歯周病などの歯のトラブルが起きて口の中が不快だったり、痛かったりしても、猫はそれを明確に言葉で飼い主さんに伝えることはできません。健康な歯を維持するためにも歯磨きの習慣をつけてあげることが大事なのです。「嫌がってなかなか歯磨きをさせてくれない」という飼い主さんのために、コツを紹介します。
猫にも歯磨きは必要なの?
まずは、歯垢(プラーク)と歯石について、説明しましょう。
歯垢(プラーク)が石灰化すると歯石になる
歯の表面を指で触ったときに、ネバネバした白いものが付くことがありますよね。それが歯垢(プラーク)。歯の表面に唾液の中の糖タンパクが膜のように付着し、その上に細菌が繁殖したものです。そして、歯垢(プラーク)が唾液に含まれるカルシウムによって、石灰化して硬くなったものが歯石です。
歯石は歯周病の原因、だから歯磨きが必要
歯石そのものは悪さをするものではないのですが、表面がデコボコしているので、さらに歯垢(プラーク)が付着しやすく、細菌が繁殖しやすくなります。そうして繁殖した細菌が、歯と歯茎の間から歯周組織の奥深くまで侵入していくことで、歯周炎といった進行性の歯周病を引き起こすのです。歯周病は細菌性の病気なので、進行すると、口腔内だけでなく体のほかの臓器に悪影響を及ぼすことがあります。そのため毎日の歯磨きによって、歯石のもととなる歯垢(プラーク)を取り除いておくことは、愛猫の健康を保つためにとても大切なのです。
歯磨きは1日何回?どんな道具を使えばいいの?
人間は朝晩、あるいは毎食後に歯を磨く人が多いですよね。では、猫の場合はどうすれば良いのでしょうか。
猫の歯磨きは1日1回以上
歯垢(プラーク)は、24時間で形成されるため、少なくとも1日1回以上、しっかりブラッシングをして、歯垢を除去しておけば安心です。歯垢は時間がたてばたつほど落としにくくなるので、夕食後になるべく早く歯磨きをするようにしましょう。
猫の口に合ったヘッドの大きさ、毛の硬さを選ぶ
猫の歯磨きは、人間と同じように歯の表面をブラッシングできる歯ブラシを使って行います。ただし、猫は人間に比べて口も歯も小さく、歯並びや歯の形も違うので、歯ブラシの選び方には気をつけたいものです。人間の幼児用歯ブラシのようにブラシ部分が小さいものと、細かい部分を磨くタフトブラシの2種類を用意しておくと、前歯と奥の歯の形状に合わせて磨き分けるのに役立ちます。猫専用の歯ブラシのほかに、人間用の歯ブラシの中には、猫にも使える形状のものがありますので、獣医師に相談して選ぶと良いでしょう。
歯磨きシートは口を触らせる練習に有効
歯磨きの道具の一つとして、歯磨きシートというものが市販されています。前歯と犬歯くらいなら、歯磨きシートでも表面の汚れを除去することはできるでしょう。シートで口や歯を触れるようになったら、徐々に歯ブラシに移行していくと良いでしょう。また、毛先に違和感を感じて嫌がる場合は、綿棒を使って歯の表面をこすり、歯磨きに慣れてもらうのも一つの方法です。
歯磨きの上手なやり方とコツとは?
いきなり愛猫の口を開いて歯ブラシを入れようとしても、上手くいくものではありません。最初は歯に触れるのを慣らしながら、永久歯が生え揃う生後6ヵ月くらいまでに歯磨きを習慣化しましょう。
STEP1 顔や口に触れることに慣らす
まずは、愛猫を抱っこしたり、遊具で遊んだりしている中で、体や口に触られることに慣れさせましょう。
STEP2 指やガーゼで歯に触れることに慣らす
次は歯に触れてみましょう。指やガーゼを使って、優しく歯に触れてみてください。市販の歯磨きシートを使ってもいいでしょう。歯ブラシに興味を示す子なら、初めから歯ブラシを歯に当ててみましょう。
STEP3 まずは歯1本からブラシを動かしてみる
嫌がらずに歯を触らせてくれるようになったら、歯ブラシを使います。表面に対してブラシを垂直に当て、ブラシを往復させてみます。猫にとって美味しそうな匂いのする歯磨きジェルを使うのもいいでしょう。最初はジェルで歯の表面をサッとこすり、あとは舐めさせてあげます。そうすることで、徐々に歯磨きを嫌がらなくなる猫も多いようです。
STEP4 やりやすいのは犬歯から
歯磨きの順番はとくに決まっていませんが、唇を少しめくれば露出する犬歯から始めてみましょう。愛猫を抱くなど、嫌がらずさせてくれる体制をとりましょう。
一般的な歯磨きポイント
□ 歯ブラシの毛先がややしなる程度の強さ
□ 歯ブラシは優しく小刻みに動かして磨く
□ 1本の歯を磨くのに10往復が目安
□ 歯の平面だけでなく曲面も意識して磨く
□ ブラシが歯のどこに当たっているかを意識しながら磨く
猫の歯磨きは、犬に比べるとまだまだ一般的ではないようです。成猫から飼い始める場合も、ぜひ歯磨きにトライしてみましょう。その子に合った歯ブラシの選び方や磨き方については、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
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