X線検査とは、放射線の一種であるX線を利用して体の中を調べる検査です。侵襲性が少なく、一般的には麻酔をかけずに行うことができる検査(鎮静等が必要となるケースもあります)で、猫の体の状態を知るためにとても有用な検査のひとつです。

X線を発見したレントゲン博士(Wilhelm Conrad Röntgen)にちなんで、「レントゲン検査」や「レントゲン写真」としても広く知られています。

X線検査では、胸部や腹部、四肢など全身のさまざまな臓器や部位の撮影を行うことで、病気やケガの検出に役立ちます。また、スクリーニング検査(→病気の有無を振り分ける検査)のひとつとしても、重要な検査です。

 

 

X線検査のしくみ

X線が体に照射されると、体を透過して(通り抜けて)外に出てくるものと、通り抜けずに体に吸収されるものとに分かれます。その透過と吸収の差を、白〜黒のコントラストで表したものがX線画像です。

X線が透過した部分は黒、吸収された部分は白で表されるため、空気を多く含む肺などは多くのX線が通り抜けるので黒っぽく、骨などの密度の高い組織ではX線がよく吸収されるため白っぽく表されます。

このX線の「透過性」を利用して、臓器の位置、形、大きさ、状態、腫瘍の有無などを判断することができます。

さらに、人間の健康診断でもよく使用されるバリウムなどの「造影剤」とよばれるものを使うことで、白と黒のコントラストをよりはっきりとつけることができます。造影剤は、主に消化管(胃・腸など)や、尿路(尿管・膀胱・尿道など)をよく調べたい場合などに、用いられます。

 

 

X線検査でわかること

① 胸部 X線 撮影

胸の中を調べるための検査です。

心臓の大きさ・形、気管・気管支・肺の状態などを確認します。

健康診断以外では、心臓病の検診時や咳が出ているとき、呼吸に異常があるときなどにも実施されます。

胸部 X線 検査は、主に動物が息を吸ったタイミングで撮影します。

気管虚脱などでは、息を吸った時と吐いた時、両方の画像を比べる必要がある場合もあります。

 

胸部X線 右ラテラル像(横向き)

 

 

胸部X線 VD像(仰向け)

 

 

② 腹部 X線 撮影

お腹の中を調べるための検査です。

お腹の中の臓器(・小腸・結腸・肝臓脾臓腎臓膀胱など)の位置や形に異常がないか、消化管内の様子や、お腹に異常なガスがないか、腫瘍や腹水がないか、結石ができていないか、などを確認します。

異物の誤食が疑われる場合にも有用です。

また、妊娠している動物では、胎子の頭数や発育の状態を確認することもできます。

 

腹部 X線 検査は、主に動物が息を吐いたタイミングで撮影します。

胃や腸の中に食物があると正確な検査を行いづらいため、緊急時以外では、

絶食の状態での撮影が望ましいです。

 

<異物を誤食してしまったかも?>

異物を誤食してしまった可能性がある場合には、体内の「どこ」に「どのような」異物があるのかを調べるために、エコー検査などとあわせてX線検査を行うことがあります。

X線画像には「写るもの」と、「写らないもの」があるため、X線検査だけで必ずしも誤食した異物を特定できるわけではありませんが、診断や治療をする上で重要な手がかりとなるケースは少なくありません。

 

(X線画像に写るもの、写らないものの例)

X線画像に写るもの:金属、石、骨など

X線画像に写らないもの:プラスチック、ビニール、ゴム製品、野菜や果物の種・芯など

 

 

③ 四肢や脊椎(背骨)の撮影

四肢に痛みがあるときや歩き方に違和感があるときなどに、に異常がないかを調べる検査です。

歩行の異常は、骨や筋肉の異常からおこる整形疾患や、脊髄神経の異常からおこる神経疾患によっておこることが多く、X線検査では骨折などの骨の異常がないかを調べたり、脊椎(背骨)に異常がないかを調べたりする目的で用いられます。

この他にも、頭部の撮影や、歯科治療のための顎や歯の撮影などがあります。

 

 

X線検査の撮影方法

X線検査は、

3D(立体)の体を、2D(平面)の画像として描出するため、基本的には同じ部位でも2〜3方向以上の撮影が必要

です。

胸部や腹部のX線撮影では、右側を下にしたものと、仰向けもしくはうつ伏せのもの、の最低でも2枚以上の撮影が必要となります。

基本的に、胸部と腹部は分けて撮影します。

撮影したい部位や動物の状態によっては、左側を下にしたものなども個別で撮影が必要となるので、1回のX線検査で何枚もの画像が必要となります。

また、体格によっても必要な枚数は異なります。

なお、緊急の場合を除き、腹部のX線検査を受ける際は、絶食で受診されることをおすすめします。

また、骨のX線検査では、異常があると疑われている肢と、正常な肢の両方を撮影し、比較することで診断に役立てます。そのため、最低でも3〜4枚の撮影が必要となります。

 

 

検査にかかる時間は? 麻酔は必要?

X線検査の撮影時間は非常に短時間です。

しかし、正しいポジションで撮影をしないと正確な診断ができないため、動物の性格にもよりますが、

ポジショニング(正しい位置や向きで撮影をするための位置決め)には少し時間を要する

ことがあります。

長くかかっても、10~15分程度で撮影を終えられることが一般的です。

撮影後、得られたX線画像を見て異常の有無を判断する「読影」という作業に移ります。

通常、X線検査のために麻酔をかける必要はありません。しかし、性格や体格などにより、保定だけでは撮影が難しいと判断した場合には、飼い主さんとご相談した上で鎮静をかけるケースもあります。

 

 

 

X線検査のリスクは?

X線は放射線の一種であり、大量に被曝すると数週間〜数年後に体に悪影響を及ぼすといわれています。

猫のX線検査での被ばく線量はとても少なく、短期間の間に複数回検査を行った場合でも、体への影響はほとんどないとされています。

例えば、人の胸部X線検査では1回0.1mSv以下、CT検査では20mSv以下の放射線を浴びるとされています。

猫では、体格により多少の差はありますが、人と比べて同じくらいか、より少ない放射線量となります。

1回の放射線量が200mSvを越えなければ、体への影響はないとされていることから、X線検査での被ばくの心配はほとんどないと考えられています。

また、意外と知られていませんが、放射線は自然界にも存在しています。地域にもよりますが、私たちは1年間に大地から0.46mSv(ミリシーベルト)、宇宙から0.38mSv(宇宙線)、その他空気などから1.5mSvの被ばくを受けています。飛行機に頻繁に乗る方は、地上の数倍の宇宙線を浴びていることになります。

これらのことを踏まえても、動物のX線検査における危険性は、適切に行えば極めて低いものであると考えられます。

 

 

CT、エコー検査との違いは?

● CT検査

CT検査もX線を利用した検査のひとつです。

X線検査は、一方向から動物の体にX線をあてて、体の中を2D(二次元)の画像にしたものです。

それに対しCT検査は、専用のベッドに寝た状態でドーナツ型の検査装置に入ることで、体の周りからX線をあてて、3D(三次元)の画像にすることができる検査です。

 

 

CTの断面図は、数mm単位で作成することができるため、

観察したい部位をより細かく切り分けて評価することができ、X線検査よりも細かい体内の構造や異常を検出

しやすくなります。

特に血管の奇形や腫瘍などの検出に役立ちます。

CT検査は動物が動いてしまうと正確な検査ができず、場合によっては一時的に呼吸を止めたり、造影剤を血管から流して撮影する必要があるため、

基本的には全身麻酔が必要

となります。

X線検査やエコー検査で見つかった異常をより詳しく調べたいときや、手術の計画を立てる際などに有用です。

 

 

●エコー(超音波)検査

 

X線検査とあわせて行われることも多いエコー(超音波)検査は、X線とは原理が異なります。

エコー検査は、プローブと呼ばれる装置を体にあてることで、

体に向けて超音波を送信し、はね返ってくる反射波を画像化することによって体内の状態を調べる検査

です。放射線を使う検査ではないので、被ばくの心配はなく、基本的には麻酔も必要ありません。

 

X線検査は、臓器の大きさや形などを外側から観察することに優れていますが、

エコー検査は臓器の内側を調べるのに向いています。

そのため、心臓病を詳しく調べたり、腫瘍や結石を検出したり、消化管の粘膜や内腔の状態を調べたりすることができます。

 

X線検査は、健康診断や手術を受ける前の術前検査としても実施されることも多い検査です。

はじめて検査を受けられる飼い主さんは、どのように検査をするのかな?と不安になることもあるかもしれませんが、X線検査は低侵襲かつ短時間で行える検査で、わかることが多いとても有用な検査のひとつです。

何か心配なことがあれば、担当の獣医さんとよく相談して、安心して検査に臨めるとよいですね。

 

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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