炎症性腸疾患という病気をご存知ですか?あまり聞きなれない病気かと思いますが簡単にいうと慢性的に腸の炎症を起こしている状態です。

症状がでていてもおなかのゆるい子なんだ、放置されてしまうことも多い病気です。油断せずにしっかり病院に連れて行きましょう。

炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患(IBD)とは、小腸や大腸の組織内に炎症を引き起こす細胞(炎症性細胞)が腸内に広がっていくことで起こる慢性的な腸疾患のことを言います。猫の慢性的な下痢や嘔吐の原因となります。

 

炎症性腸疾患は炎症細胞の種類によっていくつかに分類されます。

 

□ リンパ球性形質細胞腸炎
□ 好酸球性腸炎
□ 好中球性腸炎
□ 肉芽腫性腸炎

 

中でも特に多いのはリンパ球性形質細胞性腸炎です。これは腸管(小腸、大腸の総称)に発生するリンパ腫と類似しており、しっかり鑑別することが必要になります。

症状は?

典型的な症状としては慢性的な嘔吐です。初期のうちは、食欲も元気もなくならないことが特徴です。また中には下痢や血便がでる場合があります。進行すると食欲不振や体重減少、脱水症状がみられることもあります。

 

腸の病変が重度になると栄養がうまく吸収できなくなるため腹水が溜まりおなかが膨らんだり張ったりします。また、むくみを起こしたりする事もあります。

原因は?

原因はまだはっきりと解明されていませんが、可能性として以下のものが考えられます。

 

□ 遺伝的な素因
□ 食事に対するアレルギー反応
□ 腸内細菌の乱れ
□ 腸間粘膜上皮の透過性の進行
   (透過性:腸内の粘膜が本来通さない分子やイオンを通すようになってしまうこと)
□ 免疫システムの異常

 

などが考えられています。またこれらのうちいくつかの要因が複合的に作用している場合もあります。

検査方法

 

基準が多くあるため診断は容易ではありません。診断基準としては

 

□ 慢性的な消化器症状(嘔吐や下痢)がある
□ 慢性腸炎を起こす他の病気が除外できる
□ 腸管の検査にて腸炎の所見が見られる
□ 食事療法や抗生物質での治療に対して反応が少ない
□ ステロイドに代表される免疫抑制剤に対して反応が良い

 

というものです。

 

まずは慢性的に嘔吐や下痢を起こす病気を除外する必要があります。これらを起こす炎症性腸疾患以外の代表的な病気としては

 

□ 甲状腺機能亢進症
□ 食物不耐性
□ 食物アレルギー
□ 慢性膵炎
□ 膵外分泌不全
□ 腸内寄生虫感染
□ 消化器型リンパ腫

 

があります。
血液検査、レントゲン、エコー検査、糞便検査、内視鏡検査などでこれらの病気がないかを判断する必要があります。

炎症性腸疾患では超音波検査において腸管の壁が厚く見えることがあるので、ある程度疑うことはできます。ただしリンパ腫でも同じように見えるため注意が必要です。

リンパ腫と炎症性腸疾患を区別するには

腸管の病理組織検査が必要になります。内視鏡で腸の粘膜の一部を採取する検査やメスでおなかを開いて腸の切除、検査を行います。

病理検査をしても、まぎらわしい場合にはより特殊な検査も組み合わせることもあります。
その後治療を行い、反応を見ながら炎症性腸疾患を診断してゆきます。

治療方法

治療は、食事療法や抗菌薬、免疫抑制剤(ステロイド)などを組み合わせて行います。

食事療法

食事をアレルギーに対応した特別なご飯を用意するなど食事療法を行います。今まで食べたことないタンパク源で作られた食事を試してみて症状が改善されるかを試して見ます。

抗菌薬・抗生物質

炎症性腸疾患の発症要因の1つとして腸内細菌に対する過剰な免疫反応が考えられています。それを抑えるために抗生物質を使用することがあります。猫のよく使用する薬としてはタイロシンやメトロニダゾールといったものがあります。

免疫抑制剤

食事療法や抗生物質に効果が無い場合には、ステロイドに代表される免疫抑制剤を使用します。猫の場合、ステロイドが効果的であることが多いです。

その他の治療

補助的な治療としては以下のようなものがあります。上記の治療に加えてこのような治療を行うこともあります。

ビタミンB12(コバラミン)の補充

慢性的な腸炎の場合、ビタミンB12が不足することがあります。これが不足すると腸粘膜が萎縮したり、下痢が悪化することがあります。それを防ぐために点滴や注射のような口以外の場所からビタミンB12を摂取します。

フラクトオリゴ糖

小腸では分解されない糖なので、大腸内で善い細菌を増殖する手助けをします。腸の運動性の維持や腸炎を鎮める効果も期待されています。

乳酸菌などの補充

いわゆる善玉菌を補充して腸内の環境を整えます。

 

治療がうまくいかない場合は・・・?

□ 食事管理がうまくできていない
□ 炎症の程度が重度である
□ 他の病気も併発している(肝疾患、膵炎、甲状腺機能亢進症など)
□ 消化器型リンパ腫を見逃している

 

という可能性がありますので担当獣医師とともに一度見直してみてください。

 

炎症性腸疾患は完全に治すことは難しいため治療でコントロールしていくことになります。症状を抑えるために継続的な治療が必要になりますが様子を見ながら適切な治療を行ってあげましょう。

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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