人間には昔から嗜好品として親しまれている食品でも、猫にとっては命を脅かしかねない危険なものがあります。その代表例がコーヒーです。自分が好きなものを猫にも味わわせてあげたいと舐めさせる、なんてことは絶対に禁物。なぜ猫にコーヒーは危険なのか、また万が一誤飲してしまった時の対処法をご紹介します。
なぜコーヒーは危険なの?
「コーヒーを飲むと眠れなくなるから、夜は飲まないようにしている」、「仕事が忙しい時は、コーヒーを飲んで頑張る!」という人もいるかと思います。コーヒーには、眠気や疲労を取り除いて考える力や集中力を高める覚醒作用のほか、呼吸機能や運動機能を高める作用や、利尿作用などがあり、適量を摂取すれば人間の体に良い影響をもたらすと言われています。けれども、人間に比べて体の小さな猫がカフェインを摂取した場合は、そうした効果が過度に働いてしまい、健康を害すことになるのです。
カフェインを含む食品としてよく知られているのはコーヒーですが、それ以外にも私たちがよく飲むものにはカフェインが含まれています。下記にあげる飲み物は、コーヒーと同様、猫には絶対に与えてはいけないものなので、覚えておきましょう。
カフェイン入り飲料の一例
◇日本茶(緑茶、抹茶、玉露)
◇ココア
◇紅茶
◇ウーロン茶
◇コーラ
◇栄養ドリンク
さらに、飲み物だけでなく注意したいのが、ゼリーやケーキ、クッキーなどのお菓子類です。ゼリーやキャンディ、ケーキ、アイスクリームなど、カフェインを含む原材料を使った食べ物は、スイーツ類に多くあります。おやつを食べている時に可愛い目で見つめられたら、つい一口分けてあげたくなってしまいますが、絶対に与えてはいけません。
コーヒーを誤飲した時の症状は?致死量は?
飼い主さんが積極的に与えたり、おすそ分けしてあげたりしなくても、一緒に生活している中で猫が誤飲してしまうことも考えられます。コーヒーカップの中身をペロッと舐めてしまったり、コーヒーの粉を舐めてしまったりした場合、下記のような症状があらわれる可能性があります。
症状の一例
◇過度の興奮
◇動悸、呼吸の促進、不整脈
◇嘔吐
◇ふらつき
◇ひきつけ
これらはカフェインによって引き起こされる症状なので、コーヒーだけでなく先にあげたカフェインを含む食品を飲んだり食べたりした場合に共通して起こる可能性があります。上記以外にも、冠動脈や肺動脈など命にかかわる大事な血管を含む全身の血管が拡張することによって、命にかかわる重篤な状態に陥ることも考えられます。
猫がカフェインの摂取によって死に至る致死量は、体重1㎏あたり150mgだと考えられています。ただし、中毒症状は体重1㎏あたり15〜20㎎で発症すると言われています。たとえば、体重5㎏の猫であれば、75〜100mg。それだけのカフェインを一度に摂るには、コーヒーカップ1杯くらいを飲む計算になります。ただし、子猫、成猫、シニア猫と成長具合によっても代謝能力は異なり、猫の体調や体質によっても違いはあるので、たとえ少しの量でも誤飲しないよう飼い主さんが気をつけることが大事です。
応急処置や治療法は?
万が一、猫がコーヒー(またはその他カフェインを含むもの)を口にして、上記のような中毒症状が見られた時は、すぐに動物病院で診察を受けてください。「まずは飼い主が吐かせる」と書いてある記事も見受けられますが、素人が吐かせようとする行為は非常に危険ですので、絶対にやってはいけません。
病院では人間のように指を喉の奥に入れて無理やり吐かせるのではなく、薬を使って嘔吐させます。処置をしても嘔吐しなかった場合や、意識がもうろうとしていたり、処置に使う薬が持病などによって使えなかったりする場合などは、全身麻酔をかけて胃洗浄を行うこともあります。ほかにも便と一緒に体外に排出させたり、点滴によって解毒を促したりといった治療もあり、獣医師が猫の具合を診て、的確な判断と技術のもとに行いますので、必ず獣医師の診察を受けてください。
なお、中毒症状が見られなくても、猫がコーヒー(またはカフェインを含むもの)を口にしたと思われる時は、動物病院で診察を受けてください。中毒症状があるなしにかかわらず、病院に連れて行く際には、下記をメモして持っていくと、診察および治療がよりスムーズになります。
診察時に必要な情報の一例
◇何を口にしたのか(コーヒーなどの飲み物か、菓子類かなど)
◇どのくらいの分量を口にしたのか(ペロッと舐めた程度か、たくさん飲んだり食べたりしたのか)
◇いつ口にしたのか(どのくらいの時間がたっているのか)
テーブルの上にコーヒーの入ったカップを出しておいたりすると、ミルクが好きな猫なら、カフェオレをペロッとひと舐めしてしまうかもしれません。コーヒーの粉が飛び散って猫の毛に付着していたら、うっかりそれを舐めてしまう可能性も。猫が安全に暮らせるようにするのは、飼い主さんの責任です。十分に注意しましょう。
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⇒『【獣医師監修】人間の食べ物って、猫は食べても大丈夫?良いものとは?ダメなものとは? 』
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