猫は不思議な動物で、広いひらけた場所よりも狭くて小さい箱の中に入ることが大好き。小さすぎるサイズの箱に頑張って入ろうとする猫の”まる”はYou Tubeで人気に火がつき、世界的な有名猫に仲間入りしました。海外でも大人気なようで、海外に出かけた際、私が猫好きの日本人であるとわかると「Maruを知っているか?」と何度も外国の方から話しかけられました。
興味深いことに猫だけでなく、トラやヒョウなどの大型ネコ科動物でも、ダンボールを置くと猫と同様に中に入ったり、戯れようとします。なぜこれほどまでネコ科動物は箱に入るのを好むのでしょうか。
1.猫は箱に入ることでストレスが減少する
ある猫の保護施設で行った研究では、新しく施設に保護された猫のケージに隠れることのできる箱を入れると、箱を入れなかった猫よりもストレスを示唆する行動が大きく減少し、より短い期間で新しい環境に慣れることができたという結果が報告されています。
猫は新しい環境に入るとまず安全な場所を確保し、徐々にナワバリを広げていきます。拠点となる箱があるとより早く精神的に落ち着くのでしょう。また猫が沢山いる環境で箱は防音にもなりますし、他の猫に匂いが入ってこないのでストレスを減らすことができるのではないかと考えられます。
私たちも電車の席は端から埋まっていきますよね。周囲に知らない人(猫)がいるとなんとも落ち着けないものです。猫は人よりも臆病で敏感なため、箱に入って落ち着きたいのでしょう。
2.猫は人よりも高い室温を好む
ゴージャスな被毛に覆われている猫ですが、猫にとって過ごしやすい温度は人よりも高いかもしれません。
動物が無理をして温度調整する必要がない温度の範囲を「熱的中性域」と言います。これよりも温度が高いと人では汗をかいて体を冷やしたり、逆に温度が低いと体を震わせて熱を産生したりして、体温を調整します。そのためこの数値により動物が快適に過ごせるおおよその温度がわかります。
猫で熱的中性域が30〜38度と言われていて、これは平均的な家庭の室温よりもずっと高いですよね。ちなみに人の熱的中性域は裸で27〜32度ですので、着衣ではもう少し低くなり、24度前後に室温が設定されていることが多いです。
そのため、猫は日頃から少し肌寒く感じている可能性があります。そう考えると保温性の高いダンボールの箱などが特に好まれることも説明がつきます。
3.野性時代の名残
とはいえ、箱にじゃれつく愛猫を眺めていても、特に緊張もしているようにも見えないし、寒そうにも見えません。他にも箱は猫を惹きつける魅力を持っているのでしょうか。
猫はもともと狭い穴を出入りするネズミを捕まえるのが得意な動物です。小さな箱はネズミの隠れ家を思い起こすのかもしれません。
また猫のハンティングは待ち伏せ型です。箱の中に入って姿を隠して、そこから獲物が出てくるのを待っているのでしょう。うちの愛猫も箱の中に身を潜めて、箱の前を通った私のくるぶしに飛びかかってきます。見た目は可愛いですが、猫はまだまだ野生の感覚を忘れていません。
また私たちすると窮屈そうなサイズでも猫にとってはジャストなのです。猫は被毛を除くと細身であり、関節が柔らかいので自分より小さい箱に入ることができます。ギリギリ入れるぐらいの方が猫からすると嬉しいみたいですね。
猫にとって箱は様々な使い方があるようです。プライベートを確保するための壁、暖かく静かな寝床、そしておもちゃや隠れ家にもなります。ぜひ愛猫ちゃんにピッタリなサイズの箱を用意してあげてくださいね。
参考資料
Will a hiding box provide stress reduction for shelter cats?
Environmental Aspects of domestic cat care and management: implications for cat welfare
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