中高齢の猫で発生することの多い甲状腺機能亢進症は、甲状腺からのホルモンが過剰に出過ぎてしまう病気です。一見元気そうにみえてしまう症状でも、実は病気のサインかもしれません。
甲状腺機能亢進症は、多くの場合、お薬によるコントロールが可能な病気で、2021年には猫用の治療薬も発売されました。しかし、知らぬ間に病気が進行してしまうと、腎臓や心臓へも影響を及ぼし、命に関わる危険性も出てきます。そのため、早期発見・早期治療がとても重要です。
猫の甲状腺機能亢進症の「症状」「診断」
◆ どんな病気? 中高齢の猫ちゃんは要チェック!
甲状腺は気管のすぐ近くにある器官で、生きるために重要な「甲状腺ホルモン」を分泌しています。甲状腺ホルモンは、新陳代謝を促進させたり、脈拍数や体温などを調節して、エネルギーの消費を一定に保つ役割を担っています。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺過形成や甲状腺腫瘍などが原因で、甲状腺が活発に活動し、血液中に甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺ホルモンが過剰になると、代謝が良くなりすぎてしまうため、たくさん食べるのに痩せてしまったり、目をギラギラとさせたり、性格が攻撃的になったりする症状がみられます。
これらの症状は、病気によるものと認識されにくく、「高齢なのに元気だな」と捉えられがちなので、発見がなかなか難しい場合があります。
中高齢の猫ちゃんを飼っているご家族は、以下のような「症状」がないか、ときどきチェックしてみてください。
食欲が増す
体重が減る
水をよく飲み尿の量も多い(多飲多尿)
活発で落ち着きがなくなる
攻撃的になる
嘔吐、下痢をする
毛が抜けたり、毛艶が悪くなる
目がギラギラしている
◆甲状腺機能亢進症の「診断」
これらの症状がみられた場合、一般的な血液検査に加えて、甲状腺ホルモンの測定を行います。そこでホルモンの値が異常に高い場合、甲状腺機能亢進症と診断されます。
また、甲状腺機能亢進症は肥大型心筋症や高血圧症を併発することがあるため、心臓の検査(レントゲンやエコーなど)や血圧測定なども行う場合があります。
◆甲状腺機能亢進症の「治療」
甲状腺機能亢進症は、内服薬による治療が中心です。またこの他に、食事療法や外科手術が選択される場合もありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
猫の甲状腺機能亢進症の「薬」
●抗甲状腺薬「チアマゾール」
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬で、ホルモンを適切な量にコントロールします。
甲状腺そのものを治すための薬ではないため、一般的には生涯にわたり飲み続けることが必要です。
代表的な抗甲状腺薬:チロブロック錠(住友ファーマアニマルヘルス)
はじめて猫用に承認された抗甲状腺薬で、小さな錠剤のため比較的飲ませやすい形をしています。
1.25mg錠と2.5mg錠の2つのサイズがあり、症状や身体検査、血液検査の結果などを総合的に判断して投与量を調整します。食事と一緒でも、お薬のみで与えることも可能です。
適正な薬の量を確認・調整するため、飲ませ始めの3ヶ月間は、2〜4週間ごとに血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定する必要があります。薬が安定して効いているようであれば、その後は2〜3ヶ月ごとに定期検診を受けるのが一般的です。
使用上の注意
・副作用として、嘔吐・下痢、顔面の痒み、むくみ、元気消失などがみられることがあります。
・血液の病気や、血液凝固障害がある猫、自己免疫疾患のある猫、重度の腎臓病や肝臓病のある猫、妊娠・授乳中の猫には投与できません。
・慢性腎臓病を併発している場合、薬を飲ませることにより悪化する可能性があります。獣医師とよく相談してから投薬を開始しましょう。
・妊娠・授乳中の方はできるだけ薬や排泄物に触らないようにしてください。やむを得ず投薬をする場合には、手袋を着用し、直接触れないように注意しましょう。
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福永 めぐみ
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