飼い主さんが知っておきたい猫の歯に関するにゃんペディアの記事を1つにまとめました。

 

目次

1.猫の歯の基礎知識

2.猫の歯にまつわる病気

3.猫の歯磨きの必要性

4.猫の歯磨きのコツ

5.猫の歯ぎしりと原因

 

1.猫の歯の基礎知識

猫の歯は、肉を切り裂き、引きちぎるためのもの

犬は肉食に近い雑食、猫は真性の肉食獣で、歯の本数や形状など、口内の様子もかなり違っています。人間は、食べ物を上下の歯で細かくなるまで噛み砕き、唾液と混じり合わせてから飲み込む「咀嚼」をするので、奥歯(臼歯)は歯の表面が平らで、上下の歯が合わさるようになっています。一方、猫は肉食獣のため、肉を引き裂き、引きちぎるのに適した尖った歯をしています。猫の歯は、人間のように咀嚼するためのものではないのです。

 

猫の歯は尖っていて噛み合わない

猫の歯は、肉を引き裂きやすいように先が尖っていて、ハサミ状の噛み合わせになっています。こうした特徴は猫、犬に共通して見られるもので、奥歯の上面が平らで、口を閉じれば上下の歯が合わさるようになっている人間の歯とは、大きく形状の異なるところです。

 

子猫の歯は、乳歯から永久歯への生え変わりで歯が抜けます

生後半年未満から飼い始める場合は、口の中をよく見て、乳歯が生え揃っているか、抜けている歯はないか、永久歯に生え変わっているところはないかをチェックしておきましょう。

 

猫の乳歯は26本、永久歯は30本

人間の歯は、乳歯が32本、永久歯は32本(親知らず上下4本を除けば28本)です。それに対して、猫の歯の数は、乳歯26本、永久歯30本です。乳歯には、犬歯、切歯、前臼歯がありますが、後臼歯はありません。

 

生え変わりは生後11週齢〜25週齢が目安

乳歯が生えるのは、生後3週間くらいからで、2ヵ月くらいまでに上下の歯が生え揃います。生後3ヵ月からは乳歯から永久歯へと生え変わり、6ヵ月くらいまでに全ての永久歯が生え揃います。このとき、乳歯にはなかった後臼歯が生えて、成猫の歯は全部で30本となります。

 

抜けた乳歯を飲み込んでしまっても大丈夫

乳歯は生え変わりの時期にグラグラして、自然と抜けてしまいます。床に落ちている小さな歯を見つけてびっくりする飼い主さんも多いようです。抜けた歯を飲み込んでしまうこともありますが、とくに心配はありません。

 

 乳歯が抜けずに残ってしまうことは?

犬の場合は、「乳歯遺残(にゅうしいざん)」と言って、永久歯が生える時期になっても、乳歯が残ってしまうことがあり、トラブルを引き起こす原因になるので治療が必要ですが、猫には「乳歯遺残」はまずないので、心配ありません。

 

乳歯が生えたら歯磨きを

猫も乳歯が生え始めたら歯磨きのトレーニングを開始するタイミングです。永久歯が生え揃う頃までには、歯ブラシによる歯磨きが習慣になるようにしましょう。

 

成猫の歯が抜けたら獣医師の診察を

永久歯に生え変わってから、健康な猫の歯が抜けることはありません。もし成猫の歯が抜けたら、何か歯の病気にかかっている可能性があるので、獣医師の診察を受けましょう。

 

歯周病が進行すると歯が抜ける

成猫の歯が抜ける原因として、まず考えられるのが歯周病です。歯が抜けるほど進行した歯周病は、細菌が体のほかの臓器に悪影響を及ぼしている可能性も考えられます。すぐにかかりつけの動物病院で、歯と全身のチェックをしてもらいましょう。

 

ぐらついた歯を安易に抜くのは禁物

愛猫の歯がぐらついているのを見つけたら、放置しないで、獣医師の診察を受けましょう。飼い主さんが、ぐらついた歯を安易に抜くのは禁物です。膿んだりする危険が伴います。猫の歯はとても小さくデリケートなので、抜歯は全身麻酔のもとで慎重に行いましょう。

 

歯が折れた場合、すぐに獣医師の診察を

犬は、硬い食べ物やおもちゃをかじったことで歯が折れることがありますが、猫の場合は、食べ物やおもちゃで歯を折ることはまずないでしょう。猫の歯が折れる原因のほとんどは、外傷によるものです。高いところから飛び降りて口を打った、交通事故で顔に怪我をしたなど、外からの圧力で犬歯などが折れることがあります。もし、歯が折れたら、そのまま放置せず、すぐ病院に連れて行きましょう。歯が折れたり欠けたりすることで、露出した歯髄(しずい)などから細菌が歯の奥に入り、血流に乗って全身に菌が回る危険性があります。必ず獣医師の診察を受け、適切な処置を行ってください。歯は愛猫の健康を左右する大事なものです。子猫のときから口の中をよく見る習慣をつけ、小さな変化も見逃さないようにしておきましょう。

 

猫は歯石がついていないのに、歯肉の炎症が進んでいく

人間の唾液は中性〜弱酸性(PH6.8〜7)で、猫もほぼ同じくらいです。一方、犬の唾液はアルカリ性(PH8〜8.5)と言われています。そのため犬では歯石が多くついて歯周病が進行していくのに比べ、猫は歯石があまりついていないのに歯肉の炎症が進んでいくことになります。

 

2.猫の歯にまつわる病気

猫の歯および口の中の病気には、次のようなものがあります。猫の歯の病気で原因がはっきり分かっているのは、歯周病です。歯にこびりついた歯石の表面に付着した歯垢が歯肉への細菌感染を引き起こし、歯肉炎、歯周炎という歯周病を進行させてしまうのです。

 

歯周病

歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって、歯肉が炎症を起こした状態を「歯肉炎」と言います。歯肉炎が進行して、歯肉以外の歯周組織にも炎症が広がった状態を「歯周炎」、「歯肉炎」「歯周炎」を合わせて「歯周病」と言います。歯が汚れている、歯茎が赤く腫れる、歯茎から出血する、歯が抜ける、口臭がするなどの症状が見られたら、歯周病が進行しているかもしれません。

 

歯肉口内炎

歯周病で起こる歯肉や歯槽粘膜の炎症にとどまらず、説明のつかない部位に炎症を起こす猫の「歯肉口内炎」。早いと1歳未満で発症し、徐々に悪化していきます。人間の場合は、口内炎ができると不快な痛みを感じますが、猫の場合は初期の症状が口臭だけであることが多く、病状が進行するにつれて口をぺチャぺチャ、モグモグさせるようになり、よだれが多くなったり、ドライフードを嫌がったり、前足で口を引っ掻く仕草を見せるようになったりします。重度になると痛みを強く感じるようになり、食事やあくびをするときに悲鳴を上げることもあります。この病気がなぜ起こるのか、はっきりした原因は分かっていませんが、口腔内細菌が病状の悪化に関係しているのは明らかなので、歯周病の予防と早めの治療が重要だと考えられます。

 

吸収病巣

歯周病治療のためにレントゲン撮影をした際、歯の根っこが溶けている「吸収病巣(きゅうしゅうびょうそう)」という病気を発見することがあります。原因ははっきり分かっていませんが、この病気は進行性で悪化すると神経が露出して痛みを伴うようになるので、抜歯が必要になります。ちなみに、猫には虫歯はみられません。歯の形状的に虫歯菌が付着しにくいことが要因と考えられますが、犬にはまれに虫歯が発生するケースがあります。その原因ははっきり分かりませんが、犬は猫に比べて飼い主さんが口に含んだ食べ物を分けてもらう機会があることが多く、その際、唾液を介して虫歯菌をうつしてしまうことが関係しているのかもしれません。

 

3.猫の歯磨きの必要性

 

毎日の歯磨きが大事

肉食獣の猫は、捕らえた獲物の生肉を切り裂いて噛むのに適した形になっていますが、ペットとして室内で飼われる猫の食事の主流はキャットフードかと思います。歯を使って咬み裂くことがほぼないため、歯に汚れが溜まりすい食生活になっているのです。そこで、猫にも必要なのが、毎日の歯磨き。犬に比べると、まだまだ猫の歯磨きを習慣にしている飼い主さんは多くないようですが、大切な家族である猫に元気で長生きしてもらうために、子猫のときから歯磨きを習慣にしてほしいものです。

 

歯垢(プラーク)が石灰化すると歯石になる

歯の表面を指で触ったときに、ネバネバした白いものが付くことがあります。それが歯垢(プラーク)。歯の表面に唾液の中の糖タンパクが膜のように付着し、その上に細菌が繁殖したものです。そして、歯垢(プラーク)が唾液に含まれるカルシウムによって、石灰化して硬くなったものが歯石です。

 

歯石は歯周病の原因、だから歯磨きが必要

歯石そのものは悪さをするものではないのですが、表面がデコボコしているので、さらに歯垢(プラーク)が付着しやすく、細菌が繁殖しやすくなります。そうして繁殖した細菌が、歯と歯茎の間から歯周組織の奥深くまで侵入していくことで、歯周炎といった進行性の歯周病を引き起こすのです。歯周病は細菌性の病気なので、進行すると、口腔内だけでなく体のほかの臓器に悪影響を及ぼすことがあります。そのため毎日の歯磨きによって、歯石のもととなる歯垢(プラーク)を取り除いておくことは、愛猫の健康を保つためにとても大切なのです。

 

病院での定期的な歯石取りも必要

歯垢や歯石の除去は、歯の表面の見える部分のケアだけでは、十分ではありません。歯と歯肉の間の歯周ポケットの汚れを取ることが、歯周病予防には肝心なのです。そのため年に1回は、動物病院で歯科検診を受けておきましょう。なお歯石の除去は、獣医師が全身麻酔のもとで行う専門的な治療です。動物病院で受診しましょう。最近、愛猫の食欲がない、口臭が強い、しきりに口の周りを気にしている…。そんな様子に気づいたら、もしかしたら歯のトラブルが原因かもしれません。愛猫の口の中をよく観察して、歯や歯茎の色などをチェックしてみましょう。

 

4.猫の歯磨きのコツ

歯周病などの歯のトラブルが起きて口の中が不快だったり、痛かったりしても、猫はそれを明確に言葉で飼い主さんに伝えることはできません。健康な歯を維持するためにも歯磨きの習慣をつけてあげることが大事なのです。「嫌がってなかなか歯磨きをさせてくれない」という飼い主さんのために、コツを紹介します。

 

歯磨きは1日何回?どんな道具を使えばいいの?

人間は朝晩、あるいは毎食後に歯を磨く人が多いですよね。では、猫の場合はどうすれば良いのでしょうか。

 

猫の歯磨きは1日1回以上

歯垢(プラーク)は、24時間で形成されるため、少なくとも1日1回以上、しっかりブラッシングをして、歯垢を除去しておけば安心です。歯垢は時間がたてばたつほど落としにくくなるので、夕食後になるべく早く歯磨きをするようにしましょう。

 

猫の口に合ったヘッドの大きさ、毛の硬さを選ぶ

猫の歯磨きは、人間と同じように歯の表面をブラッシングできる歯ブラシを使って行います。ただし、猫は人間に比べて口も歯も小さく、歯並びや歯の形も違うので、歯ブラシの選び方には気をつけたいものです。人間の幼児用歯ブラシのようにブラシ部分が小さいものと、細かい部分を磨くタフトブラシの2種類を用意しておくと、前歯と奥の歯の形状に合わせて磨き分けるのに役立ちます。猫専用の歯ブラシのほかに、人間用の歯ブラシの中には、猫にも使える形状のものがありますので、獣医師に相談して選ぶと良いでしょう。

 

歯磨きシートは口を触らせる練習に有効

歯磨きの道具の一つとして、歯磨きシートというものが市販されています。前歯と犬歯くらいなら、歯磨きシートでも表面の汚れを除去することはできるでしょう。シートで口や歯を触れるようになったら、徐々に歯ブラシに移行していくと良いでしょう。また、毛先に違和感を感じて嫌がる場合は、綿棒を使って歯の表面をこすり、歯磨きに慣れてもらうのも一つの方法です。

 

歯磨きの上手なやり方とコツとは?

いきなり愛猫の口を開いて歯ブラシを入れようとしても、上手くいくものではありません。最初は歯に触れるのを慣らしながら、永久歯が生え揃う生後6ヵ月くらいまでに歯磨きを習慣化しましょう。

 

STEP1  顔や口に触れることに慣らす

まずは、愛猫を抱っこしたり、遊具で遊んだりしている中で、体や口に触られることに慣れさせましょう。

 

STEP2  指やガーゼで歯に触れることに慣らす

次は歯に触れてみましょう。指やガーゼを使って、優しく歯に触れてみてください。市販の歯磨きシートを使ってもいいでしょう。歯ブラシに興味を示す子なら、初めから歯ブラシを歯に当ててみましょう。

 

STEP3  まずは歯1本からブラシを動かしてみる

嫌がらずに歯を触らせてくれるようになったら、歯ブラシを使います。表面に対してブラシを垂直に当て、ブラシを往復させてみます。猫にとって美味しそうな匂いのする歯磨きジェルを使うのもいいでしょう。最初はジェルで歯の表面をサッとこすり、あとは舐めさせてあげます。そうすることで、徐々に歯磨きを嫌がらなくなる猫も多いようです。

 

STEP4  やりやすいのは犬歯から

歯磨きの順番はとくに決まっていませんが、唇を少しめくれば露出する犬歯から始めてみましょう。愛猫を抱くなど、嫌がらずさせてくれる体制をとりましょう。

一般的な歯磨きポイント

 歯ブラシの毛先がややしなる程度の強さ

 歯ブラシは優しく小刻みに動かして磨く

 1本の歯を磨くのに10往復が目安

 歯の平面だけでなく曲面も意識して磨く

 ブラシが歯のどこに当たっているかを意識しながら磨く

 

猫の歯磨きは、犬に比べるとまだまだ一般的ではないようです。成猫から飼い始める場合も、ぜひ歯磨きにトライしてみましょう。その子に合った歯ブラシの選び方や磨き方については、かかりつけの獣医師に相談してみてください。

 

5.猫の歯ぎしりと原因

愛猫の口から妙な音が聞こえて、「これって、猫の歯ぎしり?」と驚く飼い主さんもいるようです。猫も人間のように歯ぎしりをするのでしょうか?猫の歯ぎしりの原因とは?その原因と対処法について紹介します。

 

猫の歯ぎしり

猫の歯は、先端が尖っていて、上下の歯がハサミ状になっているため、上下の歯がぴったり合わさることはありません。そのため、人間の歯ぎしりのように、奥歯を食いしばって横にグライディングさせて「ギシギシ」と音を立てることはありません。では、飼い主さんが「歯ぎしりでは?」と思うのは、どんな音なのでしょうか?

 

☞シャリシャリ、シャクシャク、ジャリジャリ

人間よりずっと口が小さく、歯も小さな猫の場合、「シャリシャリ」「シャクシャク」という音をさせることが多いようです。なかには、「ジャリジャリ」という砂を噛むような音だと感じる飼い主さんもいます。

 

☞カチカチ、カリカリ

口をパクパクさせることで上下の歯が軽くぶつかる「タッピング」。カチカチ、カリカリと聞こえることが多いようです。

 

猫の歯ぎしりの原因は?

猫が歯ぎしりをするのは、主に生理的な要因からだと考えらえます。口の中を不快に感じていることで、口をパクパクさせたり、ギュッと食いしばったりすることがあるのです。不快に感じる主な原因を、以下に紹介します。

 

 乳歯から永久歯への生え変わりの時期に、乳歯がぐらついている

 噛み合わせが悪い

 食べ物の残りカスが歯に詰まっている

 歯周病がある

 口内炎がある

 

歯ぎしりをしたときの、対処法とは?病院に連れて行くべき?

猫の歯ぎしりは、眠り始めの頃に多いようです。また、食事中や食事の後に、口をパクパクして音をさせたり、口をギュッと閉じて食いしばって音をさせたりすることもあります。歯ぎしりとは少し違うかもしれませんが、歯に食べ物が詰まったり、口の中に被毛などの異物が入ってしまったりしたときに、口をクチャクチャすることもあり、その際に立てる音を飼い主さんが歯ぎしりと感じる場合もあるでしょう。歯ぎしりがあったからといって、慌てて動物病院に連れて行く必要はないでしょう。まずは、愛猫の様子をよく観察して、どんなときに、どんな風に、どんな音を立てるのかをチェックしてみましょう。

よく観察したうえで、口の中の不快感が歯ぎしりの原因になっていると考えられるなら、一度かかりつけの獣医師に診てもらいましょう。とくに歯周病や口内炎など、歯の病気が原因で歯ぎしりが起こっている場合は、早めに病気を発見し治療することが肝心です。

日頃から様子をよく観察して、変化にいち早く気づくことが、愛猫の健康を守るうえで役立ちます。「これって歯ぎしり?」と思ったら、まずは歯と口の中のトラブルがないか、よくチェックしてみましょう。

 

荻窪ツイン動物病院 院長

町田 健吾

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