高いところにピョンと飛び乗ったり、かと思えばヒラリと飛び降りたり、細い柵の上をヒョイヒョイと事もなく歩いたり……。猫は驚くような運動神経を見せてくれますよね。
でも、運動神経がいいと言えば、犬だってそうです。ただし、得意分野はいろいろと違うよう。

これらの違いは、いったいどうして生まれたのでしょう?実は、進化の過程を見ると、その謎が解けるのです。

 

犬と猫はもともと同じ祖先だった!

「犬派? 猫派?」なんて言われるように、よく真逆の存在として扱われる犬と猫ですが、実はもともとの祖先は同じだったんです。それはイタチに似た、「ミアキス」と呼ばれる生き物。最初は同じ生き物だったのに、どうしてこんなに違ってしまったんでしょう?

それは、生きるのに選んだ場所のため。平原で暮らすことを選んだものは、のちに犬となり、森で暮らすことを選んだものは、のちに猫となったのです。そして、それぞれの場所で暮らしやすいよう、運動能力が進化していったのです。森の中では、高い木に登ったり、飛び降りるなどの「上下運動」ができなければなりません。現在でも猫は木やキャットタワーに登って活発に上下運動をしますが、犬は高いところには登れませんよね。それは、平原ではそういう能力は必要なかったからです。高いところに登れない犬を上から得意げに見下ろす猫……。そんな光景がよく見られます。

ちなみに猫は、自分の体長の5倍の高さまでジャンプできるといいます。これは、人間にたとえるとビルの3~4階まで一気にジャンプするようなもの。まるでスーパーマンですね。(古い?)

また、草木が生い茂る森の中では、物音を立てると獲物にすぐ気づかれ、巣の中などに逃げられてしまいます。ですから大勢でなく、ひとりで静かに獲物に忍び寄るという狩りの方法が適しています。猫が物音を立てずに歩けるのは、肉球が音を吸収するためと、爪が引っ込められるという特徴からですが、ここにも犬と猫の違いがあります。犬は、爪が引っ込められず出っ放しです。これは、爪がしっかりと出ていたほうがキック力が生まれ、速く長く走れるからです。馬のひづめと同じ原理です。当然、走る音はうるさく、相手にすぐに気づかれてしまいますが、もともと平原ですから、追いかける姿は丸見えです。相手に気づかれるのは百も承知、気づかれて逃げられても、相手が疲れ果てるまでとことん追い詰める、そのためには1匹でなく大勢で追いかけたほうが有利……。犬の狩りは、そのような理屈です。1匹の獲物をしとめるのに10㎞走ることもザラといいます。

猫は、瞬発力はありますが、犬のように長時間は走れません。猫の狩りは、そろりそろりと獲物に忍び寄って、飛びかかるその一瞬で決まります。つまり、猫は短期決戦、犬は持久戦で獲物をしとめるのです。犬と猫の運動能力の違いは、すべてこれに由来します。ですから、どっちのほうが運動神経がいい、と決めることはできません。それぞれに得意分野が違うのです。

ちなみに、チーターは猫科なのに珍しく爪が出っ放しです。これは犬と同じく走って獲物を追いつめる狩りの仕方をするため。静かに忍び寄るよりも、走って獲物をしとめる方向に進化したというわけです。

 

優れたハンターの技が、現代ではオマヌケに映ることも

獲物を狙う猫

このように優れたハンターとしての能力を進化させていった猫ですが、飼い猫として可愛がられるようになった現代では、オマヌケな行動としてうつることもあります。

たとえば、何かに飛びかかろうとするとき、姿勢を低くしてそろりそろりと忍び寄る姿。野生時代の環境では、草が生い茂っていたため、姿勢を低くすれば姿を隠すことができましたが、家の中では丸見えです。でも猫には、野生時代からの根強い習性が残っているので、そうせずにはいられません。「こうすれば見えないニャ」とでも思っているのでしょうか(笑)。

また、獲物に飛びかかる前、おしりをフリフリと振るしぐさ。あれは実は、左右の後ろ足を交互に踏みしめて、飛びかかる角度などを調整しているのですが、これもまた丸見えのため、飼い主には「かわい~♡」しぐさにしか見えません(笑)。このように、現代の飼い猫には「意味のない」習性になってしまったものがあちこちに垣間見えるのも、猫と暮らす醍醐味かもしれません。

 

 

猫の歴史に関するにゃんペディア記事

猫と人間との関係の歴史に関する記事もあわせてご覧ください。

□イエネコ:「猫はどこから来たの?イエネコの歴史とルーツ

□ 世界史:「神か悪魔か。人間に翻弄された猫の歴史とは? <世界編>

□ 日本史:「猫と日本人。いつから猫は日本にいたの? <日本編>

□ 源氏物語:「猫が引き起こした大事件 ――『源氏物語』と源氏絵

□ 古典:「古典『猫の草子』に登場する猫ちゃん

□ 文学:「【文学】鼠草子絵巻に登場する猫ちゃん 

□ 物語:「忠義な猫の物語

□ 進化:「猫が猫になったとき。猫の進化の歴史とは?

□ 分類:「猫を科学的に「分類」するとどんな位置づけなの?どんな仲間がいるの?

 

猫の気持ちに関する記事

猫の気持ちに関する記事をご一読いただき、うちの子との絆を、より一層深められてください。

●にゃんペディアの専門家監修記事

■ 猫の夢:猫も夢を見るの?

■しっぽ:しっぽを振るときの猫の感情とは?

■鳴き声:鳴き声から読み取れる、猫のきもち

■サイン:猫が甘えたいときのサインを見逃さない!

■寝姿:寝相・寝姿からわかる猫の気持ち

■ゴロゴロ音:ゴロゴロという音に隠された猫のきもち

■しぐさ:可愛い仕草からひも解く、猫ちゃんの気分とは

■天気:お天気で変わる猫ちゃんの気分

■見つめる:猫がじっと見つめてくるとき、一体なにを考えているの?

■怒り:猫ちゃんの怒りのサインを見逃さないで! (本稿)

■寝場所:猫の寝る場所からわかる、猫のあなたへの好感度

 

●ペットと私の暮らしメモの獣医師監修記事

□ 猫が「ふみふみ」する理由は?仕草で読み解く猫の気持ち

□ しっぽの動きに込められた猫の気持ち!動きのパターンを解説

□ 猫の「ゴロゴロ」音の意味は?鳴き声が表す気持ち

□ 鳴き声から感じる猫の気持ちとコミュニケーション方法

 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

 ☞例えば、下記のような「猫の行動」から、考えられる病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

□ 足をあげる

□ 歩かない

□ ふらつく

□ 性格が変わる

□ グルーミングが減った

□ グルーミングが増えた

 

他にも下記のような「気になること」から、病気やケガを調べておきましょう。

 

【治療】

■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり 

【症状】

■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い ■後遺症が残ることがある

【対象】

■ 子猫に多い ■ 高齢猫に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い  

【季節性】

春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】

■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつるか】

■ 犬にうつる ■ 人にうつる ■ 多頭飼育で注意 

【命への影響度】

■ 命にかかわるリスクが高い

【費用】

■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防】

■ 予防できる ■ワクチンがある

日本動物科学研究所

富田 園子

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