猫には、品種によって「かかりやすい病気」があり、そのうちの多くは遺伝性疾患であるといわれています。 遺伝性疾患とは、変異した遺伝子によって引き起こされる病気のことで、その遺伝子が親猫から子猫へと引き継がれることにより、病気も遺伝していきます。
純血種の猫は、同じ猫種同士を限られた地域の中で交配されることが少なくないため、変異した遺伝子を引き継ぎやすくなってしまうことから、遺伝性疾患を発症する確率が高まります。 猫の種類によってかかりやすい病気が異なり、生まれつき症状があるものから、成長に伴って症状が現れるものもあります。 ここでは、代表的な猫の遺伝性疾患について解説します。
ピルビン酸キナーゼ欠損症ってどんな病気?
赤血球中に含まれるピルビン酸キナーゼという酵素が不足してしまうことで、赤血球が破壊され貧血を起こす病気です。 ピルビン酸キナーゼ欠損症は、生後2〜3ヵ月齢以降に貧血が現れますが、体が徐々に貧血になれてしまうため、明らかな症状が見られない場合も少なくありません。
好発猫種
アビシニアン
ソマリ
ベンガル
ノルウェージャン・フォレスト・キャット
メイン・クーン
など
◆ 症状
赤血球が壊れることにより、貧血が起こります(歯ぐきや舌の色が白っぽくなる)。
・食欲低下
・疲れやすい
・呼吸が速い
・尿の色が赤茶色になる
などの症状がみられることもあります。
◆ 治療法
貧血に対する対症療法が中心です。 貧血が軽度の場合は、激しい運動を制限したり安静に過ごすことで、日常生活にあまり支障なく過ごせるケースもあります。その他にも症状に応じて、酸素ハウス内で過ごしたり、輸血を検討する場合もあります。 貧血が重度の場合には、弱った赤血球を破壊する役割を担う「脾臓」を手術で摘出し、赤血球の減少を抑えることで、貧血の改善を試みる場合もあります。
◆ 予防法
残念ながら予防法はありません。 遺伝子検査により、発症する可能性の有無を調べることはできるため、発症リスクのある猫は繁殖させないようにすることで、今後の発生率を下げることにつながります。
骨軟骨異形成症 ってどんな病気?
骨軟骨異形成症は、スコティッシュ・フォールドなどで遺伝性に発症する、関節の病気です。 猫の関節の中は、弾力性のある関節軟骨が骨の表面を覆って、滑らかな動きができるようになっています。しかし、骨軟骨異形成症になると、成長段階でこの関節軟骨の構造に異常が起こります、関節の部分がコブのように腫れ(骨瘤:こつりゅう)、本来の関節の動きができなくなったり、関節炎を起こします。
好発猫種
スコティッシュ・フォールド
マンチカン
アメリカン・カール
ペルシャ
など
この病気は「折れ耳」「鼻ぺちゃ」「短足」など、見た目が特徴的な品種で起こりやすく、中でも折れ耳のスコティッシュ・フォールドは100%この病気であるとされています。 また、遺伝性の病気のため、若い猫でも発症することがあります。
◆ 症状
軽度の場合は無症状ですが、重症化すると関節に炎症を起こし、痛みを伴います。特徴的な症状は、手首や足首の関節に大きめのコブ(骨瘤)がつくられることで、触ってみるとコブを確認することができます。 コブの大きさはさまざまですが、進行性の病気のため、年齢とともにコブの大きさも大きくなる可能性があります。次第に関節を動かしにくくなったり、足を引きずって歩いたり、足を挙げたりする様子がみられることがあります。この軟骨の変形は、四肢の先や尻尾におこります。
◆ 治療法
根治治療はなく、薬やサプリメントにより関節の炎症を和らげたり、痛みを抑えてあげる対症療法が中心となります。この病気の遺伝子をもっている猫では、生涯付き合っていく病気です。
◆ 予防法
遺伝性の病気のため、予防法はありません。 好発品種では、激しい運動やジャンプは控え、段差を少なくするなど、関節への負担をなるべく減らせるように生活環境を整えましょう。関節に負担がかからないよう、登りやすい高い所には緩やかな傾斜やステップをつけたり、床には滑り止めのマットなどを敷くのも良い方法です。
また、体重が増えてしまうと関節にかかる負担も増すため、体重管理も重要です。 猫は痛みを隠しがちな動物です。日頃から猫の様子をよく観察し、歩き方に異常がないか、ジャンプはできているか、爪切りや四肢を触られることを嫌がらないかなど、痛みのサインが出ていないかチェックしてあげましょう。
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