野生で暮らしていた時代の名残からか、猫ちゃんは最後まで自力で活動しようとします。ただし、老猫期に入った猫ちゃんは腎臓病やガンなど命に関わる重い病気を患う確率が増えていきます。介護を必要とする内科的な病気にかかってしまうと、治療が長引く場合もあります。老猫期に入り、さまざまな機能の衰えとともに病気の危険性も増えていく猫ちゃんとどうつきあうか、また、終末期を迎えた猫ちゃんのQOL(クォリティ・オブ・ライフ/生活の質)を維持するにはどうすればいいか、それらは飼い主さんが考えていくべき課題です。
猫の寿命は?
猫の寿命は生活環境によって変わります。室内飼いの「家猫」は約15歳、室内と屋外を行き来する「半外猫」が約12歳、そして屋外で暮らす「野良猫」が5歳〜10歳といわれています。寿命の8割を過ぎた猫は、老年期を迎えた「老猫」と呼ばれ、その目安は家猫が約12歳、半外猫は約10歳。老猫になると体調を崩しやすくなるので、健康管理にはそれまで以上に気を配らなければなりません。
こんなサインが見えたら老猫のはじまり
個体差がありますので、18歳を過ぎても元気な猫がいる一方で、7歳ですでに老年期に入ったような状態になる猫もいます。そのためすべての猫に当てはまるわけではありませんが、家猫は12歳、半外猫は10歳を過ぎた辺りから次のような変化が表れます。
毛づくろいの回数が減ってくる。
毛艶や毛量が減ってくる。
筋力がなくなり、高いところに上ろうとして失敗する。
あまり動かなくなり、寝ている時間が長くなる。
歯が弱ってきて、抜けることもある。
ひげや口の周りに白髪のような毛が増える。
痩せてくると同時に筋肉がたるんでくる。
歯が抜けたり口臭がきつくなったりする。
爪が出たままになる。
聴力や視力が低下する。
これらは、猫が老年期を迎えたサインです。こうした変化が表れたら、ケガをしないよう部屋の中の段差をなくしたり、食事をやわらかく食べやすいものに変えたりするなどして、猫の生活環境を整えてあげる必要があります。
老猫の五大疾病
老猫期に入ると体力や抵抗力の低下により、病気にかかりやすくなります。中でも深刻なのがガン、甲状腺機能亢進症、糖尿病、心筋症、腎臓病であり、これらは治療が長引くことや命に関わる危険性が高いことなどから、特に注意しなければいけないものです。中でも多いのが腎臓病で、15歳を超えた猫の約3割は何らかの腎臓病を患い、死亡原因の1位は腎臓など泌尿器科系の病気だともいわれています。腎臓病とは腎臓の機能が低下することが原因で起こる病気の総称で、猫が腎臓病になりやすい原因は諸説ありますが決定的な理由は解明されていません。
そして、11歳を過ぎるとガンの発症率も高くなります。猫に多いガンは、リンパ腫と乳腺腫瘍で、飼い主さんは手術、抗がん剤、放射線の3つの治療法の中から選択しなければなりません。抗がん剤治療を行うことで嘔吐や下痢、食欲不振が起きるなど、消化器系にダメージを受ける場合もありますが、人間のような副作用が猫に起こることはほとんどありません。被毛が薄くなることはありますが。抜けることはありません。もし前述した症状が治まらない、あるいは深刻な場合は薬の種類を変えたり、投与する間隔を空けたりするなどの対処が取られますので、すぐに獣医師に相談しましょう。リンパ腫は抗がん剤の効果が高いといわれています。ほかに心筋症をはじめとする循環器系の病気やホルモン異常が原因で起こる甲状腺機能亢進症、他の病気を併発する恐れのある糖尿病にも気をつけなければいけません。さらに最近では認知症の猫も多く見られるようになりました。
終末期をどう過ごすか
老年期に入っても元気なまま過ごし、安らかに天寿を全うしてほしい…、これはすべての飼い主さんの願いです。しかし、加齢とともに、猫は病気を患う確率が高くなります。もし猫が重い病気にかかってしまったら、飼い主さんは猫にとって最適な治療方法を選択しなければいけません。その中には入院という選択肢もあるでしょう。症状が重篤な場合はもちろんですが、口から食事が摂れなくなった場合、猫を置いて外出しなければいけない場合なども病院に預ける必要が出てきます。
ただ、環境が変わるのは猫にとって大きなストレスになります。やむを得ず入院することもあるかもしれませんが、可能な限り住み慣れた場所で最期の時までゆっくりと過ごさせてあげたいと思う飼い主さんも多いかもしれません。病気になり終末期を迎えた猫が自宅で少しでも快適に暮らすためには、飼い主さんによる「介護」が必要になります。病気が進行し厳しい状況が訪れたら痛みや辛さを緩和させるための「看取りケア」へと切り替えていきます。獣医師の指導のもと、食事や投薬、住環境の工夫など、猫のQOLを維持するための方法を考えていきましょう。
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