健康で長生きするために歯がとても大事であることは、人間も猫も同じです。猫を家族に迎えるなら、まずは飼い主さんが猫の歯について正しい知識を身につけておきましょう。

 

猫の口腔環境はどうなっているの?

 

人間と猫とでは、口の大きさや歯の形、本数、口腔内環境まで異なっています。では、犬と猫は同じなのでしょうか?犬は肉食に近い雑食、それに対して猫は真性の肉食獣で、歯の本数や形状など、口内の様子はかなり違っています。

 

猫の歯は肉を切り裂き、引きちぎるためのもの

人間は、食べ物を上下の歯で細かくなるまで噛み砕き、唾液と混じり合わせてから飲み込む「咀嚼」をするので、奥歯(臼歯)は歯の表面が平らで、上下の歯が合わさるようになっています。一方、猫は肉食獣のため、肉を引き裂き、引きちぎるのに適した尖った歯をしています。猫の歯は、人間のように咀嚼するためのものではないのです。

 

猫の唾液のPHは人間と同じくらい

人間の唾液は中性〜弱酸性(PH6.8〜7)で、猫もほぼ同じくらいです。一方、犬の唾液はアルカリ性(PH8〜8.5)と言われています。そのため犬では歯石が多くついて歯周病が進行していくのに比べ、猫は歯石があまりついていないのに歯肉の炎症が進んでいくことになります。

 

猫の歯は何本?歯並びは?

 

人間の歯が、幼児の頃に乳歯から永久歯へと生え変わるように、猫も成長の過程で歯が生え変わります。

 

猫の乳歯は26本、永久歯は30本

人間の歯は、乳歯が32本、永久歯は32本(親知らず上下4本を除けば28本)です。それに対して、猫の歯の数は、乳歯26本、永久歯30本です。乳歯には、犬歯、切歯、前臼歯がありますが、後臼歯はありません。

 

乳歯が生えるのは、生後3週間くらいからで、だいたい2ヵ月くらいまでに上下の歯が生え揃います。そして、生後3ヵ月からは乳歯から永久歯へと生え変わり、6ヵ月くらいまでに全ての永久歯が生え揃います。このとき、乳歯にはなかった後臼歯が生えて、成猫の歯は全部で30本となります。

猫の歯は尖っていて噛み合わない

猫の歯は、肉を引き裂きやすいように先が尖っていて、ハサミ状の噛み合わせになっています。こうした特徴は猫、犬に共通して見られるもので、奥歯の上面が平らで、口を閉じれば上下の歯が合わさるようになっている人間の歯とは、大きく形状の異なるところです。

猫の歯にまつわる病気は?見つけるサインとは?

 

猫の歯および口の中の病気としては、次のようなものがあります。

 

歯周病

歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって、歯肉が炎症を起こした状態を「歯肉炎」と言います。歯肉炎が進行して、歯肉以外の歯周組織にも炎症が広がった状態を「歯周炎」、「歯肉炎」「歯周炎」を合わせて「歯周病」と言います。

歯が汚れている、歯茎が赤く腫れる、歯茎から出血する、歯が抜ける、口臭がするなどの症状が見られたら、歯周病が進行しているかもしれません。

 

歯肉口内炎

歯周病で起こる歯肉や歯槽粘膜の炎症にとどまらず、説明のつかない部位に炎症を起こす猫の「歯肉口内炎」。早いと1歳未満で発症し、徐々に悪化していきます。人間の場合は、口内炎ができると不快な痛みを感じますが、猫の場合は初期の症状が口臭だけであることが多く、病状が進行するにつれて口をぺチャぺチャ、モグモグさせるようになり、よだれが多くなったり、ドライフードを嫌がったり、前足で口を引っ掻く仕草を見せるようになったりします。重度になると痛みを強く感じるようになり、食事やあくびをするときに悲鳴を上げることもあります。

 

この病気がなぜ起こるのか、はっきりした原因は分かっていませんが、口腔内細菌が病状の悪化に関係しているのは明らかなので、歯周病の予防と早めの治療が重要だと考えられます。

 

吸収病巣

歯周病治療のためにレントゲン撮影をした際、歯の根っこが溶けている「吸収病巣(きゅうしゅうびょうそう)」という病気を発見することがあります。原因ははっきり分かっていませんが、この病気は進行性で悪化すると神経が露出して痛みを伴うようになるので、抜歯が必要になります。

 

 

ちなみに、猫には虫歯はみられません。歯の形状的に虫歯菌が付着しにくいことが要因と考えられますが、犬にはまれに虫歯が発生するケースがあります。その原因ははっきり分かりませんが、犬は猫に比べて飼い主さんが口に含んだ食べ物を分けてもらう機会があることが多く、その際、唾液を介して虫歯菌をうつしてしまうことが関係しているのかもしれません。

 

歯の病気を予防するためには?

 

猫の歯の病気で原因がはっきり分かっているのは、歯周病です。歯にこびりついた歯石の表面に付着した歯垢が歯肉への細菌感染を引き起こし、歯肉炎、歯周炎という歯周病を進行させてしまうのです。

 

毎日の歯磨きが大事

肉食獣の猫は、捕らえた獲物の生肉を切り裂いて噛むのに適した形になっていますが、ペットとして室内で飼われる猫の食事の主流はキャットフードかと思います。歯を使って咬み裂くことがほぼないため、歯に汚れが溜まりすい食生活になっているのです。

そこで、猫にも必要なのが、毎日の歯磨き。犬に比べると、まだまだ猫の歯磨きを習慣にしている飼い主さんは多くないようですが、大切な家族である猫に元気で長生きしてもらうために、子猫のときから歯磨きを習慣にしてほしいものです。

 

病院での定期的な歯石取りも必要

歯垢や歯石の除去は、歯の表面の見える部分のケアだけでは、十分ではありません。歯と歯肉の間の歯周ポケットの汚れを取ることが、歯周病予防には肝心なのです。そのため年に1回は、動物病院で歯科検診を受けておきましょう。

なお歯石の除去は、獣医師が全身麻酔のもとで行う専門的な治療です。動物病院で受診しましょう。

 

 

最近、愛猫の食欲がない口臭が強い、しきりに口の周りを気にしている…。そんな様子に気づいたら、もしかしたら歯のトラブルが原因かもしれません。愛猫の口の中をよく観察して、歯や歯茎の色などをチェックしてみましょう。

荻窪ツイン動物病院 院長

町田 健吾

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