トキソプラズマ症は、トキソプラズマという寄生虫が猫の糞便などを介し感染。人畜共通感染症のひとつで、食欲の低下下痢、発熱、などの症状が見られます。

 

こんな症状が出たら気をつけて

主な症状としては下痢や、食欲不振などが挙げられます。免疫力が正常に働いている場合はそれほど重症化せず、しばらくすると症状が落ち着いていきます。ただし、抵抗力の弱い子猫や、何らかのウイルス感染症を発症し免疫力の弱っている猫の場合は重症化する恐れがあります。食欲の低下や下痢、血便、黄疸といった消化器系の症状をはじめ、発熱、咳、呼吸困難といった呼吸器系の症状を引き起こし、最悪の場合は死に至る危険性もあるのです。また、トキソプラズマ症は人間にも感染する病気で、特にいままでトキソプラズマに感染したことがない妊婦がこれに感染すると胎子に悪影響を及ぼす恐れがあるといわれています。

 

トキソプラズマ症の原因

トキソプラズマ症はトキソプラズマという寄生虫が猫の便などを介し感染します。感染源となるのが猫の便から排泄されたトキソプラズマのオーシストです。それらが混じった水を飲んだり、グルーミングしているときなどに口に入れたりすることで感染します。トキソプラズマに感染した動物の肉(豚肉や鶏肉)を生で食べたりすることでも感染します。オーシストは土や水の中などさまざまな自然環境で数カ月から数年間は生存が可能なため、植木やプランターの土から感染する場合もあります。さらに、母猫がトキソプラズマに感染していると、胎盤感染によって死産や流産も起こりえます。

 

トキソプラズマ症の治療方法

トキソプラズマ症と診断された場合、抗生物質やサルファ剤と葉酸代謝阻害剤の合剤である「ST合剤」の投与を行うことになります。症状が改善するまで、少なくとも4週間の投与が求められ、また同時に下痢や発熱などの症状がある場合は、それらの症状に合わせた薬剤を投与していきます。

 

診療費はいくらぐらい?

診療項目(内容) 単価(円) 数量 金額(円)
診察料 ¥1,000 1 ¥1,000
血液検査(抗体検査) ¥5,200 1 ¥5,200
糞便検査 ¥1,500 1 ¥1,500
内服薬 ¥500 10 ¥5,000
合計 ¥12,700

※この診療明細書はアイペット損保の支払いデータから作成した診療費の参考例となります。したがって、診療費用・内容の平均・水準を示すものではありません。

 

トキソプラズマ症の予防法

屋外の土などトキソプラズマが含まれている可能性のあるものに猫を触れさせないようにします。感染したノラ猫と接触することで発症する恐れもありますので、屋外には出さず、室内飼いをするようにしましょう。人間を介し感染することもありますので、飼い主さんも十分に気をつけなければなりません。ガーデニングなどで屋外の土や砂に触る際には手袋をし、終わったら十分な手洗いを行い、感染源を屋内に菌を持ち込まないようにしましょう。また、豚肉や鶏肉にはトキソプラズマが寄生している恐れがあります。トキソプラズマは加熱すれば死滅するので、猫に食べさせる場合はしっかりと火を通すようにしてください。調理に使用したまな板や包丁などは使うごとに洗うようにしましょう。

トキソプラズマは人間にも感染する人獣共通感染症のひとつです。特に妊婦が初感染すると胎盤を通して胎子に悪影響を及ぼす恐れがありますので、ノラ猫との接触を避ける、糞便の処理後は手洗いを徹底する、豚肉の生食を避ける、必ず手袋をしてガーデニングをするなどして、感染を防いでください。

 

 

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例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

【治療】

■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり 

【症状】

■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い ■後遺症が残ることがある

【対象】

■ 子猫に多い ■ 高齢猫に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い  

【季節性】

春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】

■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつるか】

■ 犬にうつる ■ 人にうつる ■ 多頭飼育で注意 

【命への影響度】

■ 命にかかわるリスクが高い

【費用】

■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防】

■ 予防できる ■ワクチンがある

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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