猫には、品種によって「かかりやすい病気」があり、そのうちの多くは遺伝性疾患であるといわれています。 遺伝性疾患とは、変異した遺伝子によって引き起こされる病気のことで、その遺伝子が親猫から子猫へと引き継がれることにより、病気も遺伝していきます。

純血種の猫は、同じ猫種同士を限られた地域の中で交配されることが少なくないため、変異した遺伝子を引き継ぎやすくなってしまうことから、遺伝性疾患を発症する確率が高まります。 猫の種類によってかかりやすい病気が異なり、生まれつき症状があるものから、成長に伴って症状が現れるものもあります。 ここでは、代表的な猫の遺伝性疾患について解説します。

 

多発性嚢胞腎ってどんな病気?

多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)は、腎臓にいくつもの小さな嚢胞(液体などがたまった袋状の構造物)が形成されてしまう、猫の代表的な遺伝性疾患です。進行すると嚢胞の数や大きさが増し、腎臓の正常な細胞が嚢胞に置き換わってしまうことで、腎臓の機能がだんだんと低下します。

 

好発猫種

 ペルシャ 

 ペルシャ系長毛種

 アメリカン・ショート・ヘア

 スコティッシュ・フォールド

 マンチカン

 ヒマラヤン

など 中でも特にペルシャでの発生が多いとされています。

 

◆ 症状

初期段階では無症状で、健康診断のエコー検査の際に偶然発見されるケースもあります。病気が進行すると、慢性腎不全の症状(多飲多尿、脱水、食欲低下、嘔吐など)がみられるようになります。2〜10歳ごろに症状がみられるようになることが多いです。

 

◆ 治療法

残念ながら、根治させる治療法はありません。 一般的に、慢性腎不全に対する治療(食事療法、投薬治療、点滴治療など)を行います。

 

◆ 予防法

遺伝性疾患のため、病気の予防は困難です。 この病気を発症させる遺伝子を持っているかは、遺伝子検査により調べることができます。遺伝的素因のある猫や、この病気を発症した猫は、繁殖させないようにすることが、病気の蔓延を防ぐことにつながります。

 

◆愛猫がこの病気と診断されたら

早期に治療を開始することで、残っている腎臓の機能を維持することにつながります。 この病気と診断されたら、日頃の猫ちゃんの様子をよく観察し、おかしいなと思うことがあれば早めに動物病院で相談しましょう。また、定期検診を受けることも大切です。   こちらの記事もご一読ください。

 

猫の多発性嚢胞腎(のうほうじん)【獣医師解説】

うちの子おうちの医療事典「多発性多発性嚢胞腎」

 

 

肥大型心筋症ってどんな病気?

肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなり、心臓の機能が低下する病気です。心筋症にはいくつかのタイプがありますが、猫で最も多いのがこの肥大型心筋症です。 はっきりとした原因はわかっていませんが、好発猫種では遺伝的に発症することが報告されています。

 

好発猫種

 メインクーン

 ラグドール

 アメリカン・ショート・ヘア

 ペルシャ

この他の猫種や雑種猫でも発生します。

 

◆ 症状

初期には症状がほとんどみられません。 病気が進行すると、以下のような症状がみられるようになります。

 元気がない

 食欲がない

 動きたがらずよく寝ている

 疲れやすい

 呼吸が速い、苦しそう

さらに進行すると、肺に水が溜まったり(肺水腫)、血栓が形成されやすくなる(動脈血栓塞栓症)ことで肢の麻痺や痙攣、腎不全などを発症し、命に関わる危険性があります。

 

◆ 治療法

完治させる治療法はありません。心臓や全身の状態に合わせた内科治療が中心となります。 肺水腫や動脈血栓塞栓症などを併発すると、入院による集中的な治療が必要となります。

 

◆ 予防法

残念ながら、予防することはできません。 この病気を起こす可能性のある特定の遺伝子の異常をもっていることがあらかじめわかっている場合には、繁殖しないことで、次世代への病気の蔓延を防ぐことにつながります。

 

◆ 愛猫がこの病気と診断されたら

早期に治療を開始することで、心臓の機能の維持と、合併症の予防につながります。突然死を起こす可能性もある病気のため、日頃から猫ちゃんの様子をよく観察し、おかしいなと思うことがあれば早めに動物病院で相談しましょう。また、処方された薬をきちんと飲ませることと、定期検診を受けることはとても大切です。

 

老猫がかかりやすい心筋症【獣医師解説】

うちの子おうちの医療事典「肥大型心筋症」

 

 

参考文献:猫の治療ガイド2020 私はこうしている(エデュワードプレス)

 

 


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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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