元々商業施設の設計やマンションの企画をされていた建築士の清水さんと、外資の補聴器メーカーでマーケティングの専門家として長年活躍されていた株式会社コンセプトの片谷さん。お二人が創り出した猫と飼い主がニャンダフルに過ごすための強化ダンボール家具【ニャンダフルシェルフ】。
ー清水さんが「猫と住む住宅」に興味をお持ちになったきっかけは何だったのですか。
清水氏:「猫と住む住宅」について取り組み始めたのは今から6~7年前です。約8年前に猫を偶然拾い、当時住んでいた家が猫飼育可住宅ではなかったのでそれを機に引越しをしました。ですが、落ち着く間もなく妻がもう一匹猫を拾ってきたのです。案の定、先住猫は新しく来た子猫や引越し先の住宅等、新しい環境に馴染めず体調を崩してしまいました。近くの動物病院に何回か足を運ぶうちに獣医師さんと親しくなり、色々な話をするようになった頃、突然こんなことを言われたのです。
「ペットの病気や怪我については飼い主さんにアドバイス出来ますが、生活の根源である「住む」ということに関して、つまりペットの住環境についてはアドバイス出来ないんですよね。」
この言葉が、私が「ペットと住環境」ということに興味を持ち始めたきっかけだったと思います。私は「じゃあ建築士だから、ちょっと調べてみます」と言って、犬や猫の住環境について調べてみました。それまでペット業界に知り合い等ほとんどいなかったのですが、唯一のペット業界に携わっている友人に色んな方を紹介してもらい、ペット業界の方との人脈を築いていきました。専門的な資格も取得した方が良いとアドバイスをいただき愛玩動物飼養管理士の資格も取りましたね。ペットのことについて勉強していくうちに、ペットと一緒に住んでいるだけでは分からなかった多くのことに気付くことができました。
獣医師のセミナーや、行動学の先生のお話を聞くと、今でも「あーそうなんだ」とペットと長年暮らしてきた私でも思うことがあります。私は建築士です。猫も幸せになれて、かつ飼い主さんも幸せになれるような住環境を創りだすことができると思いました。
マーケティングの専門家は何故【ダンボール】に目をつけたのか?
片谷氏:株式会社コンセプトは元々印刷業を営んでおりました。梱包資材の印刷も請け負っておりお付き合いがあった梱包業者のうちの一つがいわゆる強化された「クラフトダンボール」を使用しておられました。コンセプトとその梱包業者との出会いは東日本大震災に遡ります。当時甚大な被害を被った石巻市にその梱包業者の工場があったのですが、幸いなことに少し内陸部にあったため被害を受けることはありませんでした。その梱包業者は「何か被災者のために出来ることはないか」と彼らが扱っていた資材を使って体育館のパーテーションを作ったり、簡易トイレを作ったり、時には棺を作ったりと様々なものを作り一時期メディアの話題にも上りました。
使っているトライウォール・パックという強化されたクラフトダンボールは世界でいちばん厳しい耐候性基準といわれている米国連邦規格PPP-B-640dに適合しています。更には、この強化ダンボールは持続的生産が可能な森林にのみに与えられるSFI(Sustainable Forestry Initiative:持続可能な林業イニシアティブ)の森から生産されたバージンパルプを使用しておりますので、森林破壊に繋がるような無計画な森林伐採は行われていません。環境にもエコ、人にも動物にもエコなダンボールなのです。
ある時、偶然その梱包業者がその資材を使って家具に似た面白いものを空き時間に作られているのを見て、「この素材を使って、別な形に変えて商品化したら面白いのではないか」と思い試作品を作り始めました。
私はダンボールのもつ波型の切断面、フルート面と言いますが、それが大変美しくて惹かれていました。この面が良く見えるような製品作りにこだわっておりまして、デザインもユニークなものを制作しておりました。ただショールームで我々の製品を展示したところ、皆さんに気に入ってはいただけるのですが、いわゆる「ダンボール」で作られている家具と聞いてイメージする価格と乖離しており、もう少し実用的に使っていただけるものがないかと考えていた時に、「猫はダンボールが好なはず」とぱっと思いつきました。が、猫についての知識がなく、これはもう専門的な知見や知識、経験を持った方に頼るしかないと思っていた矢先に清水さんと出会いました。
マーケティングの専門家と設計建築の専門家が手を結んだ瞬間
清水氏:私は毎年ビックサイトで開催されているペットイベント「インターペット」に、ペットとのより良い環境を提案する「ワンニャンハウジングスクエア」の スタッフとして参加しています。昨年は「一般社団法人ペットライフデザイン協会」を仲間と一緒に設立したこともあり、主催者側としてメインステージで猫の 被りものをして講演をしました。その講演を偶然片谷さんのお知り合いの方がご覧になっていたようです。
後日、私の講演を見て下さったその方から、「私の知り合いに猫のためのダンボール製品を作っている人がいるから会いませんか?」という連絡が来て、片谷さんにお会いすることになったのです。
ー猫用品の共同開発のお話を聞いて、清水さんは率直にどう思われましたか?
清水氏:率直に申し上げると、コンセプトさんが制作されている猫用品は価格が高い(笑)。現在の猫用品は海外で大量に生産されているため、高くても 5,000円以下、だいたい2,000円~3,000円以下が一般的です。というのも、「猫が使うものは壊れても仕方がないね」という考え方が一般的で、 安価な価格帯で販売されている用品が売れているのです。
片谷さんの悩みは猫用品を制作したいけれど、猫のことがわからず、いくら工夫してもデザイナーズ家具としての価格になってしまうこと。一方、私の悩みは猫のためのステップ(階段)を家具として作りたいけれど、いい素材に巡り会えないこと…。そこで解決策として思いついたのが、「普通のダンボールよりは価格が高いけれど、猫の用品ではなくてもっと建築的なものをダンボールで使ろう!」というものでした。 それから色々打ち合わせを重ね、モニターさんにもご協力いただき、約半年かけてこの「ニャンダフルシェルフ」が生み出されました。
猫の習性と行動にぴったり、飼い主にもうれしい設計とは?
清水氏:ニャンダフルシェルフは猫が縦移動だけではなく壁面に大きく横移動できる構造や隠れる場所を設けました。通常のキャットタワーの場合、縦方向にしか動けず隠れる場所もあまりありません。猫を飼育されている方は多頭飼いが多いと思いますので、縦移動しかできないとなるとキャットタワーの上の方が渋滞し てしまうし、隠れる場所がないと猫が落ち着ける場所がなくなってしまいます。ここまでは猫の為の工夫ですが、飼い主(肉球フェチ)の方のために透明のアク リル板を設置して猫の肉球やお腹が下から見えるようにしました。
釘やネジを一切使わず軽量・組立ができる製品ですので、お部屋の模様替えや引越しの際もとても便利です。オプションで爪とぎや収納BOX、サイドステップな どを取り付けることも可能ですので、ご自宅のインテリアに合わせて自由に組み合わせることができます。こういった細やかな設計は建築士の私の腕の見せ所で す。
片谷氏:多頭飼いの環境で愛用されているお客様からも、不満や不具合等のご連絡が一切無く、しっかりとした設計になっています。「安心した」という気持ちもありますが、それよりも今は喜びの方が大きいかもしれません。
ー猫と強化ダンボールのコラボレーションは今後も続くのでしょうか?
清水氏:様々な建築資材を扱ってきた私の使命としては皆さんが抱くダンボールのイメージを変えていくことです。私自身も片谷さんと出会うまでは強化ダンボー ルの存在を知りませんでしたので、価格を見ただけでは「高いな」と思ってしまうところがありました。しかし、実際に扱ってみると、強度、軽さ、耐候性、コ スト、環境、どれにつけても優れています。猫専用の物件にモニターとしてニャンダフルシェルフを設置しているのですが、ご自身の目で「ニャンダフルシェル フ」の良さを経験していただけた方は購入していただけています。
最近ではメディアに取り上げていただく機会も増えたのですが、今後はよりメディアやイベン トを通して皆さまに「ニャンダフルシェルフ」の魅力をお伝えする機会を積極的に作っていきたいと考えております。また、お客様のご要望として、今の製品よ りも小さいサイズがほしいという声もあります。お客様のニーズに耳を傾けて、今後も製品を開発していきたいと思っています。もちろん猫ちゃんのニーズもき ちんと汲み取る予定です(笑)。
株式会社コンセプトの公式サイトはこちら
ニャンダフル・シェルフの公式サイトはこちら
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