
ここ日本では近年、猫の飼育頭数が犬のそれを抜く勢いで、ペットとしての猫人気は勢いを増しています。
さて、それでは猫を飼うメリットはいったいなんでしょうか。愛猫家のみなさんからは、「メリット・デメリットなんて考えながら猫を飼うなんて!」というお叱りの声も聞こえてきそうですが、どうかご勘弁を。
とにかく癒される、猫は”気ままな同居人”
まずは、ちまたにあふれる猫自慢のブログをのぞいてみましょう。
「癒される」「とにかくかわいい」「ミステリアス」「もふもふ」「ツンデレで適度な距離感」「しつけが楽」「手入れが簡単」「散歩が不要」「(比較的)費用がかからない」などの感想が多く見られます。このあたりが、猫を飼うことのメリットの一般的なコンセンサスなのかもしれません。犬が「忠実な僕(しもべ)」であるのに対して、猫は「気ままな同居人」であり、そこに惹かれるとの意見もありました。
ペットとの同居は、「人生を豊かに」する?
次に、もう少し科学的なアプローチを見てみましょう。
一般的に、猫に限らずペットを飼うことは人間にとって、それがごく短期間であっても「十分な癒し効果」があることが知られています。米バージニア大学医学部のSandra Barker教授の研究によれば、ペットを飼うことは、とくに飼い主さんにとって「社会活動が強まる」「心配をなくす」「人生が豊かになる」などの効果があることが確認されています。さらに、大人だけではなく子どもにとっても、「命の尊さを教え、自尊心や愛情、責任感などを育む」とされています。
ペットを飼育することが、自閉症の助けになるとの報告もあります。仏ボアル病院のMarine Grandgeorge氏らが、40人の自閉症の子どもとその家族を対象に調査を行ったところ、ペットを飼うと自閉症患者の気持ちは落ち着き、ペットを飼っていない子どもに比べ社交性が身につきやすいことが明らかにとなりました。これは、幸福ホルモンといわれるオキシトシンの分泌量が増え、信頼感と愛情が増すことが関係していると考えられています。
また、ペットとの暮らしによって、免疫力が高まることも期待できます。笑うことは免疫力アップに欠かせぬ要素の1つですが、米ロマリンダ大学のLee Berk医学博士による調査では、笑うことで病気と戦う免疫グロブリンが14%増えたそうです。同大学のBains GS氏らによって、ストレス・ホルモンであるコルチゾールが減ることも明らかにされており、これが免疫力アップに一役買っていると考えられます。その愛らしい仕草や表情、行動で笑いが絶えない猫との暮らしは、自然に病気を遠ざけているのかもしれません。
猫は「心臓発作」の死亡リスクを軽減させるというデータも
猫を飼うことに特化した研究成果としては、米ミネソタ大学心臓病研究所のAdnan Qureshi教授の調査が注目されます。同調査によれば、猫を飼っている人は心臓発作による死亡率が低いことが判明しています。
調査対象者4,435人のアメリカ人(うち6割が猫の飼い主)を10年間追跡調査した結果、猫の飼い主は猫を飼っていない人に比べ、心臓発作による死亡率が30%少ないという結果が得られたそうです。一方で、犬の飼い主は飼っていない人に対して明確な心臓疾患発症率の減少の結果は見られなかったともされており、ほかのペット動物の効果に関しては今のところ不明です。続く調査ではさらに、猫を飼うことと心疾患および脳卒中で死亡するリスク減の深い関係性が示されています。
さらに、ある老人ホームでの実験により、猫に触れる前と後の血圧の変化について、以下の結果が得られました。
68歳の男性:最高血圧138/最低血圧101→最高126/最低96
72歳の女性:最高血圧136/最低血圧102→最高115/最低86
数十人の入居者を対象に調べたところ、8割以上に血圧の低下が見られました。米ペンシルバニア大学獣医学部での犬を用いた実験でも、同様の結果が得られたとのことです。
世の愛猫家がこぞって口にする「孤独感を癒す」効果も、科学的に実証されています。米マイアミ大学のAllen McConnell氏が率いるチームが調べたところ、猫をはじめペットを飼っている人は飼っていない人に比べ、孤独感は少ない一方、自尊心は高い結果となりました。また併せて、人間の友だちと同様にペットのことを思うだけで、拒絶感や孤独感が和らぐことも明らかになっています。
ちょっと変わったアプローチとしては、『Scientific American』によると、猫のゴロゴロという喉を鳴らす振動は20〜140ヘルツで、これは医学的にもさまざまな病気に効果のある周波数だそうです。猫のゴロゴロを聞くことで健康になれる、ということでしょうか。
猫に人生を教えられる、そんな忠実なる家来たちも
以上、猫を飼うことの、さまざまなメリットを見てきましたが、飼い主さんのなかには「猫に人生を学ぶ」方もいらっしゃるようです。
たとえば、寝てばかりいるその姿を見て「睡眠の重要性」を教えられ、失敗をしてもすぐ忘れる性格からは「過去にこだわらない」姿勢を感じ、同じ遊びを執拗に繰り返す集中力に「あきらめない」心を学び、人に媚びないその生き方から「社会の歯車」になっている自分自身を省みる、といった具合です。
しかしまあ、あれこれ理屈を言わず、愛猫とのライフをとことん楽しむことこそが愛猫家の正しい姿なのかもしれません。きっと猫ちゃんに感謝の気持ちを伝えたところで、「ん、今なんか言った?」と言わんばかりに、大きなアクビをするくらいでしょうから。
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