猫の体には人間と同じように、副腎や膵臓、甲状腺、下垂体などのホルモンを分泌する器官があります。

これらの器官から分泌されるホルモンの異常によって起こる病気を「内分泌疾患」と呼びます。

内分泌疾患は、内分泌腺の機能(はたらき)が亢進または低下することにより、ホルモンの分泌が過剰になったり不足したりすることで、さまざまな症状が現れます。

そのため、内分泌疾患が疑われる場合には、ホルモンの濃度を測定したり負荷試験などで内分泌学的検査を行うことで、ホルモンの分泌や抑制に異常がないかを調べます。

ここでは、猫の代表的な内分泌疾患における血液検査について解説します。

 

 

※参考基準値は、測定方法や測定機器により異なります。 本記事に記載の参考基準値は、富士フイルムVETシステムズ株式会社の値を参考にしました。

 

 

 

甲状腺機能亢進症 「甲状腺ホルモンの測定」

甲状腺機能亢進症は、猫の代表的な内分泌疾患です。

中高齢の猫で多く発症しますが、症状が加齢に伴う体の変化に似ている部分があることから、診断が遅れてしまう場合があります。

 

「食欲はあるのに最近痩せてきた」「怒りっぽくなった」などの異変がみられたときには、この病気のサインの可能性があります。

 

甲状腺機能亢進症は、8歳以上の猫で発症しやすく、どの品種の猫でもかかり得る病気です。   主な症状は、体重減少、削痩(さくそう)、嘔吐下痢性格の変化(興奮や攻撃をしやすくなった)、毛艶の悪化などさまざまです。

 

病気が進行すると、急性の甲状腺中毒のような状態に陥り、頻脈や不整脈がでたり、呼吸が荒くなったり、失神や視覚喪失などを引き起こす可能性があるので注意が必要です。(甲状腺クリーゼ)

身体検査や問診等でこの病気が疑われたら、一般的な血液検査や画像検査とあわせて甲状腺ホルモンの測定を行います。

 

項目 参考基準値 結果
T4 0.6〜3.9μg/dL 高値→甲状腺機能亢進症

 

高齢の猫では、

症状がみられなくても、健康診断等でT4の値を測定することで病気の早期発見

につながります。

 

また、この病気を発症している猫の多くは、慢性腎臓病を発症しやすい年齢でもあります。

しかし、甲状腺機能亢進症を併発していると、血液検査で慢性腎臓病を発見しにくくなってしまうケースがあります。

そのため、甲状腺機能亢進症の治療を開始した後は、腎臓の検査も含めた定期検診が重要となります。

 

 

 

糖尿病  「長期血糖コントロールマーカーの測定」

糖尿病は犬や猫で内分泌疾患のひとつです。

健康な動物の血糖値は、膵臓で産生・分泌される「インスリン」というホルモンによって一定に保たれていますが、何らかの原因によりこのインスリンが不足したり欠乏することで、血糖値が慢性的に高くなってしまうのが糖尿病です。

 

とくに高齢の肥満体型の猫は注意が必要です。

 

糖尿病の主な症状として、尿量飲水量が増えたり多飲 多尿)、食欲の亢進などがみられ、 さらに進行するとケトアシドーシスという危険な状態に陥ります。

ケトアシドーシスでは、元気や食欲の消失、嘔吐、下痢、脱水などがみられ、昏睡状態になると命に関わる危険性があります。

また、猫では踵をついて歩く特徴的な歩様がみられることもあります。

 

糖尿病の診断には、血糖値の測定、尿検査に加え、長期血糖コントロールマーカーの測定などを行います。

長期血糖コントロールマーカーは、過去2週間程度にわたって血糖値が高い状態が続いている場合に上昇するため、一時的な血糖値の変化の影響を受けずに糖尿病を診断することに優れている検査です。

長期血糖コントロールマーカーには、糖化アルブミンもしくはフルクトサミンを用いることが多く、診断時のみでなく、治療によって血糖値が適切にコントロールされているかを把握する指標にもなります。

 

 

項目 参考基準値 結果
糖化アルブミン 6.7〜16.1% 高値→糖尿病
フルクトサミン 172〜394μmol/L 高値→糖尿病

 

 

内分泌疾患はほとんどが慢性疾患であり、生涯にわたり治療や通院が必要となります。

 

病気が進行してしまうと、命に関わる恐れもあるため、疑わしい症状が見られた場合にはホルモンの検査を含めた各種検査を受けることで、病気の早期発見・早期治療につながります。

 

 

参考

SA Medicine BOOKS 犬と猫の検査・手技ガイド2019 私はこう読む/EDUWARD PRESS

動物看護専門月刊誌 動物看護 Oct.2023 /EDUWARD PRESS

富士フィルムVET システムズ株式会社

https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/examination/biochemistry

 

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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