猫は肉食動物です。もともと野生で生活していた時代には、自ら獲物を捉えて生肉を食べていました。でも、人間のペットとして飼われるようになった現代の猫にも、同じように生肉をあげていいのでしょうか?猫は生肉を食べても大丈夫なのか、あげる場合の注意点はあるのかを解説します。

 

猫に生肉を食べさせてもいいの?生肉のほうが消化に良いって、本当?

 

理論上は猫が生肉を食べることに問題はありません。ただし、積極的にあげるべき食品かどうかは考えるべきでしょう。

猫の食生活について触れているさまざまな記事の中には、猫に生肉をあげるメリットを紹介し、キャットフードに生肉を加えることで、猫に必要な栄養が過不足なく摂れるようになると書かれているものがあります。また、猫にとって火を通した肉は消化がしにくく、生肉のほうが胃腸に負担をかけずに消化できるという趣旨の記事も見かけます。

 

ですが、そのいずれも正しくはありません。肉に含まれる一部の酵素やビタミンは、加熱することで逃げてしまいます。100%手作り食を与えるなら、全部生肉でもいいかもしれません。けれども、多くの飼い主さんは市販のキャットフードを利用されているでしょう。主食として市販されている総合栄養食は、猫の成長と健康に必要な栄養素がバランス良く含まれているので、あえて生肉で酵素やビタミン類をプラスする必要はないのです。

 

たとえば、ライオンは捕獲した動物を肉から内臓、血液まで丸ごと食べますよね。そうやって、栄養のバランスをとっているのです。野生の動物が生肉を食べているからといって、野生動物を祖先にもつ猫は生肉のほうが消化しやすく、加熱すると消化しにくいというのも疑問ですね。科学的な実験で証明されている報告も今のところないようです。

 

猫の食欲が振るわないときなどに、キャットフードのトッピングとして生肉を与えたいと思う飼い主さんもいらっしゃるでしょう。そんなときは、小さくカットして少量から。体調に変化がないかよく観察してあげることが大切です。

 

猫に生肉を与える場合、どこで手に入れる?生肉をあげるときに注意すべきことは?

 

 

生肉で気をつけなければならないのは、体に有害な寄生虫や菌がいるかもしれないということです。猫に生肉をあげるとしたら、スーパーや肉屋さんの店頭、通販などで販売されている肉を購入することになりますよね。一般的に手に入りやすい牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉などは、馬刺しを除いて加熱することを前提に販売されています。すべて食品衛生法の範疇で取り扱いされているものですが、生で食べることを良しとはしていません。つまり、人間の体にとって良くない生肉は、猫にとっても健康に害を及ぼす可能性があると言えます。

 

飼い主さんの中には、通販などでペット用として販売されている冷凍の鹿肉や馬肉などを取り寄せている方もいると思います。それらは、やはり加熱してあげたほうが安心でしょう。

猫が獲物の肉を生で食べていた時代は、捕獲してすぐに、つまり新鮮なうちに食べていたわけです。ですが流通にのって私たちの手元に届く肉は、そこまで新鮮な状態ではありません。加熱するならまだしも、生のまま与えるのはリスクが高いと言わざるを得ません。

 

猫の体に良いと話題になっているものは、なんでも取り入れてみたいと思う飼い主さんにとって気になる「生肉問題」。まずは飼い主さんが冷静になって、根拠のある情報を取捨選択することが、大切な愛猫を守ることになります。あえて生肉を与える必要はないことを理解したうえで、生肉を与える際は鮮度にこだわったクオリティの高い肉を選びましょう。

 

※この記事は猫に生肉を食べさせることを推奨しているものではありません。猫の食事は、栄養バランスが良く摂れる総合栄養食としてのキャットフードがおすすめです。

 

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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