動物病院で血液検査を受けた際に、「SAA」という項目を目にしたことがある飼い主さんもいらっしゃるかと思います。
SAAとは、体内で炎症が起きた時に血液中で上昇するタンパク質のことで、「血清アミロイドA」とも呼ばれます。
ここでは、SAAがどのくらいの値になったら異常なのか、どのようなタイミングで上昇してくるのか、また高値の場合はどのような病気の可能性があるのか、などについて解説します。
SAAとは
SAAとは、血液中にあるタンパク質の一種で、血清アミロイドA(Serum amiloyd A)の頭文字をとってSAAと呼ばれます。
体のどこかに炎症があると高値を示すことから、猫の急性の炎症マーカーとして指標とされている項目の一つです。
体が炎症をおこしている重要なサインのひとつに「発熱」が挙げられますが、猫は動物病院で興奮してしまったときにも体温が上昇することがあります。
SAAは興奮などの影響は受けないため、猫の状態を正確に把握することができます。
また、犬でよく用いられる炎症マーカーである「CRP」は、猫では炎症時でもほとんど変動しないことがわかっているため、このSAAが指標として用いられます。
猫の体が細菌やウイルスに感染したときや、怪我や病気をして組織や細胞が損傷を受けたときに、体の中で炎症反応が起こると、肝臓で作られたSAAが血液中に増えていきます。
炎症反応が起きはじめてから24〜48時間程度経つと、SAAの数値となって反映されてくるとされています。
そのため、
SAAは「体のどこかに炎症反応が起きていることを迅速に把握する」のに優れています。
ただし、上昇しているからといって、どの臓器に異常が起こっているのかという診断には至りませんが、
「体の中で何か異常がないか?」をチェックする時に有用な検査項目となります。
また、SAAを繰り返し測定して経過を辿ることで、病気の重症度や、治療がうまくいっているのかをある程度チェックすることができます。
SAAの基準値
猫のSAAの基準値は、『5.5mg/mL以下』です。
(参考:富士フイルム)
※基準値は、測定機関により異なります。
SAAが上昇したときに考えられる病気
検査結果でSAAの上昇がみられた場合には、炎症を起こす何らかの病気が体内にある可能性があるため、検査を進めていく必要があります。
問診や身体検査に基づき、血液検査や画像検査(X線検査・エコー検査)を行い、病気を特定していくことが一般的です。状態によっては、CT検査やホルモン検査などのさらなる精密検査が必要となる場合もあります。
全身の炎症に反応して上昇しますが、とくに、感染症や腫瘍、糖尿病、甲状腺機能亢進症などで上昇します。
◎感染症
・肺炎
・腎盂腎炎
◎急性膵炎
◎その他
・腫瘍
・骨髄疾患
・糖尿病
膀胱炎や結膜炎など、炎症が限られた範囲でのみ起きている場合には、SAAが上昇しないこともあります。
また、炎症性の病気ではありませんが、糖尿病でおよそ38%、甲状腺機能亢進症でおよそ50%と、一部の内分泌疾患でも上昇することが知られています。
また、病気を診断したときのSAAの値が基準範囲内の猫に比べて、高値の猫では生存期間が短く予後と関連すると報告されていることから、予後を予測するのにも役立つと考えられています。
SAAは、体内全体で起きている炎症の程度を測るための指標となりますが、どの臓器で異常が起きているのかを特定することはできません。
しかし、
「なんとなく調子が悪いとき」や、「食欲がないとき」、「発熱があるとき」などにSAAを測定することで、体内に炎症性の病気があるかどうかを振り分けることのできる、有用なスクリーニング検査
となります。
また、繰り返し測定することで、治療効果を判定したり、病気の再発の可能性をピックアップすることにも役立ちます。
参考:SA Medicine BOOKS 犬と猫の検査・手技ガイド2019 私はこう読む/EDUWARD PRESS
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福永 めぐみ
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