猫は人間のように、痛みや少しの体の異変を言葉で伝えることができない上、体調不良を隠すのが非常に上手な動物です。そのため、飼い主さんが愛猫の日々の様子をよく観察し、病気のサインを見逃さないことが、病気の早期発見につながります。

しかし中には、初期症状がほとんどない、あるいは他の病気と見分けがつきにくい病気も多く存在します。そのため、定期的な健康診断を受けることが非常に重要です。

 

今回は、初期症状がわかりにくいけれども遭遇率の高い猫の病気をいくつかご紹介します。

 

 

1. 慢性腎臓病

猫は慢性腎臓病にかかりやすい動物です。高齢になるにつれて、発症リスクが高まりまります。

腎臓は、体内の老廃物を濾過して尿として体外に排出する役割をもつ重要な臓器です。慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、基本的に一度失われた機能は回復させることができません。そのため、早期発見・早期治療により、進行を極力遅らせることが重要です。

 

〇 早期発見が難しい理由

腎臓はバックアップ能力が非常に高い臓器のため、腎臓全体の機能の75%が失われるまで、目立った症状が現れないことが多いとされています。そのため、日頃から愛猫の様子をよく観察するとともに、定期的な健康診断(血液検査・尿検査など)を受けることも重要です。

 

 注意すべきサイン

・水を飲む量が増えた

・尿の量が増えた、尿の色が薄くなった

・食欲が低下している

・毛艶が悪くなった

・痩せてきた

・元気がない

・口臭がきつくなる(アンモニア臭)

・嘔吐をしている

 

 

 

2. 心臓病(肥大型心筋症など)

猫の心臓病の中で最も多い肥大型心筋症は、中〜高齢の猫に多くみられる病気です。心臓の筋肉(心筋)が肥厚してしまうことで、次第に心臓がうまく機能しなくなります。初期には症状がみられないことがほとんどで、突然、重篤な症状(呼吸困難、血栓による後肢麻痺など)が現れてはじめて気が付くケースも少なくありません。

 

猫の心臓病はどのような品種でも起こり得ますが、とくにアメリカンショートヘアメインクーンラグドールなどの品種は遺伝的な素因があるため注意が必要です。

 

〇 早期発見が難しい理由

心臓病は進行とともにさまざまな症状が現れるようになりますが、初期段階ではほとんど症状がみられません。また、猫は心拍数が速いこともあり、聴診時の心雑音も聴取しにくい傾向があります。

定期的に健康診断を受け、聴診に加えてレントゲン検査、超音波検査などを行い、心臓に異常がないかを確認することが早期発見につながります。

 

注意すべきサイン

・疲れやすくなった、遊びたがらない

・食欲が低下している

・呼吸が速い、口を開けて呼吸している

・舌の色が紫色になる(チアノーゼ)

 

 

 

 

3. 腫瘍(がん)

猫は高齢になるとともに、体のさまざまなところに腫瘍ができることがあります。中でも、悪性(がん)の場合は転移を起こしやすく、命に関わることもあります。また、内臓にできる腫瘍は画像検査を行わなければ早期発見が難しく、症状が現れたときにはがんのステージが進行しているケースも少なくありません。

 

〇 早期発見が難しい理由

皮膚などの体の表面にできる腫瘍は比較的発見しやすいですが、内臓や骨にできる腫瘍、血液の腫瘍などは初期症状が乏しく、進行してから異変に気づくケースも少なくありません。

また、定期的な健康診断は早期発見につながりますが、血液検査のみでは腫瘍は発見できません。血液検査と合わせて、レントゲン検査や超音波検査、CT検査などの画像診断を行い、病理検査によって診断が可能となります。このように、確定診断までにさまざまな検査を行う必要があることも、早期発見・診断が難しい要因の一つとも言えます。

 

注意すべきサイン

腫瘍にはさまざまな種類があり、できる部位や腫瘍の種類によって現れる症状もさまざまです。

・体にしこりや膨らみがある

・食欲が低下してきた

・体重が減ってきた

・元気がない

・嘔吐や下痢をしている

・排泄物や吐物に血が混ざる(血尿、血便、吐血など)

 

*口腔内の腫瘍

猫は口腔内の観察を嫌がる子が多く、口の中にできる腫瘍を発見するのが困難な場合があります。また、猫は歯肉口内炎も起こしやすく、難治性かつ慢性的なケースが多いことから、口腔内に腫瘍が併発していた場合に気づかれにくいことがあります。とくに、猫の扁平上皮癌は非常に進行が早いため、早期発見が重要です。

 

注意すべきサイン

・口を痛がる

・よだれが多くなる

・口臭がきつくなる

・フードの食べ方に違和感がある(片側の口で食べる、硬いものを避けるなど)

 

日頃から、猫の口の中をチェックするようにしましょう。口の周りを触るのを嫌がらない猫であれば、定期的に歯茎や舌の色、できものの有無などを確認するとよいでしょう。

 

 

 

 

4. 糖尿病

膵臓から分泌されるホルモンのひとつであるインスリンが、分泌されなくなったり、あるいは分泌されても働きが十分でないために、血糖値がコントロールできなくなる病気です。血液中の糖が多い状態が続くと、尿に糖が漏れ、糖尿病を発症します。

 

猫の糖尿病の初期症状は非常にわかりにくいとされています。

進行してしまうと、さまざまな合併症を引き起こし、命に関わる危険性もあるので注意が必要です。

 

注意すべきサイン

・よく水を飲む

・排尿の回数や尿の量が増える

・食欲が増す

・寝ている時間が多く元気がない

・よく食べているにもかかわらず体重が減る

・歩行障害(かかとを床につけて歩く、ジャンプができない)

 

さらに進行し、糖尿病性ケトアシドーシスという状態に陥ると、

食欲不振、嘔吐、意識がなくなる(昏睡)、脱水などを引き起こし、死に至る危険性があります。

 

糖尿病の原因のひとつに、肥満が挙げられます。

早期発見に努めると共に、体型管理や生活習慣を適切に維持することが予防につながります。

 

 

 

病気の早期発見のために

これらの病気は、明らかな症状が現れたときにはすでに病気が進行しているケースが少なくありません。

病気を早期に発見するためには、飼い主さんがご自宅でみている愛猫の「普段との違い」は非常に重要なヒントとなります。

 

〇 日々のスキンシップ

体をなでたりブラッシングをする際には、しこりがないか、痛がるところがないか、毛艶に変化はないかなどをチェックしましょう。

 

〇 生活や行動の変化

食欲、元気、飲水量、排泄の回数・量・質、遊び方や睡眠時間、毛並みの変化など、日々の生活の中での行動を日頃から気にかけておくと、わずかな異変にも気づきやすくなります。気になることがあれば、メモなどに記録して、動物病院を受診するときに獣医師に伝えましょう。

 

〇 定期的な健康診断

見た目だけでは発見できない病気はたくさんあります。とくに、言葉で体調の異変を伝えることのできない動物は、症状が現れる頃には病気が進行しているケースも少なくありません。病気の早期発見のためには、定期的な健康診断がとても重要です。とくに7歳を超えたシニア期の猫では、半年に一回以上の健康診断が推奨されています。

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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