ペットが飼い主に似る、あるいは飼い主がペットに似る、というのはよく耳にする言葉です。
とくに犬の場合は、飼い主に似ているとされるケースは多いようで、ネット上でもしばしば、飼い主と愛犬を並べて比較する画像を目にします。みなさんの周りでも、「あの方とペットの○○ちゃん、ほんとソックリ」といったことはあるのではないでしょうか?
今回は、ペットと飼い主は本当に似るのかどうかを探ってみましょう。
「似たもの夫婦」には、じつは裏付けがあった
「似たもの夫婦」という言葉があります。人間の夫婦に関して使われる表現で、「夫婦は互いに性質や好みが似る」という意味ですが、性質だけではなく、顔かたちもなんだか似ている夫婦も多いような気がします。ペットと飼い主が似るかを調べる前に、夫婦がお互いに似てくることがあるのかをチェックしてみましょう。
似た者夫婦に関してはこれまで、同じような食生活や生活習慣を長い間続けることで、自然に似てくるのでは、と考えられていました。しかしこの似た者夫婦というのは、どうやら科学的な裏付けがありそうだということがわかってきました。
人間を含む動物たちの間には広く、「類別交配(assortative mating)」が見られます。これは、形質の似ているもの同士で惹かれ合い、交配するという行動傾向で、動物たちの進化を特定の方向に押し進めてきた要因の一つとされています。
人間も他の動物と同様に、知能や価値観、性格といった特性がどこか似ているものを配偶者として選択し、交配していく傾向があることを裏付ける、複数の研究結果があるようです。つまり、配偶者は時間をかけてだんだんと似てくるのではなく、もともと似た者同士が惹かれ合い、夫婦となるというわけです。
人は、自分と似ているペットを選んでいる
それでは、ペットに関してはどうでしょうか。ペットも姿形に留まらず、性格や行動までが飼い主に似てくる、という実感をお持ちの方も多いかもしれません。ただし人間の夫婦と違い、ペットは飼い主を選ぶことはできませんので、似た者同士が惹かれ合い…ということではなさそうです。
2009年、関西学院大学文学部総合心理科学科の中島定彦教授の研究チームが行った実験によれば、バラバラに配置された犬と人間の顔写真を見るだけで、非常に高い割合で「犬と飼い主のペア」を言い当てることができたといいます。同様の結果は、2004年発表のカリフォルニア州立大学サンディエゴ校の研究チームや、2009年のイギリスのバース・スパ大学の心理学者の研究によっても明らかにされています。
犬と飼い主の顔が似るおもな理由について、中島教授は、繰り返し接することで好意度や印象が高まる、いわゆる「単純接触効果」だと考えられる、としています。つまり、人は見慣れたものに好感を抱くため、自分の顔とよく似た犬を飼い犬として選択しているのではないか、という推察です。
また、前述のカリフォルニア州立大学サンディエゴ校の研究チームの実験では、「犬と飼い主のペア」は純血種では高い確率で言い当てられましたが、雑種犬には当てはまりませんでした。この結果について研究者は、「雑種は成犬時の顔付きを予想しにくいため、飼い主が自分に似た犬を選ぶことが困難だからではないか」と推察しています。さらに入手経路の違いから、純血種はペットショップで好みの犬を選んで購入するのに対し、雑種犬は知人や保護センターから貰い受けるケースが多く、入手時に外見を吟味することが少ないことも原因かもしれません。
本能的に、自分と似た猫を選んでいるかも?!
それでは猫の場合はどうでしょう。猫は犬ほどには品種改良が進んではいません。面長、小顔、目が大きい、鼻がぺちゃんこなど、犬の顔がとてもバリエーション豊かなのに比べて、猫はそこまで多様性は大きくはありません。
ですがやはり、猫の顔や体型にはその猫種や個体ならではの個性があり、被毛の毛並みや毛色にもさまざまなパターンがあります。性格も千差万別ですので、やはり本能的に、目が大きかったり細身だったり、あるいはやんちゃだったりといった具合に、自分に似ていたり、相性がいい猫を迎えている可能性はあります。
また猫本来の、自由気ままだったり、ツンデレであったりといった性質がたまらなく好き、という飼い主さんも多くいらっしゃるはずです。これらも、自分の感性に近いペットとして、猫を選んでいるということになるかもしれません。
このようにして、飼い主さんは無意識のうちに、自分に似ている子を家族に迎えているのかもしれません。おうちの猫ちゃんに対して、「甘えん坊になっちゃったなぁ、この子。」と感じていたら、もしかしたら飼い主さん自身が甘えん坊な性格なのかもしれませんね。
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