

突然「ニャー」と悲鳴をあげたり、足を持ち上げて歩くようになってしまったときは、肉球に何かが刺さっていないかどうかチェックしてみましょう。

 

トゲやガラスの破片など小さなものが刺さっている場合には、毛抜きやピンセットで抜いてから動物病院を受診しましょう。 水を怖がらない猫の場合には、傷口を水で洗えると尚よいですが、水が苦手な猫は少なくありません。猫が暴れてしまったり、異物が抜きにくい場合、また木の枝など大きなものが刺さってしまってる場合には無理に抜こうとせず、すぐに動物病院を受診しましょう。とくに「釣り針」が刺さってしまった場合、釣り針は一般的な針とは違い「かえし」と呼ばれる逆向きに引っかかる突起がついているため、抜こうとするとかえって皮膚を傷つけてしまいます。無理に抜こうとせず、すみやかに動物病院へ連絡してください。

 

刺し傷の場合、見た目の傷口は小さくても傷が深かったり、細菌が入り込んでしまう恐れがあります。動物病院では、傷口をよく洗浄し、刺激性の少ない消毒液などが処方されます。 また、化膿を防ぐ目的で、抗生物質の軟膏もしくは内服薬が処方されることもあります。

 

 

 

猫に噛まれてしまった/引っ掻かれてしまった

猫同士のけんかなどで噛み傷や引っ掻き傷ができてしまったときには、小さな傷であっても細菌感染を起こしたりする可能性があるので、必ず動物病院で全身を診てもらうようにしましょう。

 

動物病院に行く前に、可能であれば傷口を水で洗い、出血している場合には清潔なガーゼなどで圧迫してから受診するとよいでしょう。 ただし、けんかの後には猫が興奮状態になってしまっていたり、痛みや恐怖心から飼い主さんに噛みついてしまう危険性もあるので、無理は禁物です。

 

傷口からの出血・熱感・腫れ・痛みなどが主な症状としてみられますが、猫の歯や爪は細く鋭利なため、皮膚の深い部分にまで及んでしまうことがあります。深い部分に細菌感染を起こすと、受傷して数日経ってから患部が腫れたり、膿が出てくることがあるため、飼い主さんがその時点でケガを発見することもあります。

 

 

また、猫免疫不全ウイルス(猫エイズウイルス)などに感染した「キャリア猫」とのけんかによる咬傷は、キャリア猫の唾液中に含まれたウイルスが傷口から侵入してしまうおそれがあるので、十分に注意してください。

 

咬み傷の場合、傷の大きさや深さ、受傷の部位によって処置は異なります。 動物病院では、傷口の周りの毛が刺激になったり感染源となったりするのを防ぐため、毛刈りをしたり、傷口を舐めたり引っ掻いたりしないようエリザベスカラーや保護衣を着ける必要がある場合もあります。また、化膿を防ぐ目的で消毒液や抗生物質の内服薬が処方されたり、痛みや炎症、発熱を伴う場合には消炎鎮痛剤が注射や内服薬で処方され、通院が必要となるケースもあります。

 

 

やけどをしてしまった

猫に熱いお湯がかかってしまったり、ストーブやホットカーペットなどでやけどをしてしまった場合には、できるだけ早く患部を冷やし、早急に動物病院を受診してください。

 

やけど(熱傷)の重症度は大きく分けるとⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度の2段階に分類されます。 見た目は軽度なものであっても広範囲に広がっている場合には命に関わる危険性もあります。

 

素早く冷やして、必ず動物病院を受診しましょう。この際、いきなり冷やそうとすると猫が驚いてしまったり、痛みによって興奮してしまう場合があります。 まずは猫をバスタオルで包むなどして落ち着かせ、飼い主さんが噛まれたり引っ掻かれたりしないように注意しながら、流水や冷たい濡れタオル、氷嚢などで優しく冷やしましょう。

 

動物病院では、水ぶくれの消毒をしたり、感染症や痛みに対し抗生物質や消炎鎮痛剤が処方されます。重度のやけどでは皮膚の移植手術が必要なケースもあり、入院が必要となります。 また、糖尿病などの基礎疾患のある猫では、受傷してから経過とともにやけどが深くなってしまう場合があるので、より慎重な管理が必要です。

 

 

 

やけどの重症度

 I度熱傷

表皮までの軽いやけどです。皮膚の表面が赤くなりヒリヒリしますが、痕は残らず数日で完治することが多いです。

 

 浅いⅡ度熱傷(浅達成Ⅱ度熱傷)

表皮の下にある真皮まで及んだやけどです。 水ぶくれができるのが特徴で、痛みを伴います。治るまでには1〜2週間が必要です。

 

 深いⅡ度熱傷(深達成II度熱傷)

真皮の深い部分まで到達したやけどで、皮膚の壊死や神経の損傷により、感染症を起こす危険性もあります。 神経を損傷している場合には、痛みを感じにくくなり、治るまでには1ヶ月程度の期間が必要となります。感染症を併発したり、痕が残ってしまうケースも少なくありません。

 

 Ⅲ度熱傷

やけどが皮下組織にまで及び、神経や血管を損傷している重篤な状態です。 神経が損傷しているので、痛みを感じる様子がほとんどないのが特徴です。 感染症を併発することが多いため十分な注意が必要で、治療には1ヶ月以上かかります。 また、皮膚から血の気が引いて蝋のように白くなってしまった場合には、皮膚の移植手術を行う場合もあります。

 

 

 

猫との生活の中で、ケガややけどをさせないように気を付けることが大切ですが、万が一ケガややけどをしてしまった時には、早急な対応が必要となるので動物病院を受診しましょう。

受診までの間に応急処置をするときには、猫が暴れたり、飼い主さんに噛みついたりしてしまうことも少なくありません。 まずはバスタオルや洗濯ネットで猫を優しく包んだり、タオルを敷き詰めたキャリーケースに入れてあげると、多少安心して大人しくなってくれる子もいます。

飼い主さん自身がケガをしてしまうことのないよう十分に注意をしながら、無理のない範囲で手当てをし、すみやかに動物病院を受診してください。

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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