人間ドックの検査項目としてもポピュラーなCT検査ですが、動物でもCT検査を行うことがあります。以前は大学病院や二次診療施設などでなければ行えなかった検査ですが、近年ではCT検査を実施できる施設も増えてきました。

 

ここでは、CT検査とはどのような検査なのか、どういう時に検査が推奨されるのか、また麻酔の必要性や注意事項などについて解説します。

 

 

CT検査とは

CTとは、「Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)」の略で、X線を用いた検査のひとつです。

 

ドーナツ型の機械の中に入り、X線装置が体の周囲360度をぐるりと回転しながら連続して撮影することで、たくさんの断面画像を得ることができます。ここで得られたデータから、3D(立体)画像を作成することで、体の中をより詳しく調べることができる検査です。断面にする画像の厚みは、撮影する部位や検査の目的によって設定されます。

 

主に、骨格や各臓器に異常がないかを調べたり、腫瘍を検出したり、手術の計画を立てる場合などに利用されます。目的によっては、造影剤を使うことでより詳細な検査結果を得ることができ、病態の診断や手術に必要な情報を的確に把握することができます。

 

 

 

CT検査でわかること

CT検査でわかる異常は多岐にわたり、頭部・肺・腹部臓器・骨などの異常を検出することに優れています。とくに、からだの各部位にできる腫瘍の位置や大きさを把握したり、癒着や転移がないかを確認したり、歯や骨の異常(骨折・脱臼・奇形など)を調べたり、門脈シャントや消化管内異物(誤飲・誤食)の確認などでよく用いられます。

このほか、手術前の精密検査や、他の検査で原因が特定できない体の異常を調べる目的などでも、CT検査は有用です。

 

CT検査が推奨される例

・お腹の中に異常があるとき

・口の中に異常があるとき

鼻炎や鼻出血が続いているとき

・腫瘍の転移がないかを確認したいとき

・急に立てなくなったり、後ろ足の麻痺がみられたとき など

 

CT検査でわかる主な病気の例

頭部:腫瘍(脳・眼窩・口腔・鼻腔)、内〜外耳炎、歯科疾患、骨折 など

胸部:肺疾患、腫瘍(肺への転移の有無) など

腹部:腫瘍、門脈シャント、消化管内異物、腸閉塞・重責、捻転(胃・消化管・脾)、尿路結石 など

脊椎・骨格:椎間板ヘルニア、腫瘍、骨折 など

 

 

検査にかかる時間は?麻酔は必要?

CT検査の撮影時間は10分程度ですが、全身麻酔が必要です。

検査中に猫が少しでも動いてしまうと画像にブレが生じてしまうため、動かないようにする必要があることに加え、呼吸の管理が必要な場合もあります。また、普段はおとなしい子でも、撮影時には自動で台が動くので、びっくりして動いてしまったり、中にはパニックになってしまう子もいます。安全かつ正確な検査を行うためには、全身麻酔が必要となります。

 

ただし、基礎疾患のある猫や高齢の猫など、麻酔のリスクが高い場合には、限られた条件の中で麻酔をかけずにCT検査を行うケースもあります。

 

 

 

X線検査・エコー検査・MRI検査との違いは?

X線検査もCT検査も、X線を利用した検査ですが、得られる画像は大きく異なります。

 

X線検査

X線検査は、一方向から動物の体にX線をあてて撮影するため、画像は2D(平面)になります。それに対しCT検査は、体の周りからX線をあて、さまざまな角度から撮影をすることで、3D(立体)の画像を作成することができます。

また、CTの断面図は、数mm単位で作成することができるため、観察したい部位をより細かく切り分けて評価することができ、X線検査よりも細かい体内の構造や異常を検出しやすくなります。特に血管の奇形や腫瘍などの検出、手術プランの作成などにおいてとても有用です。

X線検査はほとんどの場合で麻酔や鎮静をかけずに行うことができますが、CT検査は基本的に全身麻酔が必要となることも違いの一つです。

 

 

エコー(超音波)検査

エコー(超音波)検査は、CTやX線検査とは原理が異なります。エコー検査は、プローブと呼ばれる装置を体にあてることで、体に向けて超音波を送信し、はね返ってくる反射波を画像化することによって体内の状態を調べる検査です。放射線を使う検査ではないので、被ばくの心配はなく、基本的には麻酔も必要ありません。エコー検査は臓器の内側を調べるのに向いているため、心臓病を詳しく調べたり、腫瘍や結石を検出したり、消化管の粘膜や内腔の状態を調べたりすることができます。

 

 

MRI検査

MRI検査は、磁石の力を利用して体の断面を撮影する検査です。CT検査で用いられるX線は、骨を通過しにくいため、骨に囲まれた部分の検査は得意ではありません。そのため、犬や猫においては、脳や脊髄・神経などを調べる検査としては、MRI検査が非常に有用です。CT検査と同様に全身麻酔が必要となり、CTと比較すると検査時間が長くかかります。

 

CT検査を受ける際の注意事項は?

・全身麻酔が必要な検査のため、麻酔リスクが伴います。

・造影剤を使用する場合には、造影剤に対する副作用がリスクとして挙げられます。

・CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくは避けられません。

 

※CT検査では撮影する部位や撮影方法にもよりますが、人での検査において1回あたり5〜30mSv(ミリシーベルト)の放射線を浴びるとされており、猫では体格により多少の差はありますが、人と比べて同じくらいか、より少ない放射線量となります。100mSv以下の放射線では、発がんリスクを増加させることは実証されていないことから、CT検査使用する放射線量は少量であり、適切な条件下では安全であると考えられています。)

 

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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