寒い冬を終え、ぽかぽかとした日差しにごろんとしたくなる春は、ネコちゃんにとっても過ごしやすくなる季節です。しかし、昼と夜の寒暖差が激しかったり、繁殖期や換毛期を迎える季節でもあるので、体調に変化が現れやすいともいわれています。ここでは、アイペット損保の保険金請求データを参考に、春に気をつけたい猫の病気について解説します。

 

 

毛球症

春から初夏は、暖かい冬毛から風通しの良い夏毛へと体毛が生え変わる時期です。暖かい季節には不要となる毛が次々抜けるため、換毛期には普段よりも抜け毛が多くなります。

 

グルーミング(毛づくろい)のため体を舐めた時に飲み込まれた抜け毛は、定期的に口から吐き出されるか、便と一緒に排出されます。

しかし、飲み込んだ毛が胃の中で絡み合ったり、ボール状にまとまってしまうことで、たまった毛を排出することが難しくなると、毛球症を引き起こします。

 

とくに、長毛種や頻繁にグルーミングをする猫などで起こりやすく、毛玉の刺激によって胃炎を起こしたり、食欲が低下したり、嘔吐が頻繁にみられるようになります。

 

予防法は、

こまめにブラッシングをすることで、飲み込む毛の量を減らしてあげたり、毛玉ケア用のフードを与えることも有効

です。

 

毛玉が胃の出口や腸を塞いでしまった場合には、外科手術が必要な場合もあります。

また、日常的にブラッシングをしてあげることは、毛球症以外にも皮膚トラブルの予防にも効果的です。

 

 

 

発情にまつわるトラブル

猫は日照時間が長くなる春と秋に、繁殖期のピークを迎えるといわれています。

屋外でも過ごす猫は、望まない妊娠をしてしまったり、猫同士のケンカにより怪我をしてしまうリスクが高まります。

また、生まれ持った生殖本能が満たされないことは、猫にとって大きなストレスとなります。

 

避妊・去勢手術を受けていない猫たちは、繁殖期に発情行動が頻繁に見られるようになり、「アーオ!」と大きな声で泣いたり、屋外への脱走を試みたり、マーキングやスプレー行動といった問題行動を起こしやすくなります。

 

避妊・去勢手術を受けることは、これらのトラブルを予防したり、

中高齢の雌猫に多い子宮疾患や乳腺腫瘍などの病気の予防

が期待できます。

 

 

 

ノミ・マダニ感染症

気温が上がり過ごしやすくなる春は、ノミマダニの活動も活発になる季節です。外ではさまざまな寄生虫と出会ってしまう危険性があり、予防薬で感染を防ぐことができるものも多いので、しっかり予防してあげるようにしましょう。

 

ノミが猫に寄生すると、とても激しい痒みが伴い、非常にストレスがかかります。ノミアレルギー性皮膚炎をおこすと、激しい痒みに加えて脱毛や発疹を伴った皮膚炎を起こします。さらに、ノミは消化管内の寄生虫(瓜実条虫)を媒介したり、大量に寄生した場合には貧血を起こす可能性もあるので注意が必要です。猫のためのノミ予防の記事はこちらをご覧ください。

 

マダニは日本全国に生息し、どんな気候にも対応するとされていますが、特に春と秋の年に2回、その活動が活発になります。川原や森、山の中などに多いとされていますが、公園の草むらなどにも生息している可能性があるので、猫も予防をしっかり行いましょう。

 

マダニに噛まれると、貧血や皮膚炎などを引き起こすだけでなく、近年ではマダニが媒介する恐ろしい感染症があることも知られるようになってきました。中でも、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は、ウイルスを保有しているマダニに噛まれることで感染する感染症で、人で重篤な症状を引き起こす可能性があります。

 

SFTSウイルスに感染すると、6日〜2週間の潜伏期間を経て、発熱や食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛などがみられます。このほかにも、頭痛、筋肉痛、意識障害などの神経症状、皮下出血、下血などがみられ、最悪の場合には死に至ります。犬や猫でも、同様の症状がみられ、有効な治療法はありません。

 

猫と家族の健康を守るためにも、予防薬でマダニの寄生を予防することはとても重要です。

猫のためのマダニ予防の記事はこちらをご覧ください。

 

参考:国立感染症研究所 病原微生物検出情報サイト

 

 

フィラリア症

春になると、動物病院などでフィラリア症のポスターなどを目にする機会も多いと思います。

フィラリア症は、春から予防が必要なわんちゃんの代表的な感染症ですが、

犬だけでなく猫もかかる病気なので、しっかりと予防

してあげましょう。

 

フィラリアは、フィラリア症に感染した動物の血液を吸った蚊が、次の動物を吸血することで感染する病気です。そのため、蚊の飛んでいる季節は注意が必要です。

 

フィラリアに感染すると、体内でフィラリアの子虫が成長し、心臓や肺の血管に寄生して血液の循環を悪くしてしまいます。猫の場合は主に肺に障害を起こしますが、猫では寄生する虫の数が少ないため診断が難しく、咳、呼吸困難、嘔吐などの症状が出てきた時は命に関わる危険な状態です。健康そうにみえても突然死を起こす場合もあります。

 

現時点では、猫の治療法は確立されていないため、予防がとても重要です。

 

 

 

生活環境の変化による体調不良

春は飼い主さんご家族の引っ越し・進学・就職など、生活環境に変化が生じやすい季節です。猫自身の生活に大きな変化があると、ストレスを感じる猫も少なくなくありません。

 

猫はストレスを感じると、食欲が低下したり、過剰なグルーミングにより脱毛がみられたり、排泄のトラブルなどがみられることがある

 

といわれています。いつもと違う様子がみられた場合には、猫が安心して暮らせる環境を整えるのと同時に、何らかの病気が隠れているサインかもしれないので、動物病院で相談してみましょう。

 

 

春は生活にも体調にも変化の多い季節です。寄生虫などの活動も活発になることから、さまざまな予防が必要となる時期でもあります。

 

健康な猫であっても、定期検診や予防薬について動物病院で相談してみることをおすすめします。

 

 

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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