猫は下部泌尿器にまつわるトラブルを起こしやすい動物だといわれています。
猫の下部泌尿器疾患の代表的なものとして、尿石症と特発性膀胱炎が挙げられます。
尿石症とは
尿石症とは、尿の中にさまざまな結晶ができてしまった状態で、肉眼で見えるほどの大きさに成長したものは尿路結石と呼ばれます。
どこに発生しているかにより、腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石などに分類されます。
結石にはいくつかの種類あり、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)やシュウ酸カルシウム結石が代表的です。
尿路結石は、治療や予防、再発防止において、食事管理がとくに重要です。
◆尿石症の食事管理のポイント
○水分をしっかり摂る
水分の摂取量が不足すると、膀胱の中に濃い尿が長時間溜まりやすくなります。
濃縮尿では結晶が形成さやすいことが知られていることから、水分をしっかりと摂り、適切な濃度と回数の排尿を促すことが大切です。とくに、気温の低い時期は飲水量が低下しやすいので、猫が十分な水をいつでも自由に飲めるように、水飲み場を増やすなど工夫してあげましょう。
また、室内飼育の猫は1日1回程度しか排尿をしない場合もあり、尿路結石症のリスクが高まります。トイレの数は、「飼育している猫の頭数+1個以上」が必要といわれているので、清潔なトイレ環境を整えてあげたり、活動量が多いほど飲水を促しやすくなるため、運動ができる環境を提供することも病気の予防につながります。
○尿のpHを考慮する
尿は、pHがアルカリ性に傾くとストルバイトやリン酸カルシウム結石などができやすくなり、食事療法などで酸性にすることで溶解できる場合があります。
尿路結石症では、原因となる結石の溶解を促したり、再発防止に対応したpHを維持できるフードを与えることが重要です。
○ストルバイト結石の療法食の特徴
ストルバイト結石の療法食には、結石を「溶解させる療法食(溶解食)」と、結石の「再発を予防する療法食(予防食)」があります。
ストルバイト結晶を溶解させる療法食は、尿pHを6前後に維持するためにつくられたフードで、結石の成分となるリンやマグネシウムを制限されていることも特徴です。
そのため、成長期や妊娠・授乳期の猫には適しておらず、また、飲水を促すために、ナトリウム(塩分)が多めに含まれているので、心臓病や腎臓病の猫にも適していないので注意しましょう。
療法食を与え始めたら、2週間〜1ヶ月ごとに動物病院で尿検査を受け、結晶が溶解するまで与え続けましょう。
尿pHが安定し、尿中に結晶がみられなくなったら、ストルバイト結石を予防する療法食に切り替えます
予防食は、尿pHを6.2〜6.4程度に維持することで、ストルバイトやシュウ酸カルシウム結石などを予防することを目的につくられた食事です。1〜3ヶ月ごとを目安に尿検査を受け、再発しないよう定期検診を受けましょう。
特発性膀胱炎とは
頻尿や血尿、トイレ以外での排泄、排尿時の痛みなどの症状がありながら、その原因が感染や尿路結石などではなく、はっきりとした原因が特定できない膀胱炎を特発性膀胱炎といいます。
ストレスが主な原因の一つとされ、膀胱炎にかかるとその痛みがさらにストレスを強めてしまうという悪循環が生じてしまいます。また、一旦症状が落ち着いても再発を繰り返しやすいことも知られており、猫のおしっこにまつわる病気の原因のうちの約6割が特発性膀胱炎といわれています。
◆特発性膀胱炎の食事管理
○水分をしっかり摂る
猫の特発性膀胱炎は尿石症と同様に、濃い尿を作らせないようにするために水分を十分摂取させることが重要です。水皿の数を増やしたり、水分含有量の多いウェットフードを活用したりするるなど、水分摂取を促しましょう。また、いつでも快適に排泄ができるよう、トイレの数や環境にも配慮しましょう。
○ストレスを緩和する食事
ストレスを軽減する効果のある成分(加水分解ミルクプロテインなど)が含まれた療法食やサプリメントを与えることも有効です。特発性膀胱炎の適した療法食は、尿石症や体重管理にも配慮されているので、長期的に与えることが可能です。
食事管理と同時に、以下のようなストレスフリーな環境を整えてあげることも大切です。
猫が安心してくつろげるスペースの確保する(高い場所、日当たりの良い場所など)
トイレは常に清潔にし、十分な広さのものを設置する(目安:猫の体長の1.5倍以上)
フードのお皿はトイレから離れた静かな場所に置く
爪とぎやおもちゃなどを活用する
室内飼育の猫は退屈しないよう、外の様子が見える部分などを設ける
多頭飼育の場合、それぞれの猫に十分なフード・水・トイレ・くつろぎスペースが確保できるよう配慮する
など
猫は下部泌尿器疾患を起こしやすく、とくに気温が低く飲水量が減りやすい秋〜冬は注意が必要です。
快適な環境を整えるとともに、適切な療法食を活用することで、病気の予防に役立ちます。
参考:動物医療従事者のための臨床栄養学/EDUWARD Press
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