うんちは健康のバロメーター
うんちは健康のバロメーターと言われています。 猫の便は人間と同じように、胃腸の消化吸収のはたらきによって作られます。 食べ物は胃・小腸・大腸を通過する過程で次第に細かく分解され、必要な栄養素を吸収したのち、体にとって不要なのもを便として排出します。 そのため、便は何を食べたかによってその色や形などが変わりますが、愛猫の便を毎日見ていると、健康なのか異常なのかに気づきにくい場合もあります。 また、からだの大きさや消化吸収能力によって、同じフードを食べていても便の量や太さは異なります。
いつもと明らかに違う便が出たときに、「あれ?いつもと違うな?」と気づいてあげることが、体調不良や病気を発見する手がかりとなるので、まずは猫の健康な便の状態を把握することがとても大切です。
ここでは、おうちでできるうんちのチェックポイントについて解説します。
おうちでできるうんちのチェックポイント
1.硬さ
糞便の硬さは、主に便中の水分の量で決まります。
「やや湿り気があり、カチコチではないがつまみ上げても形が崩れない程度の硬さ」がよいうんちの目安です。
排便したばかりのときは、猫砂が周りにつく程度の湿り気があります。 カチコチな便やポロポロの便は便秘気味の便、つまみ上げたときに形が崩れてしまう便は軟便、形がなく泥状や水様性の便は下痢の便、とおおまかに分類することができます。
2.形
「細長い楕円形やコロコロの便」がよいうんちの目安です。
猫は人に比べて腸の長さが短いため、人であれば消化できる食物繊維などがそのまま便に出てきてしまうことも珍しくありません。
3.におい
食事内容によっても変わりますが、腸内細菌が便のにおいに大きく影響します。人や犬の便と比べるとにおいが強いです。
食事は変えていないのにいつもと違うにおいがしたり、ツンとする酸っぱいにおいがするときなどは、お腹の不調のサインの可能性があります。
4.色
「茶褐色〜暗褐色」がよいうんちの目安です。
食べたものによって多少ばらつきがあり、グルーミングにより毛を飲み込んでいる場合には、消化されずにそのまま便にでてくることもあります。
5.回数
1日1〜2回の排便が理想的です。
食事内容や運動量によっては1日空くこともあります。
●糞便スコア
人では、英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱した、便の形状と硬さで7段階に分類するブリストル便スコア(Bristol Stool Form Scale)という指標が、便秘や下痢の診断項目のひとつとして用いられています。
近年、犬や猫でも糞便スコアが用いられるようになり、いくつか種類がありますが、以下に示す「PURINA糞便スコアチャート」では
スコア1:便秘気味の便
スコア2:理想的な便
スコア3〜7:下痢気味の便
に分類することができます。
動物病院に行く際は、便の写真を持参したり、糞便スコアに照らし合わせるとどのスコアの便なのかを伝えることで、診断の手がかりとなります。
こんなうんちは要注意
便が硬い、排便が苦しそう
硬く水分を含んでいないカチコチの便が出る場合、便秘の可能性があります。
食事内容や水分の摂取量によって便秘が起こることもありますが、何らかの原因で消化管の動きが悪くなっていたり、腎臓病をはじめとする体が脱水しやすい病気のサインの可能性もあります。
また、便秘が続くと、大腸(結腸)に便が溜まり、直腸の神経に異常をきたす「巨大結腸症」になりやすくなります。
2〜3日以上便秘が続く場合には、はやめに動物病院を受診しましょう。
下痢が続いている
下痢(水様便〜軟便)を起こす原因は、大腸性のものと小腸性のものに分けられます。
大腸性の下痢
大腸性の下痢では、ゼリー状の粘液便が出たり、排便回数が増えたり、便に鮮血が混じったり、排便姿勢をとっても便が出ない「しぶり」がみられたりすることが特徴です。
小腸性の下痢
小腸性の下痢では、「しぶり」はなく、下痢が断続的に出て量も多いのが特徴です。小腸で出血を起こしている場合には、便に混ざって出てくる血は黒くてにおいのきついものになります。 とくに、2〜3週間以上慢性的に下痢が続いているときや、真っ黒なタール状便(メレナ)が出ているとき、体重が減ってきているときなどには、重篤な病気が背景にある場合も多いので、すぐに動物病院を受診しましょう。
便の色がいつもと違う
白・灰色
便の色をつくる色素(胆汁色素)の流れが悪く、消化吸収されなかった脂肪が便に出 てきている状態です。脂肪の摂り過ぎによる消化不良や病気の可能性があります。
黒色
胃や小腸から出血している可能性があります。(鉄剤やサプリメントによって便が黒くなる ものもあります。)真っ黒のドロドロとしたタール状の便(メレナ)がみられた場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院を受診しましょう。
明るい赤色(鮮血)
大腸から出血している可能性があります。数日以上つづく場合には、動物病院を受診しましょう。
便に虫が出た
便に寄生虫やその一部のようなものがみられた場合には、便を持参の上すみやかに動物病院を受診しましょう。 また、症状がなくても、何らかの寄生虫に感染していることも少なくありません。
健康な猫でも、定期健診の際などには糞便検査を行うことで、病気の早期発見につながります。
便に毛や異物が混ざっている
グルーミングをすると、毛が便に混ざって出てくることがあります。少量であれば問題ありませんが、とくに長毛の猫などで過剰なグルーミングで飲み込んだ毛が、お腹の中で塊を作ってしまう「毛球症」を起こす可能性があります。毛球症は腸閉塞を起こすリスクがあるので、日頃からブラッシングをするなど、過剰な毛を飲み込ませないように気をつけましょう。
また、タオルや毛布の切れ端などの異物が便に混ざって出てくる場合、布製品をしゃぶって時にそれを飲み込んでしまう「ウールサッキング」の可能性があります。猫では比較的よくみられる行動ですが、過度な場合には、ストレスやフラストレーションが溜まったときに気持ちを落ち着かせるため、無目的な行動を繰り返してしまう「常同障害」のひとつとして捉えられます。
もし、タオルの繊維などが肛門から出ていたら、無理に引き抜くと腸粘膜を傷つけてしまうおそれがあるので、すみやかに動物病院を受診してください。
便はおうちでもチェックすることができる健康のバロメーターです。
猫は品種やからだの大きさ、消化能力の違いによって、便の量や状態、回数が変わります。
急ににおいや形に変化が見られたり、普段は毎日排便があるのに2〜3日排便間隔があいたり、便の異常に加えて食欲低下や嘔吐がみられる場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。
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福永 めぐみ
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